王立学園 -波乱の遠足 14-
マユリの言葉に驚愕するクラウン達。中でもミリィの慌てようは異常であった。
「ダメよ!そんなこと絶対ダメ!…それならあたしがするわ!!クラウンとキスなんてぜぇーったいダメ!!」
わたわたと手を動かしながら猛抗議するミリィ。そんなミリィへとバリー達は生暖かい眼差しを向ける。クラウンはマユリ衝撃的な一言に絶句していた為気付かない。
「わ、わっちだって初めては取っておきたいでありんす!!」
マユリとミリィが2人して口論している中、アックスがため息混じりに話しかける。
「はぁ…。2人とも落ち着いて。マユリ?魔力の供給はそれ以外でないのかな?」
アックスの一言にマユリ達は口論を一旦終える。
「あることはありんすが…。その方法だと膨大な魔力をもらうことになりんす」
クラウンとアックスはその言葉で互いの顔を見合わせる。クラウンが頷くのを確認してからアックスが口を開く。
「なら大丈夫だよ。…それに、そうしないとミリィがマユリに手を出しそうで怖いからね」
肩で息をしているミリィを横目にアックスは小さく呟く。マユリも危機感を持っていたのかすぐさまアックスの提案に乗る。
「そ、そうでありんすね!なら、クラウン…。わっちの手を握り魔力をくんなまし」
マユリが慌てながらクラウンへ指示する。クラウンはマユリの指示に従い手を握る。
「ク、クラウン。その…両手を握って欲しいでありんす…」
クラウンがマユリの指と指とをしっかり組んで握る。ギリッと何処からか歯を噛み締めたような音が聞こえたが、発生源はわからなかった。そして、マユリが少し頬を染めながら詠唱する。
「--『吸収』」
クラウンは自分から何かが奪われていくような感覚を受ける。ジワジワとではなく、ごっそりとだ。
「ッ!!……成功でありんす」
マユリがクラウンへと伝えるとすぐさま『シキガミ』を召喚する。
「--『召喚』」
マユリが地面に置いていた長方形の紙に魔力を流すと、その紙から魔法陣が空へと展開される。そして、眩い光を放つとその中から1匹の鳥の魔物が出てくる。
「…凄いね。これが『召喚術』か…」
アックスの言葉にマユリが訂正する。
「それはちょっと違いんす。『シキガミ』は元々契約している『使い魔』を指すでありんす。『召喚術』は魔力の量によって呼び出す魔法でありんすえ」
マユリがそう話すと呼び出した『シキガミ』に紙を持たせる。
「さぁ、近くの街を探してこの文を門番か兵士に渡すでありんす」
マユリの言葉に鳥が一声鳴くと空へと羽ばたいて行く。その後ろ姿を見送ったマユリがクラウン達へと顔を向ける。
「『シキガミ』がいつ戻るかは不明でありんすが、それまではここで待機しときんしょうか」
「そうしよう。アックスたちもそれでいいよね?」
マユリの提案に頷くと周囲を警戒しながらその場に腰を下ろす。今回は周囲に『警報』は展開しなかった。そして、話題は先程の『シキガミ』についてマユリは質問責めに合う。
「ねぇマユリ?あの魔法、『シキガミ』は私たちでも習得できるの?」
「うーん…、あれは『陰陽道』でありんすから…。『シキガミ』は難しいかと思いんす」
「『陰陽道』?なぁに?それ?」
「わっちたち一族の特殊な魔術でありんす。この国でも属性魔法はありんすが、それとはちょっと違う魔法でありんす」
「へぇ?どういう風に違うの?」
「わっちたちの使う『陰陽道』には属性がないでありんす。『使い魔』と契約し、その力を借りて戦う事がわっちたちの戦闘方法でありんす」
「んん?それはポートセルムの国民全員がその『陰陽道』とやらを使うのか?」
「この『陰陽道』は『ホウジョウ家』しか使うことのできない魔術でありんす。他の民は、バリーたちと一緒で属性魔法を使うでありんすえ」




