王立学園 -波乱の遠足 21-
「………!そうかい、君たちは王国出身なんだね。あー……どうしようかマジで。……とりあえずバリーはオレの後ろに。クラウンはカンタの後ろに乗ってくれ」
クラウン達の名前を聞いて動揺するカンベエであったが、彼なりに色々と配慮し出立するべく行動を開始する。クラウンもカンタに挨拶をし武器を預け、馬に乗せてもらう。そのままクラウン達は馬車近辺で待機し周囲には他の護衛が囲むように配置された。準備が出来たことを他の兵に知らせ、先頭からヘイゾウの大きな声が聞こえる。先頭から徐々に走り出し、クラウン達は森を後にするのであった。
「全体止まれーッ!この場所で休息を取る。速やかに警報と防御結界を展開せよ!」
ヘイゾウの指示を伝令が全体に伝える。兵士達は速やかに行動を開始する。誰も遅れを取らない所は練度が高いということなのであろう。
「クラウンくん…。ボク『警報』を準備しに行かないと行けないんだけど、この場にいてくれるかい?」
カンタが小声でクラウンに話しかける。カンタの心配はクラウンがもし何かをしでかしたら自分の責任になると恐れてだ。クラウンもそのつもりはない為快く了承するがまたもや伝令が来たことにより事態は変わる。
「クラウン!クラウンとやらはどこにいる!」
「は、はい!クラウンはぼくですが…」
伝令の声に驚きおそるおそる手を挙げ返事をする。その姿を見つけ伝令が近寄ってくる。
「お前がクラウンか?…なんだカンタと一緒に行動してたのか、なら丁度良かった。おい、カンタ。この者を連れ警報を展開してこい」
「えええ!?…なんでですか?」
「さぁな。ただ隊長命令だ。何やらその者は警報が使えるらしいとのことだぞ」
用件を終わらせた伝令はヘイゾウの元へと戻っていく。その後ろ姿を見送りながらクラウンは話の内容を振り返る。
(あの人が何でぼくが警報使えることを知ってるんだろう…。ん、そういえば…。ああ、アックスが話したのか)
ヘイゾウと共に向かったのはアックスだったと思い出しクラウンは納得をする。アックスの事だ、何かしら力になり害は無い事をアピールしてこいという事だとクラウンは考えこちらを懐疑的な目で見てるカンタへ話しかける。
「カンタさん、ぼくは『警報』を使うことができます。お手伝いさせてください」
「本当に使えるの?…キミはまだボクより歳下だよね?」
馬上の会話である程度の事を聞いていたカンタではあったが、自分より歳下の者が使えるという事を信じられなかった。それこそ自分には危機察知系の才能があり護衛団に見習いとして入団してはいるが、『警報』を使える兵士はここでは一握りだ。
「歳下ですけど…。森の中で実際『警報』を使いましたよ?」
カンタはクラウンの瞳を見つめるが嘘をついているようには感じられない。
「まぁ…。嘘はついていないようだし、使えることに関してはボクも大助かりだけど…。…はぁ、仕方ないか」
カンタが考える事を諦め、クラウンと共に陣から離れる。15mくらい離れたところでカンタが説明する。
「今から陣を中心に展開していくんだけど、この紙を使ってくれるかい?」
そう言ってクラウンへ文字が書かれた短冊のような紙を手渡す。
「これは『札』といって魔力が少なくても魔法が使える魔法道具なんだ。けど、先に魔力で登録しておかないと使えない代物さ」
ハキハキと喋るカンタ。小声だったのは演技をしていたとでもいうような変わり具合だ。その事に少し動揺しつつも、話の続きを促す。
「それで、協力して展開するからキミの魔力を登録しないといけない。その札の中心に親指を当てて魔力を流してくれるかい?」




