王立学園 -波乱の遠足 8-
(痛ててて…。ここは……どこだ?)
クラウンはバリー達が大鬼と戦っている音で意識を取り戻す。
(アレ?なんでバリー達が?…そうか、あの魔物の攻撃を受けて意識を失ってたのか…)
徐々に記憶を思い出してきたクラウンは動き出そうとして身体に力を入れる。しかし、力を入れた瞬間激痛が走る。
(ああああああ!なんだこれ!?どこもかしこも痛い!………と、とりあえず回復しなきゃ…)
クラウンは詠唱もせずに回復魔法を自分にかける。
(…よし、さっきの痛みは全く無くなった!あとは起き上がってバリー達の支援をしなきゃ…)
身体を起こしバリー達を助けようとした時、クラウンの視界に小鬼に囲まれているミリィ達と大鬼の一撃を浴びそうになるバリー達が映る。
(ヤバい!どうする!?バリー達とミリィ達を救う方法はないか!?考えろ!何かいい考えはないか!?)
クラウンは思考を回転させ状況を打破する考えを出そうとしていた。しかし、そんな都合のいい考えは浮かばず時間だけが過ぎていく。--そして。
「キャアアッ!」
ミリィが傷を負ったのだろう。その悲痛な叫びがクラウンの耳へと届く。その時クラウンの中で何かが弾け、クラウンは意識を手放してしまう。しかし、クラウンの中から出てきたその何かはこの局面を覆す何かであった……。
「な、なんだこりゃ?」
バリーがゆっくりと眼を開けるとそこには真っ白な人型のようなモヤが大鬼の一撃を受け止めていた。その状況に呆然としていたが、ミリィ達の事を思い出し慌てて振り向くと、そこにはミリィ達を守るように真っ白な人型のモヤ達が小鬼と対峙していた。何が起きてるのかがさっぱりわからないが、一先ずクラウンを救出し逃げる事が優先と考えバリーは行動に移す。だが、それよりも先に事態は急展開を迎える。
目の前の真っ白な人型のモヤが大鬼に抱きつくと白い炎と変化し、大鬼を焼き尽くしていった。そして、白い炎の後ろには魔物へと手を向けているクラウンの姿があった。クラウンがまるで指揮者のように手を振るうと、その手に従うように小鬼と対峙していたモヤが抱きつき大鬼と同じ様に焼き尽くしていった。
バリー達は言葉を失っていた。今さっき目の前で起きた光景と未知の魔法、そしてその破壊力。想像を絶する事が起きた事により脳が思考する事を手放していた。だが、次のクラウンの行動により脳味噌を活動させる事となる。
魔物達を焼き尽くしたクラウンはそのまま両手を広げバリー達へと風を送る様な動作をする。するとそれに反応する様にクラウンからまた白いモヤが出てきてバリー達を包んでいく。先程の光景を目にしているバリー達は叫び声をあげる。
「うおおおおお!ク、クラウン!やめてくれええ!」
「ちょ、ちょっとクラウン!何する気だい!?」
「キャアア!何よこれ!?」
「ク、クラウン!眼を覚ましてちょうだい!」
バリー達の声にクラウンは反応すらしない。そしてそのまま白いモヤがバリー達の身体の中へと入っていく。……その時のバリー達の心境は恐怖一色であっただろう。眼を見開き苦悶の表情を浮かべ、炎に焼かれる痛みがバリー達を襲う………筈であった。ふと、バリー達は自分の身体を見てみる。すると、確かに白いモヤが纏わり付いているが、熱さや痛みなどは感じず、むしろ、疲れが取れていく様な感じさえ受ける。その状況を見たクラウンが手を勢いよく上にあげるとバリー達の身体からモヤが離れていった。そして、自分の役割を終えたかの様にクラウンもその場に倒れるのであった。




