王立学園 -魔法部 2-
「お待たせ!バッチリ聞いてきたよ!」
純粋な笑顔を浮かべながらアックスがクラウン達の元へ戻ってきた。
「えっとね…魔法の訓練は2人1組でするんだってさ!1人が案山子の前に立って魔法の訓練。もう1人がその後ろにある魔法道具に魔力を込める。そしたら、案山子が復元されて再度使用できるんだって!時間は20分ずつ。ちゃんと順番守ってねって!」
普段のアックスとはかけ離れた口調でクラウン達に説明する。歳相応と言うべきか、興味を持っている物に対しては誰でも童心に戻るということだろう。そんなアックスに驚きながらもクラウンが提案する。
「それじゃ、2人1組ってことだけど…。どう別れようか?」
「あー…。俺はアックスと組むわ。このテンションだと周りに迷惑かけそうだし、止めれるのは俺だけだろうしな」
「…そうだね。そうした方が良いかも…。それじゃ、ペイトンはぼくとペアだね!」
「う、うん!…でもぼくも少し興奮してるから…」
「その時はぼくが殴ってでも止めてあげるよ。まぁ、出来れば自重してね?」
「も、もちろんだよ…」
クラウンとバリーは少しだけお互いのパートナーの事を心配するのだが、目を爛々と輝かせている2人を前にすると何も言えなかった。そのまま、アックス達の順番がやってくる。
「ねえねえ、バリー!僕から先にやっても良いかい?てかやらせて?」
「どーぞどーぞ」
「ありがと!よぉし、やるぞー!バリー!準備出来た?いくよ?やっちゃうよ?」
「はいはい、準備出来てるよ。気の済むまでやってくれや」
「よーし!それじゃいくよ!!--『種子爆弾・木』」
アックスが腕を案山子へと向ける。すると手のひらから小粒の種が沢山出現し、案山子目掛けて飛んでいく。そして---
「うっっっっひょおおおおお!きんもちいいいい!!」
アックスの放った魔法は案山子に着弾すると同時に轟音をたてる。それが連続して案山子のあった場所に向かうので、轟音が鳴り止むまでは少し時間が掛かった。クラウン達はアックスの放った魔法により、轟音と爆風に襲われ顔を顰めるが、当の本人は酷く興奮し奇人の域まで達していた。
「…ク、クラウン。ア、アックスってあんな性格なの?」
「……ぼくも初めて見たよ…。バリー、君は?」
「…こいつ攻撃魔法を使うと性格変わるんだよ…。けど、ここまで酷いとは…。ストレスでも抱えてたんかな?」
クラウンの質問に答えながら、バリーは次々に魔力を消費し案山子を復元させていく。それをアックスは心から喜び、魔法を連射していく。
「アハハハハ!死ね死ねぇー!--『種子爆弾・木』、『種子爆弾・木』」
残忍な笑顔を浮かべながらアックスは魔法を連射する。それに合わせるようにバリーも次々と案山子を復元させていく。そろそろ20分経とうとしていた時、アックスが最後の魔法と爆弾発言をする。
「アハハハハ!兄さんを侮辱する奴は全員死ねッ!--『悪魔樹の種』」
その魔法は先程よりも小さく黒い魔法であった。それがゆっくりと案山子へと着弾する。すると、いくつもの絶叫が重なったような音ともに案山子の手の部分からドロドロと溶けていった。その光景に満足したのか、アックスが自然な笑顔を浮かべクラウン達の元に戻ってくる。
「いやぁ!スッキリした!…ん?どうしたんだい?変な顔して?」
「…いや、なんていうか…。正直ドン引きっていうか…」
「…ぼくは何も見てない。聞いてないよ」
「…ア、アックス。…と、とっても凄かった…よ?」
クラウン達はアックスの豹変ぶりを見てしまい、言葉を失っていた。特に、最後の言葉に心当たりがあるクラウンとバリーはかける言葉も見つからないのであった。




