王立学園 -遠足前日 1-
週明けを迎え、学園生活に慣れ始めて来たクラウン達は遠足の日を楽しみにしながら、日々を過ごしていく。そして、遠足前日の木曜日、クラウン達の姿は食堂にあった。
「うー…。体を動かす授業早くこねぇかな…」
「あたしもー…。勉強は嫌いじゃないんだけど、一日中ずーっと勉強ってなると気が滅入るよね…」
来月から『実技訓練』としての授業が始まるが、それまではひたすら『知識』として勉学に励む事になっている。だが、『知識』が無ければ『実技訓練』をする価値もないし、学期末テストでは学んだ魔法が使えなければ点は取れない。
「まぁ明日は遠足だし、気分転換にはちょうどいいんじゃない?」
アックスが慰める様にバリー達に声をかける。納得はしていないが明日が楽しみにしているのも事実。なので気持ちを切り替えて食事をする。ちなみに今日の日替わりメニューは『牛丼』である。
「それにしても…この昼飯はフォークじゃ喰い辛いな」
「…そうね。ポロポロと溢れるわ」
バリー達は昼食に悪戦苦闘しながら、各自食べ終わっていく。ミリィが食べ終わったのを確認してから外の休憩所に向かう。
「あー…。お腹いっぱいで寝転ぶと気持ちいいね…」
幸せな顔でクラウンは芝生へと転がる。バリーとアックスもクラウンの真似をする。
「だな…。このまま寝落ちしそうだ…」
「ポカポカしてて本当に気持ちいい…」
クラウン達の幸せそうな顔を見ながらミリィ達も芝生へ座る。
「ふふ、クラウンったら間抜けな顔してるー!」
クラウンの近くに座っているミリィがクラウンの顔を覗き込む。その顔は幸せそうだ。
「でもその気持ち分かるわ。誰も居なかったら私も横になりたいもの」
「一応女の子だもんねー…。あたしも横になりたいなぁー」
ミリィ達は横になるクラウン達を羨ましく見つめるが、流石に横になる行為はしなかった。春の陽気に包まれ会話も減っていき、うつらうつらと夢の世界へと旅立とうとした時邪魔者が現れる。
「あららららーらら?これは公爵家の方々では無いですか!ご機嫌麗しゅう!」
バリー達はその声に薄眼を開け、存在を確認した後再び瞼を閉じる。クラウンだけが目を見開き、警戒態勢をとる。
「気持ちいい天気ですね!皆様が昼寝する気持ちはすごくわかります!」
ロッゾがバリー達に話しかけるが、反応が返ってこない。その空気に耐えれなくなったのか、クラウンへと口撃する。
「……チッ。こっちを見るんじゃねーよ『金魚の糞』。お前の顔を見るだけで吐き気を催す。……そういえばお前、『実力検査』でA+だったらしいな?…いくら払って高評価をもらったんだ?それともお兄ちゃまに泣きついたのかい?ぶふふっ、『金魚の糞』の名に恥じない無様な光景だっただろうな」
ロッゾが自分より高評価を貰った事を素直に認めるはずがない。なんらかの手段を取って貰った事に間違いないと自分の中で決めつけていた。クラウンはロッゾの言葉に驚いた表情をしていた。まさに『寝耳に水』とはこの事だ。
「…ええ?普通に『実力』で評価をもらっただけだよ?」
この一言に怒りを露わにするロッゾ。美形の顔が酷く歪む。
「はああああ!?お前が?『落ちこぼれ』のお前が俺よりも高評価をもらえるはずがないだろう!金で評価を買ったんだろう!お前の親父ならそんくらいはするだろうな!なんてったって、お前は『落ちこぼれ』なんだからな!」
「…なんでそんなに怒ってるの?ぼく本当に何かした?」
本気で不思議な顔をしているクラウンにアックスが近寄ってきて耳元で囁く。
「…あのナメクジはクラウンよりも低評価をもらったから、それで怒ってるんだよ」
クラウンが納得した表情になり、そのままロッゾへと目を向ける。
「あー…、ロッゾ、怒ってる理由分かったよ。……ぼくのほうが評価が高くてごめんなさい」
クラウンが心底申し訳なさそうに謝るが、その謝罪の内容に耳を澄ませていたバリー達が吹き出す。ロッゾに至っては顔を赤く染め、今にも噴き出しそうだ。
「------ッ!!クソッ!うるさい、うるさい!俺は絶対に認めないからな!」
ロッゾが捨て台詞を吐きその場から立ち去る。その後姿を見ながら自分は何かしたのかと考えるクラウンであった。




