王立学園 -波乱の遠足 22-
カンタの指示に従って魔力を流す。すると、札が赤く発光する。
「よし、それで終わりだよ。キミに10枚ほど渡しておくから向こうから均等に置いていってくれるかい?」
カンタはそれだけいうと作業に入る。クラウンは教えてもらった事を考えながらカンタと反対方向に進む。
(この国では、魔力媒体としてこの『札』とやらを使うんだなぁ。持ち運びにも便利だし持って帰れるか後で聞いてみよう)
クラウンが『札』の凡庸性について置きながら考えているといつのまにかカンタと反対側で出会った。
「全部使い切った?余っても大丈夫だけど…」
「あ、大丈夫です。全部使い切りました」
「それじゃ魔力を流すけど、半分キミにお願いするね。……詠唱は一緒なのかな?」
「一緒だと思います。…多分」
「一応、術式は『警報』で記述してるから違っても大丈夫だとは思うけど…。とりあえず、流してみようか」
カンタが札に手を置き魔力を流すと札が光り始める。クラウンも自分が置いた札に魔力を流し発光させる。
「よし!成功だ!ささ、早く『警報』の中に入って!完全に閉めるから!」
「え…?閉める?」
「えっとね、『警報』の内側に防御結界を展開する予定だから、外にいつまでもいたら中に入れないんだよ。……使ったことあるんだよね?」
「ありますけど…。普通に出入りできましたよ?」
クラウンの言葉にカンタは動揺する。自分が教わった『警報』とは、展開させた後中に入り入り口を封鎖しなければならない。展開後は外から入ろうとすると警報が鳴る為、内側から閉めるのが常識であった。
「…よく無事だったね。普通は警報が鳴り響くよ…」
カンタが後に詳しく説明し、クラウンは過去に自分が展開した『警報』がハリボテだった事を知り幸運に感謝したのであった。『警報』の中に入ったカンタは防御結界を展開していく。クラウンは付き添いながら防御結界について学んでいく。カンタも邪魔にならないタイミングで話しかけてくるクラウンに好感を持ち、質問に答えてくれる。無事に展開し終わり、2人は休息に入る。
「お疲れ様、クラウン。無事に『警報』は展開できた?」
クラウンがカンタと話しているとアックスが声をかけてきた。後ろにはヘイゾウとバリー達もいる。
「うん、無事にできたよ。カンタさんね、すごい知識があるから勉強になるよ」
クラウンの率直な感想にカンタは顔を赤らめる。それを見たカンベエがからかうように話しかける。
「そう言ってもらえると光栄だな。コイツは頭でっかちだから、武術なんかはてんでダメなんだよ」
「兄者!武術はそこまで悪くはありませんよ!…兄者たちの基準が高過ぎるんですよ」
「そんなことはないぞカンタよ。儂等は護衛、近衛なのだからそれ相応の力が無ければ守り切る事ができぬ」
「ヘイゾウ様…。それ相応が高すぎるんですって」
「だが、大鬼ぐらいは倒せなければ護衛団には入れんぞ?」
「…大鬼なんて、まだボク1人じゃ倒せませんって。兄者たちぐらいの歳になればボクも強くなっているはずです!」
「おいおい…、そういうことは小鬼を倒せるようになってから言えよ?現に、バリーたちは小鬼たちを普通に倒しているらしいからな」
カンベエの言葉にカンタは驚き、クラウン達に目を向ける。実際は大鬼とも戦ってはいるが、バリーは言っていないのだろう。
「…頑張ります」
諦めたようにカンタが答えると、ヘイゾウが肩を叩き励ます。歳下に負けていると暗に告げられ、気落ちしていた為だ。
「うむ。稽古などが必要ならいつでも言うが良い。儂で良ければいつでも相手するからな」




