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手からビームが出てもかわいいって言ってくれますか

「奴隷商?」


どういうことかわからず聞き返した。

奴隷商に追われるのって、一体どういう状況だ?


「簡単な話だ。私たちが売られる途中で逃げたから、追ってきている」


俺をおぶっている、お姉ちゃんと呼ばれていた女の子が、ため息交じりに話した。


「追ってきているなら、逃げないと!」


「わかっている。だが、魔法師から逃げるのは難しいかもしれない」


「遠くから攻撃されるから?」


「それもあるが、私たちみたいな逃げるものを追うのに特化したやつだろう。探索魔法の一つぐらい使えるはずだ」


「お姉ちゃん、いっそ戦う?」


隣のミリー……恐らくそういう名前の妹が、矢を射るような仕草を取って言う。


「逃げ場がないなら、そうするしかないだろう」


お姉ちゃんは俺をそっと降ろして、遠くを鋭い目つきで睨んでいた。

不利であるのは間違いないのか、目がすこし不安げに揺れている。


俺は自分が焦っていないことに気が付いた。

自分が死ぬかもしれない状況なのに、冷静に周りを見ていられる。

きっと、彼女たちが落ち着いているというか、肝が据わっているから、俺もなんとなく安心してしまうのだろう。


でも、俺とそう年齢の変わらなさそうな二人が、こうも落ち着けるものだろうか?

ここが戦いだらけの世界だったらどうしようか。

ひどい目にあうのだけはゴメンだった。

散々叩かれて、惨めな思いをして、転生先も同じく……なんて考えたくもない。


「あのう」


俺はそろりと手を上げた。


「どうした」


「そういえばと思って、名前聞いてないなって……」


「ああ。私はマリオン」


「妹のミリオンです。ミリーでいいよ」


二人の名前は、俺と同じような名前ではなかった。

ていうか、名乗ってくれたんだから、自分も言わないと失礼だよな。


いつもだったら自分の名前を口に出すのが恥ずかしかった。まるで女の子のような名前で、からかわれていたからだ。

しかし、かわいく転生出来た今なら、自信を持って言える。


「俺……あ、いや、僕は最上守羽(もがみしゅう)


こんなにかわいいのに、俺って言うのは似合わない。

これからは僕で通そう。そっちの方が絶対かわいいって。


ていうか、さっきまでは自分のことで精一杯で全然確認していなかったけれど、二人もめちゃくちゃかわいい!

彼女たちは僕よりも背が高く、鋭い目つきで遠くを睨んでいた。頭には狼のような耳があって、姉のマリオンは右耳に、妹のミリーには左耳にイヤリングが付いている。

服はやや灰色のワンピースの上から、フードの付いた外套をまとっていた。


奴隷商から逃げてきたにしては、こう、すこしきっちりとしすぎていると思った。

アニメとかでは、もっとみすぼらしいボロボロの服とか着ていたし。


マリオンは腰辺りまである長い黒髪を払って、左耳のイヤリングを触った。

すると青い魔法陣が耳周辺に小さく広がって、そこから取っ手のような部分が飛び出してきた。

彼女はそれを右手で掴んで、背丈ほどもある大剣を引き抜いた。


「しゅっげ、それ、何? 魔法?」


驚きのあまり噛み噛みの僕を、彼女は物珍しそうに見た。


「知らないのか?」


僕は首をブンブンと縦に振る。

こういうのを見ていると、自分が別世界に転生した実感がわいてくる。


僕たちの後方で、ミリーがけらけらといたずらっ子のように笑った。


「変なのー」


ミリーの左手には、いつのまにか弓が握られていて、緊張をほぐすようにうーんっと声を上げて伸びをしていた。

僕は、ぐいっと引っ張られて強調された胸から目が離せなくなった。


「でっか……」


思わず出た言葉を押し込むように、手で口を塞いだ。

失礼かと思ってあまり意識しないようにしていたけど、彼女の胸は姉のマリオンに比べてだいぶ大きい。

マリオンも小さくはないのだが、見比べてみるとその大きさがよくわかる。

あの胸、弓を使うのに邪魔じゃないんだろうか……


僕は頭を大きく振って、邪念を払おうとした。

駄目だろ、今はそれどころじゃないはずだ。

彼女たちのように、僕も何か使えるかもしれないんだ。


「僕にもそういうの使えるのかな?」


マリオンは僕を見ずに、すこし笑ったように見えた。


「君がどこの生まれか知らないが、多分使える。最初に会ったときから、言葉が通じているからな」


僕がきょとんとしていると、彼女は僕の頭辺りを指差した。


「耳に付いているプラウトラには、言葉の自動翻訳機能が付いている。私たちはこの辺りの生まれではない。当然、言葉が違う。でも通じている。

だから、使えるはずだ」


話を聞きながら、僕は耳を触った。でも、そこには何も付いていない。


「まあいい。君は私たちに巻き込まれただけだ。

あいつらは私たちだけを追っている。君は早く逃げるといい。時間稼ぎぐらいはしてやれる」


「で、でも、捕まっちゃうかもしれないんでしょ?」


「心配するな。どうにもならない状況でも、諦めなければ道はある」


マリオンは僕に微笑んで、それから剣を構えた。

ちょうど近くの木々の向こうから、人の気配がした。

追手がもう来ているのかもしれない。


もし彼女の言うことが本当なら、僕は魔法が使えるのか?

でも、魔法ってどう使うんだ?

もしも、もしも使えるのなら、彼女たちを助けてあげたい。


だって魔法少女って、めちゃくちゃかわいい!

僕も、そういうのになりたい!


「お、おい!」


僕は止める声を無視して、彼女たちの前に出た。


さっき気配がした辺りを向いて、右手を前に突き出して、ビームが出るイメージで力を込める。まるで小学生のごっこ遊びみたいで恥ずかしいけど、こういうのって、大体こうすりゃ出るよな。ついでに、技名とか叫んじゃったりして。

でも、技名? どうせなら格好いいのがいい。でもでも、考えている時間もない。


「天使砲!!!」


結局、僕は超絶シンプルな、思いつくままの技名を叫んでみた。


すると、手首を中心に小さな魔法陣が展開されて、ピンク色に光りだす。

刹那、パシュンという音を立てて、木々の向こう側に飛んでいった。そして一秒も立たないうちに、巨大な爆裂音が鳴り響く。

衝撃に思わず目を細めて、やがてゆっくりと開いてみると、着弾したであろう地点がえぐれたような状態になっていて、木々が跡形もなく消失していた。


丸裸になったその着弾点では、男たち数人が腰を抜かして動けなくなっていた。


「え、僕、マジでビーム出るんだが……?」

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[一言] ビームは目からでしょ!(暴論)
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