第6回 街から完全に追い出されてしまいました
5話あたりで一度投稿の様子見をしようかと思いましたが、見どころが無さ過ぎた気がしたので、もう少し連続投稿を続けたいと思います。
街の外へと出てきた俺は広い草原を歩きながら何か食べれる物がないのかと、歩き回っていたが普通の草原にあるのはもちろん草が生えているだけなので、何もあるはずもなく結果として俺は近場に見えた森へと入っていった。
俺が入った森はまだ昼間だからか、意外と明るく木々の間からは陽射しが降り注いでいた。まるで散歩気分で歩いていたのだが、それどころではない。今の俺は腹減りさんなのだ、何かしらの木の実でも良いので口に入れたい。何か木の実は無いかと辺りをキョロキョロと見渡していると…見つけた!あれは木の実じゃないか?俺は腹が減っているというのに駆け足で木の実に近づいてそれを取る為に辺りに落ちていた棒切れを拾い、それでどうにかして取ろうと一生懸命棒を振り回した。
運良く木の実に棒が当たり実が落ちてきたのを必死にキャッチする。手に入れた木の実はリンゴの様に皮がツヤツヤとしだ見た目だが、色がオレンジ色をしている物だった。普段の俺なら警戒してすぐには口に入れなかっただろうが、この時の俺はとても腹が減っていたのでためらいもせずに手に入れたリンゴの様な木の実に齧りついた。
見た目に反して食感は桃の様な歯ごたえで柔らかい、味に関しては…酸っぱい。食べられない程では無いが、口をすぼめたくなるぐらいには酸っぱい。しかし、幾ら酸っぱいとは言えども食べられる事には変わりないので、お腹が満たされるぐらいには食べておくとしよう。
かなりお腹一杯になったな、良かった。しかし、今の俺は文無しだからまたお腹が減ると困るな…よし、いくつか木の実を持っていこう、そうすれば腹が減った時に食えるだろう。
先程の棒切れを使い木の実を取る為に上を見ながら棒を振り回すが、届かない…。届く範囲の木の実は既に取ってしまったので、後は届かない上にしかない。木登りでもして取りたい所だけど、この木…登ったら折れそうな程細い木なので、流石に無理だろう。
一応挑戦してみようと思い、足をかけて登ってみたが…あ、コレ無理だ。絶対折れるよ。ミシミシ言ってるから間違いないだろう。どうやら異世界の木でも地球にある木とさほど変わらないみたいだ。
結局、木の実を諦めた俺はお腹も一杯になった事だし、街に戻る事にした。
街の入り口の門に近づき普通に入っていこうとした所、出て行く時は何も言わなかった門番らしき兵士が槍を持って俺に近づいてきて、その槍を俺に向けてきて言った。
「おい!そこのお前止まれ!ここから先に入る為には身分証が必要だ。身分証を見せろ!」
身分証……はっ!そう言えば殿下が俺に後で作って上げるとは言われたが、受け取っていない…。どうしよう?
「どうした!身分証を早く出せ!まさか貴様…身分証を持っていないのか?」
「えっと…その…はい、持ってません。」
「何故持ってないのだ?普通は村出身でも持っているはずだ。それはどうした?」
「あの…ここの出身ではなく、ものすごく遠くから来たんです。それで、持っていないんです。」
「そうなのか?それなら仕方ないか…うん?ちょっと待ってろ。勝手に中に入るなよ?入ったらこの槍でお前を刺す事になるからな?」
兵士は俺に警告をした後にもう1人の門番と話をし始めた。その間もずっと俺を見ているのだが、段々と兵士の顔が険しくなってきた。あれ?もしかしてまずい方にいきそう?
俺と話していた兵士はついに怒りだした様な顔つきになっている。そしてそのままの状態で俺に向かって歩いてきた。大丈夫か?俺刺されないよな?
「おいお前!何故身分証を持っていないのに街から出てきたんだ!コイツがさっき街から1人で出ていくお前を見ていたそうだぞ!お前さては他国の間者だな?こっちへ来い!お前を牢にぶち込んでやる!」
「ち、違います!俺は間者なんかじゃありませんよ!そ、そうだ!俺の事なら殿下に聞いて下さい!殿下なら俺の事を知ってますから!」
しかし、この言葉がマズかった…殿下と俺が口にしてから周囲に居た人達の顔つきが一気に変わったのだ。えっ!なんで?
