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【書籍化】最強守護騎士の過保護が止まりません! ~転生令嬢、溺愛ルートにまっしぐら!?~  作者: 櫻井みこと
魔法学園一年生

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手紙

 事態が急展開したのは、それから十日ほど過ぎた頃だった。

 ずっと探していたのに見つけられなかったフィンが、セシリアに相談したいことがあると手紙を送ってきたのだ。

「わたしに相談なんて、するような人かしら」

 セシリアは手紙をアルヴィンに渡しながら、訝しげにそう呟いた。

 彼に相談を受けるような関係ではないのはもちろん、お互いに初対面の印象は最悪だろう。セシリアなど、アルヴィンを傷つけられた怒りで平手打ちまでしている。

 あのプライドの高そうな男が、そんな相手にわざわざ相談などするだろうか。だが気になるのは、その相談内容が王太子のアレクについてだということだ。

罠なのか。

 それとも本当に切羽詰まった状態で、セシリアにまで相談しなければならない状態なのか。

「うーん、手紙だけでは判断できないわね。どっちかしら」

「会ってみるしかないだろうな」

「……そうね」

 気は進まないが、もともとこちらでも彼を探していたのだ。

 彼の状態を見定めるためにも、会って話をしたほうがいいだろう。

 もしフィンの周りにも兄のように黒い瘴気が見えたとしたら、魔族に操られているということになる。それを見極めるためにも、フィンとは一度、対面したほうがいい。

 それが、ふたりの出した結論だった。

 だが、驚いたことにフィンは、ララリにも似たような手紙を出していた。

「この手紙が届けられたんです」

 そう言って彼女が差し出したのは、セシリアに来た手紙と同じような内容だった。

 王太子アレクのことで、相談したいことと、手を貸してほしいことがある。そう書かれている。

 二通の手紙を手に、セシリアは深く考え込む。

(フィンがヒロインに頼るなんて、攻略ルートに入っていなければありえないことよ。それに、ララリさんが恋をしているのは彼じゃないわ)

 ゲームの知識ばかりに頼るのは危険かもしれないが、フィンのプライドの高さを考えると、公爵令嬢であるセシリアならともかく、わざわざララリにまで手紙を出して助けを求めるのは、ありえないことのように思える。

 それでもララリは、アレクのためなら何でもするだろう。フィンの申し出も、断るつもりはないようだ。それならできるだけ一緒に行動して、ララリを守らなくてはならない。

 そう思ったところで、思わず溜息をつきそうになってしまう。

(やっぱり、彼女はヒロインね……)

 無謀と思えるような行動をしても、周囲が勝手に彼女を守るように動いてしまう。セシリアもつい、彼女をフォローするように動いていた。

 とにかくヒロインはこちらの味方なのだから、悪役令嬢にもならなかったセシリアが破滅することはないかもしれない。

 でも、セシリアがヒロインのライバル役になってしまったとしたら、むしろ過酷なのはこれからだ。

 ヒロインと協力して、魔族を倒さなくてはならないのだ。今までは悪役令嬢にならないように、できるだけ目立たないようにしてきたが、これからはそうもいかないかもしれない。

 ララリと相談して、次の休みにララリと一緒に話を聞くこと。もちろん、守護騎士のアルヴィンを伴うこと。両方を受け入れないのならば、会って話をすることはできないと返事を出すことにした。

「せっかく、次の休日はアルヴィンとデートだと思っていたのに。このせいで、延期ね」

「ああ、本当に。くだらない用事だったら許せないな」

 冗談っぽく言ったセシリアとは裏腹に、アルヴィンの言葉は真剣そのものだった。

「……わたしも、楽しみにしていたの。すべてが終わったら、ふたりでたくさんデートをしようね。いつだって機会はあるわ」

 素直な気持ちを伝えたくなってそう言うと、アルヴィンも頷く。

「そうだな。これからずっと、ふたりで生きていくんだ。時間は、いくらでもある」

 どちらからともなく手を差し伸べて、しっかりと握っていた。

 次の休みは、明後日だ。

 フィンからは、すぐにどちらも了承したという返事がきていた。

 アルヴィンが一緒なら、それほど恐れることはない。

 当日は何か起こるかわからないから、いざとなったら腕輪を外す覚悟があることも、アルヴィンに伝えておく。反対されるかもしれないと思ったが、アルヴィンは真摯な顔で頷いた。

「もし危険だと思ったら、迷うな。後のことはどうにでもなる。セシリアの身の安全が、一番大切だ」

「……うん」

 もしかしたらフィンも、魔族と繋がっているかもしれない。

 油断はできないと気を引き締める。

「アルヴィンも気を付けて」

「わかっている。セシリアを泣かせるようなことはしない」

 覚悟と愛を確かめ合い、当日に備える。

 それから休日までは、いつもと変わらずに静かに過ごした。今のところ、王太子にもフィンにも目立った動きはないようだ。

 そうして、当日の朝。

 ララリにセシリアの部屋に来てもらい、それから三人でフィンに指定された学園の図書室に向かうことにした。

「もし何かあったとき、ララリさんもこの部屋に逃げ込めるようにしてほしいの」

 アルヴィンに頼んで、結界が張ってあるセシリアの部屋に、ララリも入れるようにしてもらう。

 これで、彼女がひとりのときに何かあっても、ここに逃げ込めるだろう。


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