王立学園 -波乱の遠足 15-
ポートセルム宗教国家には『アキノミヤ』・『ジングウジ』・『ホウジョウ』の三大名家が存在しており、独自の特殊な魔術を継承している。また、その独自の魔術には属性が存在していない。国民は、属性魔法を主としており、三大名家は属性魔法と魔術の2種類を使用している特殊な国となっている。
「ってことは…。マユリってお嬢様なの?」
クラウンが驚いたように言うと、不思議そうにマユリは首を傾げる。
「同盟国なら知っているはずでありんすが…?」
クラウンは慌ててアックス達の顔を見るが、その顔は当たり前だろ?という文字が浮かんでいた。
「ええ…?みんな知ってたんだ…。教えてくれてもいいじゃないか」
「いやいや、俺はクラウンも知ってるもんだと思ってたぜ?」
「あたしもー!だから、手を握ったりしたんでしょ?」
「ミリィ…。それ関係ある?」
ツンツンとした態度のミリィ。理由を知っているバリー達は苦笑を洩らすが、クラウンは理解出来ていない。空気を変えるべく、ヘレーナが口を開く。
「それよりも!その『シキガミ』についてもっと詳しく聞かせて?」
「僕も興味あるなぁ」
「俺は難しい話はもう遠慮願いたいんだが…」
ヘレーナとアックスの要望により『シキガミ』についてマユリが色々と話をする。途中で何回か質問をし、それに答えるという事を何回か繰り返した頃バリーが何かを見つける。
「おい、話はそこで終わりだ。…どうやら面倒事だぜ」
抜剣しながら、バリーが空を見上げる。クラウン達も各々武器を構えながら空を見上げる。
「…ッ!飛竜!!」
マユリが舌打ちと共に敵の名前を口にする。数は3匹でクラウン達の頭上を旋回している。
「どうするよクラウン?」
「地面に降りてこないと攻撃できないね…。まずは魔法で狙うしかないかな?」
クラウンの指示に従い、隊形を変える。真ん中にマユリを置き、両翼にクラウンとミリィ。ヘレーナとアックスは支援準備、バリーはマユリを守るべく前に立つ。
「クラウン!強化魔法は全員にかけ終わったよ!」
「わかった!ミリィ、遠距離魔法で真ん中を狙って!注意を引く為だから、当てなくても大丈夫!」
「わかった!クラウンはどうするの?」
「ぼくはミリィが魔法を放った後時間差で詠唱するよ!ぼくの魔法は当てるのが前提だけど!」
「よっしゃ!こっちはいつでもいいぜ!マユリ!そこから動くなよ!」
「わっちも迎撃した方がいいでありんすか!?」
「いや、マユリの能力はまだわかりきってないから参加しないで!ただし!自分が狙われたときは対処して!」
クラウンがバリー達にしっかりと指示を出し、各々それを了承する。準備が整ったのを確認したクラウンがミリィへ開幕の合図を出す。
「ミリィ!」
「任せて!--『水刃・水』」
鎌のような形状の魔法が飛竜へと飛んでいく。だが、それを躱し飛竜が急降下してクラウン達へと襲いかかる。
「よし!かかった!--『火縛・火』」
クラウンの魔法が真ん中にいた飛竜へと放たれる。火で出来た縄が締め付けそのまま地へ落とす。
「バリー!そのままそいつを狙って!ヘレナは防御魔法をバリーに!」
「任せろ!--『火炎斬』!」
バリーが火を纏った剣技を飛竜へと放つ。だが、一撃で倒す事は出来ず尻尾を使って攻撃を繰り出してくる。
「--『風盾・風』」
間一髪ヘレーナの魔法が間に合い尻尾の一撃を無効化するが、その攻撃力により魔法が相殺される。
「ミリィ!上空にもう一度魔法を!今度は狙ってね!」
クラウンの魔法を警戒してか、2匹の飛竜は再び上空に戻っていた。ミリィが再び同じ魔法を上空へと放ち、微かに翼部分に命中する。翼に当たり少し高度を落とす飛竜にクラウンが魔法を放つ。
「---『火剣・火』」
クラウンの魔法が翼へと命中しそこから炎上していく。完全に飛ぶ事が出来なくなった飛竜がアックスの元へと落ちてくる。




