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白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
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王立学園 -波乱の遠足 11-

「…誰も寝てる人などいないでありんすが?」


「ああ、少し離れたところにいるよ。…ほら、あそこで横になってる影が見えないかい?」


アックスが指差す方向をマユリは目を細めながら見つめる。暗くてあまり見えないが、焚き火の明かりで微かに認識できた。


「ふぅん…。あれがクラウンでありんすか?」


「そうだぜマユリさん!あんたを1番最初に見つけ助けようとした男さ!」


「普段はナヨナヨしてるんだけどねー。でも、優しくてすごく頼れるカッコいい人だよ!」


ミリィの言葉にバリー達が頷き、次々にクラウンが如何に凄かったかをマユリに聞かせる。マユリも興味を持ったのか話に食いつく。


「そんなに強いんでありんすか…。少しだけ興味が湧きんした。……ところで、あなたたちの名前を聞いていなんした。お聞きしてもいいでありんすかえ?」


「そういえばまだ名前言ってなかったな。俺はバリーだ」


「私はヘレーナ。ヘレナとお呼びください」


「あたしはミリィだよー!」


「僕はアックスだよ。そして、あっちがクラウン。みんな同い年なんだ」


「そういえば歳も言ってなかったでありんすね。わっちは今年で12歳になりんす」


「僕たちは全員10歳だよ。マユリさんよりも歳下だね」


「マユリとお呼びおくんなんし。あと敬語もいりんせん。…まぁ、時と場合によってではありんすが」


マユリとの自己紹介を終え、あとは軽く雑談を交わし交代制で睡眠をとる。精神的疲労の為かすぐ眠りに落ちていく。バリーも警戒しながらであったが、疲労には勝てずゆっくりと夢の世界へと旅立ってしまう。運が良かったのか、その夜は警報(アラーム)が発動する事なく無事に朝を迎えるのであった。




翌朝、アックスはひんやりとした朝の空気に身を震わせながら目を覚ます。周囲を見渡し安全かどうかを確認する。バリーの後ろ姿を見つけ、申し訳なさそうに声をかける。


「ご、ごめんバリー。ぐっすり眠ってたみたいで…。…バリー?」


再度声をかけるとバリーからの返事は無い。アックスはバリーの顔を覗き込んでみると口を半開きにし、少しだけ何かが垂れている状態でバリーは眠っていた。


「…寝てたのか。まぁ、極度に昨日は疲れていたしね…」


見張り役が寝るということは普通なら大問題ではあるが、幸いにも魔物が出てくることもなかったのでそのままバリーを寝かせる事にした。アックスは、周囲から枯れ木を探し燻っている焚き火へと投入し、風魔法を発動させる。種火が少しずつ大きくなり枯れ木へと移りひんやりとした空気を暖かくしていく。



パチパチと燃える音が響き渡る。その音が聞こえたのかクラウンがゆっくりと起き上がる。意識が混濁している中、音の発生源の方へ目を向けると暖を取っているアックスが目に入る。そして、昨日の記憶をぼんやりとだが思い出し、慌てて周囲を見渡す。だが、クラウンの目には身体を寄せ合って寝ている女性陣と胡座をかいているバリーしか映らない。疑問を覚え、焚き火の前に座っているアックスの所へと向かう。


「やあ、目が覚めたかい?」


「おはようアックス。…あの魔物はどうなったの?」


クラウンがアックスの対面に座り真面目な表情で話しかける。


「…倒したよ。その…なんだ。白いモヤみたいなのが出てきたんだけど覚えているかい?」


「白いモヤ…?なんだいそれは?」


「……記憶にないのかい?」


「……その言い方はまた僕が何かしたみたいだね」


アックスの表情でクラウンは状況を悟る。クラウンが口を開こうとするよりも先にアックスが開く。


「うん。みたいという表現は違うかな。…そうだね、クラウンは何かをしたんだ」


言い切るように言葉を発するアックスに対して、やはり疑問を覚えるクラウン。


「まぁ、そのおかげで僕たちは助かったんだけどね」


重要な部分をはぐらかすアックスに対し、クラウンも段々と表情を険しくしていく。木が燃える音が響く中、クラウンは覚悟を決めアックスに問い詰める。

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