王立学園 -演習 3-
クラウンが小さな声でボソリと言うと、バリー達は目配せをする。そして、ミリィが笑いを堪えられなくなり、ゲラゲラと笑い始める。バリー達も我慢出来なかったのか、腹を抑えながら笑い出す。
「ぎゃははははっ。勘弁してくれよクラウンっ!ヒーッ、ヒーッ、腹がよじれそう…ブフフーッ」
「…ク、クラウンのし、思春期が暴れているね。ププププッ」
「皆さん!笑うなんて失礼ですよ!私は良いと…ブフーッ。…ダメだ。我慢出来ないわ!アハハハハッ」
「ヒーッ、ヒーッ。お、お腹がぐるじい…。あんた真面目な顔して、そ、そんなこと考えてたの?ブブッ…ヒーッ、お腹いだいよ…アハハハハッ」
「真面目な顔でとかは余計なお世話だよ!真剣に考えたんだよ!?…カッコいいと思ったんだけどなぁ…」
「ぎゃははははッ!やっぱりクラウンはセンスあるわ!ブフーッ…わ、笑いのだけどな?名前のセンスはねーわ!」
「……お、おながいだいっ。クラウンのし、思春期が暴れてる…ブフーッ!」
「もう!いい加減にしてよ!怒るよ!」
「だって……。あんたがあれを真面目に考えてたって想像しただけで、ブフッ!あー、おっかしい!アハハハハッ!」
「…ふう。もう落ち着きましたわ。もう大丈夫。…そろそろ皆さんも笑うのをやめましょう」
ヘレーナが落ち着いた様にバリー達へと声をかける。だが、笑い声はやまない。ふと、クラウンは悪戯心が湧きヘレーナに話しかける。
「…さすがヘレーナ!『漆黒の翼』のパーティだけはあるね!!」
半ばヤケクソ気味に話しかけたクラウンは、ヘレーナの反応を待つ。ヘレーナは表情こそ崩さないが、小刻みに肩が震えている。--もう一声かな?と、クラウンはヘレーナに追い打ちをかける。
「ぼくたちは『漆黒の翼』だからね!この名前を6年間も使い続けるんだよ!最高だね!」
クラウンの開き直った一言により、ヘレーナの感情は決壊する。そこには公爵家令嬢の面影が全く無かった。
「アヒャヒャヒャヒャ!…ヤダ!ろ、6年間もその名前をつ、つかいだぐない!ブフーッ!…はぁー。漆黒の翼って…。フヒュッ。ヒャヒャヒャヒャ!あー、腹痛い…。」
ヘレーナは笑い転げ、下品な笑い方をし、地面を叩いている。そこに先程までの凛とした姿は無い。ヘレーナの異常な笑い方にバリー達も冷静になりつつある。目の前で変人を見た時の反応は、どの世界でも共通であった。
「……もういいんじゃないかな?そろそろ本当に怒っちゃうよ?」
静かに、淡々と警告を発するクラウン。その一言にすぐ笑う事を止める。クラウンの怒った場面を思い出しての事だ。
「んんっ。よし、もう笑うのはやめようぜ」
「…ふう。大丈夫、もう笑い終わったよ」
「あー、面白かった。今までで1番笑った気がする」
バリー達は落ち着いたのだが、ヘレーナだけはまだ腹を抱え声を抑えながら笑っている。クラウンとしても、自分が茶目っ気を出して笑わせてしまったのでそのまま放置することに決めた。
「…もう!みんな酷いよ!そんな笑わなくてもいいじゃないか!」
「すまんすまん。クラウンから想像出来ない言葉が出てきたからよー」
「そうそう。予想外過ぎて驚いたというか」
「あたしは純粋に面白かったよ!」
3人の言葉にクラウンは二度と名付けなどは行わないと決めた。バリー達はクラウンに素直に謝罪し終わった頃、ヘレーナも落ち着きを取り戻してきた。冷静になったヘレーナは、自分の醜態をアックスにからかわれ、その原因となったクラウンへ突っかかる。クラウンも自分の茶目っ気の所為だと理解していたので、素直に謝罪しそれを不承不承ながらもヘレーナも頷き、名付け前の騒動は終わりを告げるのであった。




