王立学園 -魔法部 1-
時は流れ、週末の土曜日。クラウン達は昼食を済ませ、学園の魔方陣がある小屋の前にいる。3人で仲良く話をしていると、待ち人が手を挙げながら小屋から出てくる。
「やぁやぁ、お待たせ。昼食に時間がかかってしまってね。いやぁ、申し訳ない」
アックスはヘラヘラと形だけの謝罪をする。バリー達もそこまでは待っていないので、気にすることなく目的地へと移動する。
「んじゃー、『魔法部』に行くとするか!道案内よろしく頼むぜペイトン」
「う、うん!ま、任せてよ!」
ペイトンが『魔法部』への道中、魔法部について色々と話をする。寮でクラウン達と共に行動しているので、若干ではあるがよく話すようになってきたが、まだアックスとは距離があるように見える。しかし、アックスはそんな事は気にせずにどんどんペイトンへ話しかけ、少しずつ距離が縮まっていった。
「へぇー。ペイトンは魔法が好きなんだねぇ」
「ぼ、ぼくはバリーやクラウンみたいに、ち、力が無いから魔法を頑張っているんだ」
「僕もこの2人みたいには無いから、魔法の方を頑張っているよ」
先程からペイトンとアックスは2人で話を続けている。だが、クラウン達は気にせずに違う話題で盛り上がっている。
「だからよぉ、『壱文字』っていう剣技があるんだけどよ、これは多人数戦とかで中々使える技なんだよ。クラウン知ってるか?」
「え!そんなのあるの?全然知らないし、聞いたことない!バリーはその技使えるの?」
「当たり前だぜ!俺ら『火の公爵家』の秘伝だからな!」
「すごーい!今度見せてよ!」
「ハッハッハ!いいぜいいぜ!見せてやるよ!けど、秘伝だから教える事は出来ねーぞ!」
魔法好きと剣術好きで綺麗に別れて歩くクラウン達。だが、互いに気になる事があると質問し合い、着実に仲を深めながら『魔法部』へと向かうのであった。
『魔法部』の訓練場に着いたクラウン達。『武術部』とは反対の位置に存在していた。まるで、『脳筋お断り』と言わんばかりに。
「ここが『魔法部』なのかぁ…。なんだかドキドキするね!」
「う、うん…。ぼ、ぼくも入るのは初めてだから、緊張しちゃって…」
「は?ペイトン来たことあるんじゃねーのか?」
「ひ、1人じゃ怖くて来たことはないよ…。だ、誰かと一緒に来ようと思ってて…」
「なら丁度良かったね!僕たちも興味あったし、ペイトンとも仲良くなれたし!」
アックスにそう言われ、少しだけ照れた表情を浮かべるペイトン。それを見て優しく微笑むクラウンだったが、目的を思い出す。
「よし、それじゃあ中に入ろうよ!来て終わりってことじゃなかったでしょ?」
「そうだぜー!ってことで俺は先に入るからなー!」
バリーが先に行くのを見たクラウン達は慌てて後を追いかける。先に着いたバリーが扉を開けると、中から爆音が聞こえてきた。どうやら中で魔法の練習をしているようだ。爆音に驚いたクラウンとペイトンは耳を抑えながら、バリー達と共に中へと入って行く。
「…いやぁ!凄いねぇ!ガンガン魔法の訓練をしているよ!」
興奮を隠しきれないアックスが、クラウン達へ話しかける。
「うん!これは凄い!……うわ!見てあそこ!案山子が燃えてる!」
「うひょー!すげぇな!俺も魔法の訓練したくなってくるぜ!」
「…………す、凄い!」
興奮しているのはアックスばかりではなく、クラウン達も興奮していた。上級生であろう生徒が使う魔法に4人は目を奪われていた。15分程、周囲の訓練風景を見続けようやくクラウン達は行動を開始する。
「どうやら順番に魔法の訓練を行うみたいだね。あとは案山子をどうやって立てるかなんだけど…よし、聞いてくる!」
アックスが近くの生徒に使用方法などを聞いている。その間、クラウン達は奥の訓練場の順番待ちをする事にした。




