前世
僕は、カーテンのかかってない窓から光を受け、目を覚ました。
いつも通り、何の変哲もない素朴な洋風な部屋。少し、埃が舞っている。
「…後でチリトリとほうき、貸してもらわなきゃ」
時計もないので、自分の体内時計を頼りにベッドからでる。靴はずっと履き続けているためか、光沢もないし、ボロボロだ。新品を買ってもらったときはいつだっただろう…。忘れてしまうくらい、ずっと前だ。足が大きくなって履けなくなった、と嘘をついてしまおうか。なんて考えながら、靴紐を結んだ。
すると、コンコン、と控えめなノックの音が聞こえてきた。
「…ノワール様、おはようございます」
「…おはよう。」
「本日も、お早いお目覚めですね。今日もお掃除…なされるのですか?」
「うん。母に内緒でまた…持ってきてくれるかな?」
「承知いたしました。」
入ってきたメイドは、丁寧なお辞儀をすると、静かにドアを閉じた。僕は少しため息をついて、窓の外を眺めた。そこには早朝だからか、外には誰もいやしない。つまらないな、と思いつつボーッとしてしまう。
僕の家柄は貴族であったが、庶民に近い位で、家もそこまで豪華ではなかった。けど、庭師やメイドも雇ってはいるし、そこそこいい暮らしはしてるんだろうなと思っていた。でも、家庭関係は僕にとっては最悪。上に姉、兄がいるのだが、その二人が優秀すぎた。賢明で運動神経も抜群、その上に音楽の才能にも恵まれていた。
両親は彼らを可愛がっていたが、僕は平凡で、努力しないと何もできない人材だった。だからなのか、両親は僕に会おうともしないし、上二人にも会わせてくれない。バカが移るから会わせたくないんだとさ。はは、自分の両親とわかってはいても、ほとほと呆れ果てる。僕は感染病の一種かなにかかっつーの。
ムシャクシャした感情の刈られながらも、僕はついさっきメイドさんから貰った掃除道具を使って、部屋の中を掃除しはじめた。
上の二人は、ピアノやバイオリンをやっているから、掃除はさせないんだって。あーあ、理不尽すぎる。
八つ当たりでほうきを強めにガシガシやっていたら、ふと、本棚の隙間から何かが光った。
「…ん?なんだろう。」
近づいて、とってみると、そこには埃まみれの五百円玉が落ちていたのであった。
「うげ、いつ落としたんだろう…汚い」
そう言いつつ、埃を払った。本棚の上に、僕が500円貯金している空き瓶に入れようか迷ったが、せっかく見つけたんだし、これは何かに使えと神様からの思し召しだと思い、これで何か買おうと思った。僕は、急いで掃除をすませ、一応メイドさんに買い物に行ってくる、と知らせておいた。どうせ両親は僕のこと、気にかけてもいないだろうから、僕が何しようとどうでもいいと思うけど。
外にでると朝の空気が寒くて、ブルッと体を震わせる。もういつの間にか秋だもんな…季節はあっという間に過ぎていく。
両腕を擦りながら、いつもの市場へと向かった。だけど、なんだか別の道から行きたくて、近道とは違う道へ入った。意味なんてほんとに無かったんだ。
路地裏みたいな場所を通ろうとしたら、誰かが座り込んでいた。服はボロボロで、髪の毛もボサボサ。溝のような臭いがするし、ホームレスかな、と思った。
「…お、金。お金を…恵んでくれませんか」
スッと知らない人たちが彼を見ないふりをして、通りすぎていく。しかも、彼は僕と同い年みたいだ。なのに一人で、童話でみたマッチ売りの少女みたいなことをしている。彼の場合、物を売らず、お金を集っているだけだけど。なんだか、哀れに思えてきて、放って置けなくなる感じがしてきた。
___今の、僕と同じ立場な気がして。
「…ん。」
気が付けば、僕は握りしめていた五百円を彼にあげていた。ポッケの中でずっと持ってたから、ポカポカしてて、風に当たると少し寒い。
「いいの…?あ、ありがとう、ご、ざいます」
余程衰弱してるのか、おずおずと僕の五百円玉を受け取った。ホームレスなのに、やけに丁寧に貰ってったな。
良いことした気分になって、僕は家に帰ろうとした。…その時、通行人の声が悲痛な叫び声を上げた。
馬車が、僕たちに向かって突進してきたのだ。…バーンという音とともに、身体中に激痛が走った。一瞬だったから、その時の感情なんて覚えてない。でも、五百円玉が落ちる音が聞こえて、それから、僕は、
あえて五百円玉を使ったのは、ドルとかセントとかの知識が無かったからです。中世ヨーロッパ辺りの舞台をイメージしてます(そもそも作者地理苦手)
自分の思い描いた創作子の物語書きたいな~と思ってたので、ストックが溜まり次第何曜更新とかやりたいなと思ってます。
誤字脱字など、気をつけて投稿していきたいと思います。マシュマロみたいにふんわり投稿ですが、何卒よろしくお願いいたします。