王立学園 -波乱の遠足 12-
「アックス、正直に教えてほしい。何があったの?」
クラウンは真っ直ぐにアックスを見つめるが、視線は合わず、焚き火を見たままアックスが答える。
「……君が何か白いモヤを操り僕たちを助けてくれた。しかもモヤは僕たちを包み、回復させてくれた。……どうだい?なんとも想像つかない話だろ?」
焚き火の木を弄りながらアックスは苦笑を浮かべる。そのまま、話を信じていないクラウンへと再度喋りかける。
「クラウン…。この話は事実だからね?…けど、これは僕たちだけで解決できる内容でも無いだろうし、この話はこれでおしまい。そうしてくれるかい?」
この話はもう終わりだとアックスがクラウンに告げる。納得出来るはずもなくクラウンが抗議するが、アックスの提案--王都に帰ってエースに聞くという事--に渋々頷くのであった。
「話は変わるんだけど、あの女の人は?」
クラウンの視線の先にはミリィとヘレーナに挟まれているマユリがいた。
「君が助けた女の人だよ。名前はマユリ、僕たちよりも一個上だね」
「助かったんだ!よかったよかった。…それで?それ以外には何か聞いたの?」
「ああ、この森の場所、名前も聞いたよ。そして、僕たちが今どこにいるのかも」
「へぇー!じゃあ、すぐ救助が来るだろうね!」
「…うーん、どうだろうね?……驚かないで欲しいんだけど、僕たちがいる場所はポートセルム国なんだよ」
「ちょっと何言ってるかわかんない…」
「…ごめん。僕も整理しながら話してたよ…。まずは…ここはポートセルム宗教国家で、今いる場所は迷いの森という場所らしい」
「……ええええ!?」
アックスの言葉に驚くクラウン。その声が聞こえたのか、バリー達が飛び跳ねるように起き上がる。
「なんだなんだ!?敵か!?」
抜剣しながら周囲を警戒するバリー。ミリィ達もマユリを囲うように体勢を整える。
「……ご、ごめん。ぼくの声でした…」
声のする方へバリー達が目を向けるとそこに顔を赤くしているクラウンがいた。だが、それを見たバリー達は言葉を発するよりも先に行動していた。
「クラウン!!目が覚めたのか!?」
バリーがクラウンの肩を掴み確認するように尋ねる。ミリィ達もマユリを連れ近くへと来ていた。
「う、うん。さっき目を覚ましたよ。…それでアックスから色々と話を聞いていたんだよ」
「クラウン、昨日は本当に助かりましたわ!ありがとうね!」
「……よかったぁ。目を覚まさないかと不安だったよぉー」
心のこもった感謝を伝えるヘレーナとは対照的にミリィは力が抜けたようにその場に座り込む。だが、その表情には安堵が浮かんでいた。
「…昨日は助けていただきありがとうございました。わっちの名前は『ホウジョウ=マユリ』、マユリと呼んでくんなまし」
クラウンに一礼をし感謝を伝えるマユリ。何故だかわからないが頬が軽く朱に染まっている。
「…あ、えーっと、『フレイゼン=クラウン』です。ぼくのことはクラウンと呼んでください」
クラウンも慌ててマユリへと自己紹介する。なんとも言えない空気が流れる中、アックスが口を開く。
「それじゃ、今日の動きを話し合いたいんだけどいいかな?」
アックスの提案に反対の者はおらず、話し合いが開始される。昨日軽く話していた事もありそこまで時間もかからず話し合いは終わった。
「…よし、それじゃ道案内はマユリに頼むとして…。森から出た後はどうしようか?」
「マユリの話じゃ近くの街まではそこそこ遠いんだろ?」
「近くを通りかかる人を待つってのも1つの手だよねー?」
「でも、近寄る人なんているのかしら?魔物が出る森なのよ?」
森から出た後の事をバリー達は考えを巡らせる。そんな中マユリが平然としたように言葉を発する。




