王立学園 -休日 2-
ペイトンが言うように、バリーはクラウン達よりも筋肉質な身体をしていた。例えるなら、軽量級のボクサーといった感じである。
「へへっ。頭を使うよりも身体を動かした方が好きだからな。入学前はずっと剣ばっかり振ってたぜ!」
バリーは嬉しそうに話す。クラウンはバリーの腕と自分の腕を見比べながらペイトンに話しかける。
「本当にすごいね…。ぼくの腕とは全然違うよ」
「う、うん。ぼ、ぼくの腕とも全然違うね…。格好いいなぁ…。ぼ、ぼくも鍛えたらあれぐらいになるかな?」
「どうだろう…?でも、毎日続けたらなれると思うよ!」
クラウン達はバリーの体格を見て口々に尊敬の念を洩らす。それを聞いているバリーは少し恥ずかしがりながら話題を変えようとする。
「あんま見つめないでくれよ。なんだか照れちまうよ……。それよりも!早く手合わせしようぜ!」
そう言うと、バリーは『小規模空間』から木刀を3本取り出す。それをクラウン達に投げ渡すと手招きする。
「よし!じゃあ、軽く手合わせと行こうぜ!まずはクラウンからだ!」
「ええ!?無理無理無理!ぼくなんかじゃ相手にならないよ!」
「はぁ?お前すげー強いじゃんか!あの時見てたぞ!」
「そ、それは怒りで我を忘れてる時だったから…。記憶にも無いし…」
「あ、あの時?な、なんかあったの?」
クラウン達が口論していると、不思議そうにペイトンが口を挟む。バリーはペイトンの表情を見て説明をする。
「あー、ペイトンは知らねーよな。コイツな、実力検査の時、騎士団の第6団長…クラウンの兄貴と本気で戦ってたんだよ!」
「え、えええ!?そ、それでど、どうなったの?」
「ヤバくなる前に止めたんだけどよ…。あのままやってたらクラウンは勝ってただろーよ!」
「す、凄い…!ク、クラウンって強かったんだね…」
「だから、その時は怒ってたからだってば…。普通にやったら勝てないって。Sも貰えてなかったと思うし…」
「え、え、S?ク、クラウン。き、君はS評価をも、貰ったのかい?」
ペイトンは目を大きく見開き、驚愕の声を上げる。騎士団の団長からS評価をもらうのも凄いが、勝てそうだったという事の方が凄い。ただ、衝撃的過ぎて脳みそが正常に働かなかった為、気付く事は無かった。
「そうだぜ!俺らのクラスで唯一のSだ!ってかよー、無意識の状態であれだけ出来るならちゃんと教えてもらってるってことだろ?」
「うっ………。それは…。否定しないけど…」
「本気でやろうって訳じゃ無いんだし、まぁいいじゃねーか!」
「ぼ、ぼくも見てみたい」
バリーの言葉には筋が通っている為、クラウンは強く否定する事が出来なかった。バリーの話を聞いたペイトンも、クラウンの実力に興味を持ち始めたので仕方なく手合わせをする事にした。
「はぁ…。じゃあ、やろうか。…でも!絶対に本気にならないでね!」
「わーってるよ!軽くだからな!」
クラウンは渋々、バリーの方へと歩いていく。それに付き添うようにペイトンも続く。両者が立ち向かった所で、ペイトンは邪魔にならない所へと移動し観戦する。
「よーし!楽しみだぜ!…あっ、身体強化は無しな!場所も狭いし怪我しそうだしな。それじゃ、ペイトン!開始の合図よろしく!」
そう言うと、バリーはクラウンから少し離れて間隔を作る。クラウンとの間を5mぐらい取った所で両者が構えを取る。クラウンは片手に木刀を持ち、膝を軽く曲げている。それに対しバリーは、木刀を両手で握り剣先を斜め下へと向けている。準備が出来たのを確認し、ペイトンは開始の合図を発する。
「じ、準備はいいかい?…よ、よーい。………始めっ!」




