遅れる朗報 -神々の悪戯 2-
「いやいや、これは買ってきたものではないぞ。これはな、クラウンに渡してくれと頼まれた物なんだよ」
「本当ですか?父様はそういう小さい嘘をよくつきますからね。怪しいものです」
「いや、そんな嘘つき呼ばわりをするなよ…一応これでも伯爵なんだぞ?まぁ…そう言っても信じてはもらえないだろうな」
「まぁまぁ、ジルもそんな親父殿をおちょくるのはやめてプレゼントの中身を見せて貰おうぜ」
「おちょくるとか…まぁよい。さて、クラウン。まずは領民たちより手紙付きのキーホルダーだ」
不満げな顔をしながら、クージルは背負っていた袋から目的の物を取り出す。領民たちからの誕生日プレゼントは当たり前の世界だが、領主の子供宛の手紙を貰うという事は、クージルが行なっている行政は善政であり不満が少ないという事の証だ。キーホルダーとは言ったが、貴金属ではなくおそらく領民の子供たちが作ったのであろう、カバンに付けられる小さな人形であった。
「うわー、凄く嬉しいです。可愛いですねぇ。…あっ、父上の人形もありますよ」
「親父殿は意外としっかりしてるってことだな。後を継ぐって事は大変だな、ジル」
タチの悪い笑顔を浮かべ、ノームはジルに話しかける。
「他人事みたいに言わないでよ。ノーム兄が継がないとか言うから仕方なく僕が継ぐ事になったんじゃないか」
言葉だけを取ると、嫌々継いだように見えるが表情は明るい。ジルも後を継ぐ事に関しては満更でもないようだ。
「次はこの中で一番大きなプレゼントだ。クラウン、これは凄くビックリするぞ!」
クージルはクラウンに悪戯っ子のような顔を向けながら袋から取り出す。
「父上、一体これはなんでしょう?」
「これはな、フレア公爵から…」
「うおおおおおお。これは火属性専用の魔法武具じゃねーか!おいおい、しかも公爵家騎士団のだとぉ!?」
「ちょっと、少し落ち着いてよノーム兄。…でも本当に凄いね。公爵家の家紋は付いてないけど、フレイムガードじゃないか!」
興奮した面持ちで2人の兄達はフレイムガードを見つめている。ジルは興味津々、ノームに至っては我が物の様に手に持っている。
「おいおい、2人とも。これはフレア公爵からクラウンにってプレゼントして貰ったものだぞ。特にノーム!お前が貰ったような顔をするな」
やれやれと首を振りながら、フレイムガードをノームから取り上げる。名残惜しそうにフレイムガードを見ていたノームだが、ふと疑問に思ったことを口にした。
「なぁ、親父殿。フレイムガードはフレア公爵騎士団専用の魔法武具ではなかったか?それをなぜ伯爵家の三男坊にプレゼントしてくれたんだ?」
「確かにノーム兄の言う通りだ。まぁ、領主の子どもに公爵家がプレゼントとは違和感が無いけど、品物が違和感バリバリだよね」
「……うむ、それについては大きな声で言えないんだが…。2人とも少しこっちに来い…」
神妙な顔つきで、クージルは2人の兄達を小声で呼び付ける。何が起きているかさっぱり理解出来てないクラウンは、公爵家専用の魔法武具を貰ったことに感動していた。もしかしたら間違いなのではないかと思い、触る事は出来なかったが、まじまじと見つめて自分が装備しているところを想像し、興奮していた。
それから、数分後。父の内緒話が終わったのであろう。2人の兄たちは元の位置に戻ってきた。1人は肩を怒らせ、もう1人は無表情となっていた。
何が起きたか分からないが、何の話だったのかをクラウンが聞こうと思った時、クージルが袋からそっとある魔法道具を取り出した。