王立学園 -秒速の捜索網 1-
時は戻り、バリー達が魔方陣で違う場所に移動したときドランは気怠そうに転移先で待っていた。
(あー、ったくめんどくせーな。わざわざ海浜公園じゃなくてもいいのに…。王都とかでいーじゃねーか)
頭の中で愚痴を溢していると、魔方陣から最後のパーティが転移してきた。パーティのリーダーが最後の組みだと伝えるとドランは海浜公園へと足を向ける。その時、ふと疑問が頭をよぎった。
(ん?あのムカつく野郎の弟の顔が無いな。毎度毎度転移先で確認の時見ている顔だし、嫌でも目に入る顔なのに…)
ドランが疑問を持つと同時に、生徒達からも疑問の声が上がる。
「せ、先生!バリー達の姿が無いです!僕たちの後ろにいたはずなんですが!」
ジゼルの言葉に周りの生徒達も気付き始める。クラスで人気のパーティがいないという事に。この事態に気怠そうにしていたドランの表情がガラリと変化する。
(バリーたちがいない?どういうことだ?)
ドランは近くにいた騎士団の1人に声をかけ、両隊長を呼ぶようにお願いする。そのまま、ジゼル達のパーティと最後のパーティの生徒に声をかける。
「おい、お前たち。転移するとき何か問題とかあったか?」
ドランの真面目な声にスファレが答える。
「いえ…。僕たちのパーティが魔方陣に乗った時は何もなかったですよー」
「オレたちもです。バリーたちの後に入りましたけど、何事もなくここに転移しましたよ」
ドランが生徒達に確認を取っていると、小屋の中から後続の護衛をしていた騎士団の団員が出てくる。不穏な空気に団員は首を傾げる。
「すまんが、魔方陣に何か問題は無かったか?」
「いえ…。特に何も異常などは見当たりませんでしたが…。……何かあったのですか?」
「…バリーたちのパーティが全員居ないんだ。申し訳ないがもう一度戻って転移先の小屋の中と周囲を調べてきてくれないか?」
団員はドランの言葉に素早く行動する。口を挟む余裕は無いと感じたからだ。急ぎ小屋へと戻る団員を見送り、振り返る。丁度その時前方より、両隊長が走ってくるのが見えた。
「お待たせしましたドラン先生。一体何用でしょうか?」
「緊急事態だ。バリーたち公爵家4人とフレイゼン伯爵家の子息が行方不明になった。1つ前の小屋には後続の団員に周囲の状況を調べて来るように頼んでいる」
ドランの真面目な表情に両隊長は焦りを浮かべる。だが、すぐさま思考を切り替え最善を考える。
「……わかりました。急ぎ他の団長たちに連絡を飛ばします。それと生徒たちはこのまま海浜公園へと連れて行き、領主の館へ避難させます」
「よろしくお願いします。…それじゃ、俺は学園長に連絡を飛ばすので他の団員たちにしっかりと護衛をさせるようお願いします」
ドランの言葉に両隊長は頷くと行動を開始する。魔術団団長はすぐさま魔法で連絡を他の団長に飛ばし、騎士団団長は団員達を集め、生徒達の護衛をさせる。厳戒態勢で臨めと指示し、周囲を警戒している冒険者にも伝える。それが終わると騎士団の団長が先頭に立ち、生徒達を連れ海浜公園へと向かっていった。
「連絡が来るまでは時間が少しかかると思います。……各公爵家へはどうしましょう?」
「……学園長の返事待ちだな。ま、あのばーさんのことだ。もう連絡してるだろうがな」
ドランの言葉に魔術団団長、アネモネが頷く。
「それよりもドラン…。これはどっちだと思う?」
「どっちとか…。明らかに計画的犯行だろ。ご丁寧に公爵家4人が居なくなったからな」
「あー、違う違う。それは私でもわかるよ。どっちって聞いたのは犯人の方さ」
「…んー、確証は無いが帝国か不穏分子だろうな。最悪の場合は両方が手を組んだ場合だな」
ドラン達が意見を話し合っていると、近くに歪な空間が生まれそこから完全武装した者達が出てくる。
「…おいおい、まじかよ…」
「…『転移門』で来るとは…」
『転移門』とは上級魔法であり、訪れた事のある場所なら何処へでも行ける魔法である。ただし、相当の魔力を消費するので使う者は限られてくる。