「寄りにも寄って殿下の知り合いだと?よくもぬけぬけとその様な事を言えるな!もう許せん!お前はこの槍で殺してくれる!おい!こいつを仕留めるぞ!」
目の前の兵士に呼ばれてもう1人の兵士まで槍を持って俺に向かってきた!ヤバい!このままだと殺されてしまう!そう思った俺は逃げ出そうと外に向かって振り返った瞬間、後ろから飛んできたであろう何かが俺の後頭部に当たった。
「イテッ!って石?何で石が?」
そう思い振り返るとおそらくこの街の人が俺に向かって振りかぶった状態だった。どうやら俺に石を投げたのはあの人らしい。何で石何か?と言おうとしたら相手の怒声によって遮られた。
「あの誰にでも別け隔てなくお優しい殿下を利用しようなんて最低な奴だ!お前なんかこの街に入ってくるな!出ていけ!」
その1人に呼応するように他の人達も出ていけ!と言いながら石を投げ始めたので、俺は石に当たらないように両手で頭を守るように抱えつつ、森に向かって逃げ出した。
後ろから槍を持った兵士が追いかけてくるが、流石に鎧を着たままだと早く走る事はできないようで、何とか振り切る事が出来た。
後ろを振り返りつつ追いかけて来ていないのを確認する。どうやら追いかけて来る気は無いようだ。少し安心して近くの木にもたれ掛かる、俺が一体何をしたって言うんだ?そんな事を考えていたらなんだか急に泣けてきた。
「俺だって好きでこんな世界に来たんじゃないんだぞ!何でこんな目に会わなければいけないんだ!俺を元の世界に帰せよーー!」
大声で思いっきり泣いた、思えばこの歳になるまでろくに泣いた事は無かったような気がする。もしかしたらここまで人目を気にせず泣いたのは初めてかもしれない。
しばらく時間が経ってからようやく落ち着く事が出来た。追い出されてしまったのは仕方がない。もう俺はあの街には戻れないだろう。だが、落ち着いてから気づいたが元々俺は自由になりたくてあの城から抜け出したのだ。ある意味で自業自得とも言える。(それでもあの扱いは酷いと思うが…)
仕方ないか…いちいち考えていてもどうにもならない。ここは前向きに考えよう。自由を得た代償だと思えばいいだろう。
しかし、そうなってくるとまた食事にありつけないな。よし…暗くなる前にさっきの木の実を取りに行こう。そして、出来たら獣に襲われないような場所も無いか探してみよう。
森の中を歩き回る、何処か休める所があれば助かるけど…森の中でそれを求めるのは難しいよなぁ。
ウロウロしながらたまに頭上を確認してみる、もしかしたら木の実があるかもしれないからな。しかしそれが悪かった。あまりに上ばかり気にしていた所為で、地面の様子を全く気にしていなかった。
まさか…地面に大穴が空いてるなんて思わなかった。
「ん?足がつかないって、穴!?ってヤバい!」
焦って近くの木に掴まろうとしたが、むなしくも俺の手は空を切ってしまい、そのまま大きな穴に落ちていった。
気がつくと俺は枯れ草の様な物の上で倒れていた、どうやら穴から落ちた後にこの降り積もった枯れ草の上で気を失っていたようだ。当たりを見渡すと薄暗く視界がはっきりしない。かなり近くの物なら見えるが、少し離れてしまうと視認するのが難しい。
さて、どうしようか?上を見ると光が差さないほど高さがあるように感じるので、上に戻る事はできないだろう。なら、ここで待つ?いやいや、もし上から俺みたいに…そうだな、獣が落ちてきたりしたら?俺なんてあっという間にパクっとされちゃいそうだ。
…移動しよう、それがいいに決まってる。枯れ草の上から下りてみる。下りてみると地面は割としっかりしてるな、多少湿っているが歩くには問題なさそうだ。
しばらくすると少しだけ目がなれてきた、これなら歩いていくのに問題ないかも?取り敢えず慎重に進んでみよう。
ゆっくりと足元を確認しつつ進んでいくと、先程までいた穴の下に比べて通路らしき場所にたどり着いた。通路というよりも洞窟?どっちでもいいや、この中は安全なのだろうか?しかし、道はここしかない、他に進む場所が無いし中に進む意外にないよな?怖いけど行ってみよう。俺は恐る恐る進む事にした。
慎重に進んでいく…今の所は何もないけど、逆にそれが怖いと言うか…何かが起きる前触れっぽい気がしてしょうがない。
あれ?気の所為か、さっきよりも明るい気がするな?俺の目が馴れてきたのか?それとも、本当に明るくなってきた?全然わからない。そんな事がありつつも前に進んでいると、ふと視界に何か光る物が見えた気がした。なんだろうと思いつつその方向を見てみると…やっぱり何かが光ってるのが見える。
もしかしたら天然の光る鉱石みたいな物とか光る苔とかがあったりするのかな?光った場所に行ってみる事にした。
段々と光が強くなってきたので、薄い期待をしつつ進んでいくと…アレってもしかして小屋じゃないのか?何でこんな薄暗い地下みたいな場所に小屋があるんだ?何はともあれ行ってみよう。今はまだ何にも遭遇してないが、これから先も会わないとは限らない。油断せずに行こう。
小屋の前に着くと…もしかして人がいるのか?屋根の上に煙突があるが、そこから煙が出ているのが見える。うまく行けば泊めて貰えるかもしれない。小屋の扉の前に立ちノックをしてみる。
「コンコン―すいませ~ん。どなたかいらっしゃいませんか~?もし、いらっしゃるのであれば一晩泊めて頂けないでしょうか?」
ノックをしてしばらく待つと…扉がギィっと開いていく、どんな人が住んでいるのか?毛むくじゃらの大男だろうか?それとも、夜な夜な包丁を研いでそうなお婆さんだろうか?そんな事を考えながら扉が開くのを待っていると、俺は目の前に現れた人物に驚かざるをえなかった。
何故かって?だって目の前に立っている人物は、毛むくじゃらの大男でもなければ夜な夜な包丁を研いでそうなお婆さんでもなく、とてもスタイルの良い褐色の美女だったからだ。
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