王立学園 -魔法部 4-
「ふぅー………。ぼくの家は代々『尋問』を生業としていてね。受け継がれる技や習う魔法は全て『尋問』の時に使うようになってるんだ。それこそ、初歩魔法などは完全に別物になっているよ。『尋問』って言ったけれど、バリーやアックスなら言葉の裏の意味…わかるだろ?」
そこにはおどおどしたいつものペイトンの姿はなく、まるで別人のような存在がいた。
「…なるほど。…という事は君は『リッパー家』後継者なのかい?」
「ご名答。さすがアックス。そう、僕は『リッパー家』の次期当主さ」
『リッパー家』とは王国の裏の部分に属する子爵であり、子爵という爵位を貰ってはいるが実際は侯爵程の力を持っている。また、代々当主のみに受け継がれる技はとても奇妙なものであり、残酷なものである。
「…なるほどなぁ。『リッパー家』ってことならあの魔法も理解できるわ。…んで?お前が本性なのか?」
「違うよバリー。僕はもう1人のぼくさ。…どちらも『僕』であり『ぼく』なんだよ」
「ややこしい話は嫌いだぜ…」
やれやれと首を振りながらバリーが呟く。そして、真面目な表情を浮かべ、ペイトンを真正面から睨む。
「……公爵家次期当主として聞く。クラウンを気絶させた理由は?」
「現当主より、『公爵家のみ』に素性を明かすよう命令されましたので。クラウンには申し訳ないが気絶してもらいました」
「なるほど…。公爵家のみならば仕方ないか…。ヘレナ達にも挨拶しにいくのか?」
「ヘレーナ様には近日中にでも。ミリィ様は…クラウンと仲が良いそうなので成人してからだと思います」
「それがいいな。…まだ聞いてもいいか?」
「答えられる範囲でならば」
「クラウンにはお前のことをいずれ話すのか?」
「その時があったら…でしょうか」
「わかった…。俺からはもうない。…アックスはあるか?」
「うーん、特に今は無いかな」
ペイトンから重大な話を聞かされたバリー達だが、公爵家として暗部の部分も知っておかなければならない。その事を重々承知しているバリー達は動揺を隠しつつも素直に受け止める。そして、話が終わったペイトンがバリー達に告げる。
「では僕は眠りにつかせて頂きます。ご用がある場合はぼくに向かって『ペイン』とお呼びください」
そういって『ペイン』は目を瞑る。そして、再び目を開けると『ペイトン』が話し始める。
「…は、話は終わった?」
いつものおどおどしたペイトンが戻ってきた事に安心したバリー達は軽く頷き合い、大きな問題について考える。
「ああ。あいつとの話は終わったよ。…大丈夫。ペイトンのことは嫌いになったりはしてないよ」
「世の中は意外と狭かったってことだし、そんな理由で友だち辞めるとか失礼すぎるだろ。…それよりも」
バリー達の言葉に安堵したペイトンだったが、バリーの言葉の続きを不安そうに待つ。
「あいつが気絶させたクラウンになんて説明するかだ…」
バリーの視線の先には眠るように気絶しているクラウンの姿があった。
「…ぼ、ぼくがしちゃったのかな?」
「いいや、あいつだよ。…とりあえず、クラウンを起こしてから状況を説明したいんだけど僕に任せてくれるかい?」
「異議なし。つーか、お前にしか任せられねぇ」
全員の同意を確認し、アックスが治癒魔法をクラウンにかけて意識を回復させる。少し時間を置き、目を覚ましたクラウンにアックスが尋ねる。
「クラウン大丈夫かい?いきなり倒れたんだけど、何かあったのかい?」
迫真の演技力でアックスはクラウンから情報を引き出そうとする。
「…うーん…。ペイトンを追いかけてるのは覚えてるんだけど…そこからの記憶が…」
バリーとペイトンはここから先の行く末を見守っている。バリーがふとアックスが浮かべている表情に気がつくと苦笑を洩らす。…そこからのアックスは凄かった。まるで小説家のような一大スペクタクルの物語を作り出し、--しかも辻褄が合う様に--クラウンを納得させる。大袈裟な物語であったが、意識が混濁しているクラウンはその話を素直に受け止め、納得するのであった。




