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33 最後の戦い



「あ~久しぶりのホームは、やっぱ落ち着くぜ。」

 どこか薄汚れた感じの漂う部屋。洞窟を人が住める環境へと地道にした場所だが、湿気が多く、匂いがこもって空気が悪い。しかし、男にとっては、ここが一番居心地のいい場所であった。


 男は、所々破けているが、高級なソファーに寝転がって、あくびをした。

 そんな男に、細身の男が肩をすくめる。


「俺は、断然町の方がいいぜ。俺ってば、綺麗好きだし・・・女もキレイどころが多いしな。」

 そう言って、ニカッと黄ばんだ歯を見せて笑った。


「よく言うぜ。おめーのキレイどころは、豚みたいな女ばかりじゃねぇか。」

「何お!グラマラスと言え!女の肉はたまらねぇぜ・・・胸も尻も腹もな!あと、ふくらはぎだな。太ももが・・・と言うやつがいるが、あれはわかっちゃいねぇ。ふくらはぎこそが」

「わかった、わかったから。お前が正しい。だからもう静かにしてくれ。寝不足なんだよ。」

 男はそう言うと、近くにあった小汚い布を顔に掛けた。


「うわ。ありえねぇぜ。それはありえねぇ。よくそんなものを顔に掛けられるぜ。」

「お前だって、豚のパンツに顔面ダイブしてたじゃねぇか。」

「豚じゃねぇ!グラマラスレディだ!いいか、今度豚なんて言ったら承知しないぜ!それに、お楽しみ中に部屋に入るのはやめて欲しいぜ!これ、マジだかんな!」

「あー悪かった。てか、俺に悪いと思ってる。あんな気持ちの悪いもんを見せて悪かったな俺。」

「オマエな!」

 細身の男が喚くのを、男は汚い布に隠れて笑っていた。


 こんな日がいつまでも続けばいい。


 それが、今日終わることになるとは知らない男の耳に、仲間たちの怒声が聞こえた。




「侵入者だ!」

 その仲間の叫びに、男と細身の男は自らの武器を構え、侵入者のもとへと急いだ。


「こっちは、女部屋か。」

「侵入者は、お楽しみ中ってか。オマエの得意分野だな、せいぜい邪魔しようぜ。」

「だな。」

 いつもの談笑をしていると、金属同士がぶつかり合う音が聞こえ始めた。おそらく、侵入者と戦闘になっているのだろう。


「こんな盗賊の家に入り込むなんて、どれほどの馬鹿か。楽しみだな。」

「女もいるといいな。できればグラマラスな。前の女たちは、全員細っこくて、魅力がなかったぜ。」

「そんなことを思ったのはお前だけだ。」




 女部屋。つまり、攫った女を入れておく部屋、牢屋だ。その扉の前に2人の男がいた。男に興味はない。殺すのみだ。


 一人は大剣を持ち、それを容易に振り回し、仲間たちを次々と斬りつける。その後ろで、ローブを羽織った男が、風の魔法を放ったり、大剣の男に強化魔法をかけたりと援護をしているようだ。


 たった2人の侵入者に、俺の仲間は次々と倒れた。


「化け物か。」

「こりゃ、お貴族様の護衛かなんかだろ。ほら、数日前に襲った坊ちゃんのところの奴だぜきっと。」

 細身の男の言葉に、確か仲間が貴族の坊ちゃんを襲ったと話していたことを思い出す。一人がやられて、他は逃げかえってきた。収穫ゼロっていう、とんだ仕事だったそうだ。


 確か、貴族の坊ちゃんが持つ、魔法袋を狙ってたんだよな。


 そんなことを男が考えていると、女部屋の扉が開き、一人の男が顔をのぞかせた。男は、自信なさげに眉をさげ、ローブの男に声をかけた。


「ロジ。」

「なっ、何をしておるのじゃ!わしが声をかけるまで中に居れと、言ったじゃろうが!」

 しわがれた声で、ローブの男が老人であるとわかり、その言葉で、顔をのぞかせている男に戦闘能力がないことがわかった。


「矢だ!奥の奴を狙え!」

 男が叫ぶと、矢を持っていた仲間が、顔をのぞかせている男の方へ矢を射る。


「ちっ!」

 老人と侮ったが、反射神経はいいようで、急いで展開した防御壁に矢は防がれた。


「ひっ!?」

 情けない声をあげた顔をのぞかせている男は、見なければいいのに、辺りの惨状を目の当たりにして、顔を青くした。


 大剣の男が、矢を持った仲間を斬り捨てる。


 辺りに漂う血の匂いを今更感じ取ったのか、顔をのぞかせている男は口元を抑えた。そして、バランスを崩したのか、こちら側へと身を乗り出して、地べたに座り込む。そのとき、男は座り込んだ男の腰についている黒い巾着袋が目についた。それは、貴族の坊ちゃんが持っていると報告された、魔法袋にそっくりだ。


あれが、貴族の坊ちゃんか?


「小僧!何をしておる!?」

 焦ったローブの男は、坊ちゃんに駆け寄り、扉の中へとそれを押し込むようにした。しかし、坊ちゃんは動こうとせず、なかなか扉の中へ押し込めないようだ。


「血が・・・腸が見えてるうっ・・・」

 坊ちゃんは、悲惨な死体を目の当たりにして参っているようだ。


「早く入るのじゃ!」

 ローブの男が坊ちゃんを立たせて、部屋へと押し込んだ。


「中身が・・・うっぐ。こんな、嘘だろ。」

 ぶつぶつとつぶやく、正気でない目をした坊ちゃん。これは使えるかもしれないと、俺は大声を張り上げて、坊ちゃんの方へ叫んだ。


「今だ!後ろから襲い掛かれ!」


 坊ちゃんの後ろの方を見ながら叫ぶ。坊ちゃんの視線を感じた。


 坊ちゃんは走った。女部屋から出て、こちらの方へ。

「ダメじゃ!小僧!」


 慌てたローブ男の声に、大剣の男が振り返った。その小さな隙に、男は細身の男に合図し、細身の男が、大剣の男に斬りかかった。


 大剣の男はすぐそれに気づき、細身の男を斬り捨てようとしたが、男の方へと剣を向けた。細身の男の剣は、自身の左腕で受け、血があふれ出す。


 男は、首を落とされていた。

 体は、大剣の男に剣を振り下ろすポーズのまま、後ろに倒れこむ。


 細身の男は、叫ぶ。男の名を。

 その声を聞いて、首は、わずかに口元の筋肉を震わせた。




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