王立学園 -日常 1-
月曜日は、ジゼルが全部の宿題を忘れるという大挙を成し遂げた以外は何事もなく過ぎ去って行った。宿題が尋常ではない量になってしまったジゼルが顔面蒼白になりながら教室へと入ってくる。周囲の目は生暖かい。クラウン達も周囲と同じ目をしていたが昨日と同じ目に合わせたくないのか、バリーが声をかける。
「おう、ジゼル!元気そう…では無いわな。今日は忘れずに持ってきたか?」
「や、やぁ…。元気では無いよ…。登校前にちゃんと確認したし、今日は忘れてないよ」
夜遅くまで起きていたのだろう。ジゼルの目の下には、大きなクマが出来ている。ふらふらとおぼつかない足取りでジゼルは自分の席へと向かっていく。
「おいおい…本当に大丈夫かぁ?」
「授業中…もしくは今からでも倒れそうだよね…。あの状態じゃ、他の忘れ物をしてそうだよね…」
バリーとアックスが心配するように呟き、クラウンも同意する様に頷く。すると、後ろの方から声が聞こえてきた。
「大丈夫だよー。ボクがちゃんと手伝ったからー」
「スファレが?…ああ、そういやお前ら同じ寮だったよな?」
クラウン達に声をかけてきたのはスファレ。水の子爵家で、A判定を貰った4人の内の1人だ。ジゼルとは昔から仲が良く、クラスも寮も一緒という事で毎日共に行動している。
「そうだよー。昨日も宿題手伝ったし、朝の支度もボクがしたからねー。忘れ物は無いはずだよー」
「君が手伝ったなら大丈夫そうだね。ちなみに昨日は何時まで宿題してたの?」
「深夜2時までだよー。夜はちゃんと寝ないといけないからねー。夜ご飯食べた後すぐ取り掛かってたよー」
「んん?意外と寝れてると思うんだが…。ならなんであんなにフラフラなんだ?」
「ああー。それはねー、『脳力強化』何回か連続でかけたからだよー」
「…それが原因だね」
『脳力強化』の魔法は思考力を向上させる魔法である。ただし、連続で使用したりすると、反動で倦怠感や体調不良になってしまう。なので一定の時間を設けてからかけるのが基本である。なので、ジゼルの状態の原因はそれだとアックスは理解した。
「スファレ…。連続でかけたらマズイよ…」
「んー。わかってるんだけどねー。ジゼルがずーっと終わらない終わらないってうるさかったからねー。終わらせてあげようと思ってねー」
クラウン達はスファレの言葉を聞いて、確信犯だと認識する。クラウンはアックスと同等の性格の持ち主だと察し、怒らせてはいけないと心に刻む。スファレの性格を垣間見た時に、ドランが入室してくる。スファレも席へと戻り、全員が着席したのを確認してからドランが口を開く。
「あー、おはよう。今日も一日頑張ろう。それで、連絡事項なんだが、今日の午後の授業は図書室で行う。教室では無いので、遅れることのないように。それと…ジゼル。今日は忘れ物大丈夫か?」
「ふ、ふぁい。大丈夫りぇす」
「……違う意味で大丈夫か?なんか今にもトリップしそうだな」
ジゼルは口を半開きにし、呂律も回っていない。それを見たドランも流石に心配し、保健室に行かせるか迷う。
「先生ー。宿題はボクも手伝ったから大丈夫ー。それと、ヤバくなったら保健室連れて行きますー」
「ヤバくなる前に連れて行って欲しいんだが…。まぁ、その時はよろしく頼む」
ジゼルの件はスファレに任せればいいやと、ドランは割り切る。そして、いつもの通りSHRを終わらせる。朝の1限目、ドランが前日と同じように宿題を集める。今日はしっかりと提出出来たからか、安堵の表情を浮かべたジゼルがそのまま夢の世界へと旅立って行った。それを苦笑しながら、スファレに保健室へと連れて行くように指示し、1限目を始めるのであった。




