王立学園 -日常 2-
ジゼルが保健室へと運ばれ、1人欠けた状態で午前中を終える。昼食前にはジゼルが戻ってきており、スファレと共に食堂へと向かっていった。その後ろ姿を見送りながら、クラウン達も食堂へと足を運ぶのであった。
食堂に着き、本日の日替わりメニュー『ハヤシライス』を頼み、先に確保していた席へと戻る。食べ始めようとした時遠くから聞き慣れた声が聞こえる。
「あー!クラウンたちみーっけ!隣空いてるー?」
お盆にハヤシライスを乗せ、ミリィとヘレーナがクラウン達の場所へと向かう。いつものメンバーが揃い、仲良く昼食をとる。もちろん、ミリィはクラウンの隣に座っている。
「次は『図書室』に移動だったよねー?みんなで一緒に行こーよ!」
ミリィの提案に反対する理由もない為、了承する。満足気な表情を浮かべ、ミリィは食べ始める。クラウン達は談笑しながら、昼食を終えた。
「あー!美味かった!…ところで『ハヤシライス』ってなんだ?初めて聞いたぞ?」
「知らないで食べてたの?…ポートセルム宗教国家のメニューで『カレー』みたいな食べ物のことだよ」
「へぇー。クラウンは物知りだなぁ!…けど、これも美味しかったけど『カレー』の方が美味いな!」
「君は食べものだったら何でもいいんでしょ?」
クラウン達の会話にミリィ達はクスクスと笑う。そのまま外に出て図書室へと向かおうとする。その時、狙い澄ましたかの様にロッゾと出会ってしまう。
「あらら?これはこれは公爵家の方々。こんな所で会うなんて奇遇ですねー?」
ロッゾは爽やかにバリー達へ挨拶する。もちろん、クラウンは視界にも入れずに。
「私たちはこれから『実力検査』の授業になるんです。皆様方は評価はなんだったのでしょうか?…ああ、聞くまでもないですね。もちろんS評価だったのでしょう」
ロッゾは軽快にバリー達に話しかけるが、バリー達は汚い物を見てしまったかの様な表情でロッゾを見ている。その表情や空気に気付く事なく、ロッゾの一方的なお喋りは続く。
「S評価…そこにいる『金魚の糞』には手の届かない評価なんでしょうね。もちろん、私もSはもらえないとは思いますが、それに近い評価は貰えると自負しております」
ミリィがロッゾの放った言葉に、ピクリと反応するがアックスが目配せで止める。ミリィはアックスが黒い笑みを浮かべているのを見て、怒りを抑える。
「それでですが、私がS評価やそれに近い評価をもらった時はそこにいる『金魚の糞』はどこかに捨てて、一緒に行動しませんか?落ちこぼれの『金魚の糞』よりも私の方が強いですよ!それに課外授業などで臨時のパーティを組む場合もありますし、仲を深めておくのは大事だと思うのですよ」
ロッゾは自信満々な表情でお喋りを終える。公爵家達と常に行動しているクラウンはロッゾの知る限り落ちこぼれであり、そんな奴よりも自分の方が良いと売り込んでいるのだ。ただ、幼少期のクラウンならいざ知らず、『今』のクラウンは真っ当な評価を受けている。それを知るのは、クラウンのクラスメイト達だけである。
「…ねぇ、アックス。ナメクジがなんか言ってる」
「そうだねミリィ。このナメクジはクラウンよりも強いと思ってるみたいだ」
「へぇー。ナメクジみたいな奴だと思ってたが、脳味噌までナメクジだったか」
「みなさん、口が悪いですわよ。ナメクジに失礼ですわ」
バリー達がロッゾの事をどう評価しているのか分かる口調で喋る。クラウンは前回の事を思い出し、バリー達を止まるべく身構えている。だが、そんな心配は杞憂であった。
「えーっと…ナメクジ君?だっけ。君はクラウンより強い自信があるようだけど、何を根拠にそう言っているのかな?」
自然にロッゾの事を馬鹿にしながら、アックスが尋ねる。馬鹿にされている事に気付かないロッゾは笑いながら答える。
「あはははっ。公爵家ともあろう方々が『金魚の糞』の実力を知らないとでも?コイツは幼少期、魔法が具現化するのが遅かったんですよ?それで慌てて家庭教師を雇ったみたいですが、その家庭教師も次々に替えていったんですよ?」




