王立学園 -波乱の遠足 5-
「もう日が暮れてきたね…。これ以上進むのは危険だしここで野営しようか」
アックスの一言にクラウン達は仕方なく頷く。野営など上流階級の子供達は経験した事は無い。しかし、知識としては本を読んだりして学んではいた。その知識を活かし、木を集め魔法を使って焚き火を準備した。あとは食糧があれば最高なのだが、残念ながら道中で収穫した果物ぐらいしか無かった。キノコ類も収穫はしたが、見るからに怪しい色をしていた為食べる事はやめておいた。
「---よしっ。これで『警報』は終わりっと」
クラウンはアックスと共に周囲に『警報』を展開していた。睡眠を取る為先程よりやや広めに展開しているが、疲れ切っている2人には魔力消費量の事など考える余地も無かった。
「おう、お疲れクラウン。もう終わったのか?」
「うん!ちゃんと魔力が流れてるのも確認したから大丈夫だと思う。ちゃんと反応してくれるかはわかんないけどね…」
「大丈夫だよ。僕も確認したし、念のため交代制で見張りをするしある程度は安全だよ」
クラウンの心配そうな言葉をアックスが安心させるように言葉を繋ぐ。クラウン達3人は焚き火の近くに陣取り、これからの予定を話し合う。ミリィとヘレナは疲れきっていた為、先に寝かせている。
「さて、今日はとりあえず大丈夫だとして…。明日からどうするかだよな。食糧もねーし、場所すらもわかんねーからな」
「そうだね…。結構歩いたと思うけど、まだ出口が見当たらないね」
「ぼくたちは大丈夫だと思うけど、ミリィ達の気力が持つかが心配だな…」
「そこは大丈夫だ。男だろーが女だろーが俺らは公爵家なんだからな、素直には根はあげねーだろう。…ま、内心はわからんがな」
「その時はその時さ。今はとりあえず休息を充分に取ってもらって疲れを癒すしかないよ」
「…そうだね。その時に考えればいいか」
クラウンはミリィ達の事を心配していたが、バリー達の意見に従い、その時が来るまでは放置しておこうと考える。そして、バリーが話題を変える。
「そういえばクラウン、お前実戦してみてどうだったか?」
「最初は緊張して何も出来なかったけど、今は多少良くはなってるかな?」
「いやいや、多少どころじゃないと思うよ?指示も的確だし、本当に初めてだったのかって疑うぐらいだよ」
アックスの苦笑交じりの言葉にバリーも強く頷く。クラウンは少しだけ照れるが、賛辞として受け止める。
「しかし、クラウンには悪いが、クラウンがこの騒動に巻き込まれて助かったわ」
バリーの言葉にクラウンは首を傾げる。
「あー…。もし、クラウンが居なかったら前衛が俺しか居ないし、残りの3人は魔力が無くなったら終わりだからな。だから、クラウンがいてくれて助かったってことだ」
「…ああ、そういうこと。別に気にしなくていいのに。…もし、ぼくだけが海浜公園に移動してたら、みんなのことが心配でそっちの方がキツかったかも」
クラウンが笑みを浮かべながら答えると、バリー達もつられるように笑みをこぼす。内心嫌なのではないかと考えてはいたが、そんな事は杞憂だったようでバリー達は安堵する。
「よかった…。クラウンに申し訳ない気持ちでいっぱいだったからさ。まぁ、どうしようもないことなんだけど」
「気にしないで!こう言っちゃなんだけど、ちょっと楽しんでるのも事実だから」
クラウンのおどけたような表情にバリー達も心から笑う。そして、クラウンが先に見張りをしバリーとアックスは先に睡眠をとることにした。キツいと感じたら『警報』を解除しろとアックスに言われ、その時は必ず起こせとバリーに強く言われる。それにしっかりと頷き、周囲の警戒に入る。1人になった事で不安を覚えるがバリー達の安全を守らなければと自分を奮い立たせる。---そして、2時間後。クラウンにとっての最大の試練がやって来る。




