王立学園 -波乱の遠足 18-
「クラウン!……無事だったんだね?あまりにも遅かったから探しに行こうと思っていたよ!」
クラウンがバリー達の元へと戻ってきた時、アックスから声がかかる。その表情には焦りが浮かんでおり、どれくらいの時間が経っていたのかがわかる。
「あー、ごめんね…。果物をたくさん取ろうと思って、結構奥まで進んでて…」
申し訳なさそうに顔を俯かせるクラウンに、バリーとアックスが少しだけ説教を浴びせる。その説教も終わり、バリーがクラウンの腕の中にいる小さな獣の事を聞く。
「それで?その腕の中にいるのはなんだ?」
「あ、うん。この子は果物を探してるときに血まみれで倒れていたから回復させたんだ」
クラウンは子狐と出会った時の事を話す。もちろん、人型の何かの事や、白いモヤの魔法が使えた事は隠しながら。
「へぇー。それで保護してきたって訳だ。クラウンはいつも何か問題を引き連れてくるね」
アックスが笑いながらクラウンをからかう。アックスの中ではクラウンはトラブルメーカーである。
「そんなつもりはないんだけどね…。近くに親とかも居なかったから連れてきたんだけど…、やっぱり放したほうがいいかな?」
「んー、魔物とかだったらやべーだろうが、動物の赤ちゃんだからなぁ。別に引き取ってもいいんじゃねーか?」
「僕もいいと思うよ。…けど、一応魔物の可能性もあるしどこかで調べた方がいいよ」
「うん、そうするよ」
男達の話し合いが終わったのを遠目に見ていたミリィ達が声をかける。焚き火の準備も終わり、後は火をつけるだけの状態だ。
「話終わったー?もうあたしお腹ぺこぺこだよー!」
クラウン達がミリィ達の所へ向かい腰を下ろすと、クラウンは小規模空間から果物を取り出す。しかし、ミリィ達の目は果物では無くクラウンの股の所に丸くなっている子狐へと注目している。
「ん…?どうかしたの?」
「…その丸まっているモノは何かしら?」
「ああ、この子のこと?さっき果物探しているときに怪我をしているところを助けたんだ」
先程アックスに説明した事をミリィ達にも話す。
「まだ魔物の可能性があるからなんとも言えないけどね」
「「「かっ、可愛いー!!」」」
ミリィ達はクラウンの近くに寄り子狐を見つめている。すぐさま抱っこをしようとしないのは寝ているのを配慮した為か、見るだけに専念していた。
「…この光景をよ、アイツが見てたらどう思うだろうな」
「…あー、アイツなら『その手があったかッ!』とか言ってそうだ」
ミリィ達がクラウンの股間を凝視しながら可愛いと言っている異様な光景を見ながら、バリーとアックスはとある友人だったらどう思うかを話していた。
ミリィ達の声が騒がしかったのか、子狐が目を開き欠伸をする。そして、こちらを見ている目に驚くと素早く起き上がり尻尾を逆立てる。その光景を見たクラウンが優しく子狐を撫でる。
「大丈夫だよ。キミには危害なんて加えないから…。安心して?」
クラウンに撫でられ落ち着いたのか、徐々に尻尾が下がり気持ち良さそうに目を細める。
「はぁ……。めっちゃ可愛い…」
「私も撫でたいわ…」
「わっちも…」
羨望の眼差しでクラウンを見つめるミリィ達。苦笑いを浮かべながらクラウンが話し出す。
「ところで、『シキガミ』は戻ってきた?」
「いや、まだだ。マユリが言うには近づいている気配も無いってことだ」
「そっか…。なら今日も野宿だね…」
「まぁ仕方ないさ。まだ助かる可能性があるだけでもマシさ」
「俺は別に嫌いじゃないからいいんだけどなー」
クラウン達は互いにお喋りをしながら時を過ごす。そこそこの量があった果物が半分くらい減った時ミリィがクラウンへ話しかける。
「ねぇクラウン!この子に名前とかつけないの?」
子狐に果物を食べさせながらミリィが尋ねる。子狐もミリィ達に対しての警戒心は無くなったようだ。
「名前…か。付けた方がいいのかな?」
「どうだろう?しっかりと責任持つなら付けてもいいんじゃないかな?」
「名付けすると別れがツライけどな!」
「うーん……。なんとなくだけど魔物ではないと思うし…。名前をつけようかな?」
「せっかくですし、皆で名前を考えましょ!」
「可愛い名前にするでありんす!」




