王立学園 -波乱の遠足 16-
バトルシーンは苦手です
「アックス!そのまま首を狙って!」
クラウンからの指示が来る前にアックスはより魔力を込めた魔法を放つ。
「--『木鎌・木』」
アックスの放った魔法により飛竜の首が胴体と別れを告げる。返り血を少し浴びながらアックスは口元に笑みを浮かべていた。
「喰らえっ!--『壱文字』」
アックスが飛竜を倒したと同時にバリーも剣技を発動する。バリーの剣が空間を裂くように振り切られると、延長線上にいた飛竜が真っ二つに斬られ、絶命する。
最後の1匹が撤退しようと背を向けるが逃げる事は叶わなかった。クラウンの魔法が翼に刺さり、ミリィの魔法でトドメを刺される。数が少なかったのが幸いしたのか、クラウン達は傷を負う事なく戦いを終えるのであった。
「--ふぅ。意外と楽勝だったぜ」
バリーがそう言いながら腰を下ろす。アックス達もその場に同じく腰を下ろし次々に口を開く。
「飛竜ってもっと強いのかと思ってた!」
「そうね。ちょっとだけ拍子抜けだわ」
「飛竜は単体なら『下級』だけど、群れで襲いかかる習性があって多ければ多いほど難易度も上がるからね…。運が良かったよ」
「そうでありんすね。わっちたちも襲われたときは50匹以上いたでありんすから…」
マユリの言葉に一同は顔を見合わせる。50匹以上という事は飛竜が群れを呼んでいた可能性があるかもしれない。そう考えたクラウンはこの場所から移動することを提案する。アックス達も賛同しこの場所から離れる事にした。だが、目の前は草原、後ろは森とどちらに逃げても魔物の襲来は確実である。結局、森の中に避難するという形で落ち着いた。
「マユリ、『シキガミ』についてなんだけど、さっきの場所からかなり離れたりしても大丈夫なのかい?」
「大丈夫でありんすよ。『シキガミ』はわっちの魔力を頼りに移動するでありんすから。わっちが死なない限りは必ず探し出しんす」
マユリの言にアックスは頷く。これで、もし襲われてかなり移動したとしても捜索は大丈夫だと確信して。
「それならマユリを必ず守らなきゃね。…ところであの『シキガミ』はマユリのだってわかるのかい?」
「あの『シキガミ』はわっちの魔力を持たせていて、この国の兵士ならすぐ魔力検査するでありんすよ。…『シキガミ』はよく伝令などで使いんすから」
「なるほど。だから助けを呼べるってことだね」
「そういうことでありんす」
森の中で周囲を警戒しながらマユリとアックスが話を続ける。ミリィとクラウンは上空を、バリーは森から出てくる魔物を警戒している。日が頂点に達して、ジリジリと肌が焼けるような感覚になる。気温も上昇しクラウン達は水分補給を交代で行い、『シキガミ』が戻ってくるのを待ちわびる。
そして、日が沈み始め辺りの気温が徐々に下がっていく。魔物との遭遇もなく体力を消耗し誰かの腹が鳴る。今日一日何も食べていない事を思い出し、クラウンは森の中に入り果実を探しに行く。アックスが着いて行くと申し出たが、すぐ戻るからと断った。心配をするアックス達を尻目にクラウンは森の中へと入って行った。
人数分の果実はすぐ集める事が出来た。ただ、どのくらい時間がかかるかはわからない為、余分に集めようとクラウンは森の奥へと入って行く。そして、小規模空間が程よく埋まり、アックス達の元へと戻ろうとしたとき、木の陰から何かがこちらを覗き込む視線を感じる。その視線の方向へと目を向けるとその何かは姿をくらます。クラウンは抜剣しゆっくりとその視線を感じた場所へと近づく。しかし、着いたもののその場所には何もいなかった。
(なんだったんだろう?…でも何か視線を感じたのは確かだ)
その場で周囲を見渡すと、その場所から少し奥の方に何やら光っているモノが目に入る。その光に誘われるようにクラウンはどんどん奥地へと進んで行く。




