王立学園 -休日 3-
合図と共に両者踏み出す。だが、クラウンの方が先にバリーへと近づく。合図と共に踏み出してはいたが、バリーは自分の間合いで迎撃した方がいいと考えていた為フェイントを入れただけだ。クラウンが間合いに入った瞬間、大振りの一撃を狙う。それを冷静に分析するクラウン。
(剣が少し動いた…。一撃狙い?けど避ける事も想定してる…。ならば…)
クラウンが後ろへと逃げるように退くとバリーの目に驚愕が浮かぶ。だがそれは一瞬の事で、再び構えを取る。
(おいおい…。先読みし過ぎだろ…。どんだけ差があるんだよ…)
バリーはクラウンを見ながら冷や汗をかく。バリーはクラウンが横や上に逃げた場合の対処も考えてはいた。しかし、一瞬で見破られてしまった。バリーはクラウンの強さを充分承知していたが、それでも自分との差がここまであるとは考えてもいなかった。そう思うと木刀を握る力を抜き、肩へと置く。
「くぁーっ!読まれちまったか!…なんでわかったんだ?」
バリーは素直にクラウンへ問いかける。それは『手合わせ』の意味を知っているバリーだからこそ出来る事であった。
「…あー、バリーの木刀が少し動いたのが見えてさ…。バリーは強いってことはアックスから聞いてるし、そんなあからさまな攻撃はしないと思ったからね」
「でもよー、避けるってことも出来ただろ?なんでしなかったんだ?」
「それも含めてだよ。一手二手も先を読むのはバリーも一緒でしょ?横に避けたら、薙ぎ払いとか狙ってるだろうなって思って」
「…すげーな。正解だよ!お前やっぱり強いな!…よし!手合わせ終わり!」
バリーはクラウンの考えに脱帽する。クラウンの強さを充分に理解したバリーは、素直に賞賛し手合わせを終わろうとする。
「え?もう?まだ全然…というより、始まってもいないよ?」
「いや!俺は充分満足した!手合わせはもうちょい俺が強くなってからだな!それまではクラウンに教えてもらった方がいい気がしてな」
クラウン達の話を聞いてたペイトンが不思議そうに会話へと入ってくる。
「ほ、本当にもう終わるの?…ぼ、ぼくには全然わかんないけど…」
「ああ!もう終わりだ。それよりもだな…。ペイトン、お前もクラウンに稽古つけてもらわねーか?俺はつけてもらうけど」
クラウンの了承も得ぬまま、バリーは話を進めていく。それに慌てたようにクラウンが口を挟む。
「ちょ、ちょっと待って!ぼく、人様に教えられるような技術持ってないよ?」
「はぁ?何が持ってないだ!そんな嘘には騙されねーぞ!」
「いや嘘なんかじゃないってば!」
「うるせーうるせー!俺は稽古つけてもらうって決めたんだ!お前に拒否権は無いからな!」
「ぼくは許可なんかしてないじゃないかぁ……」
バリーの半ば強制的な意見に、クラウンは悲壮感を漂わせる。ペイトンは2人の間を心配そうな目で行き来している。結局、頑として譲らないバリーに根負けし、稽古を付ける事を約束させられたクラウンであった。
「よーし、クラウンに約束してもらったし今日はなんか満足したわ!寮に帰ろうぜー!」
身体を動かしたいからとクラウン達を無理矢理外へ連れ出し、全然動いてもいないのに帰ろうと言い出すバリー。自由奔放な性格に少しだけ怒りを覚えるが、帰る事には文句はない為了承する。明日も来ようぜという提案には力強く否定し、寮へと戻る。クラウンに強く言われてしまったバリーは拗ねた表情となるが、寮に着いた時、鉈を振り回しながら激昂しているエリスに捕まり説教を受けてしまう。それを横目に見ながら、いい気味だと思いながらクラウンは自室へと戻るのであった。




