王立学園 -前途多難 7-
「みんなごめんなさい…。少し自分を見失っていたわ…」
魔法の効果で落ち着きを取り戻したミリィがクラウン達に謝罪する。
「ううん。謝らないで?それよりも、ぼくのために怒ってくれてありがとう」
「そうだぜミリィ。おめーが怒らなきゃ俺がキレてたぜ」
「そうよミリィ。あの屑には私も怒っていたんだから!」
「ミリィが怒ってくれなきゃ、アイツは今頃ボコボコになっていたと思うよ」
クラウン達は思い思いの言葉を告げる。その言葉にクラウンは頬を緩めみんなにお礼を伝える。
「みんな…ぼくなんかのために怒ってくれてありがとう」
「ああん!?大事な『友達』のことを馬鹿にされたら頭にくるだろーが!」
「そうだよクラウン!大事な『友達』を馬鹿にする奴は調…教育してやらなくちゃ!」
「そんなに自分を卑下にしないで?まだ出会ったばかりだけど、クラウンは大事な『友達』ですわ」
---『友達』。クラウンはその言葉に泣きそうになる。歯に力を入れ、涙が零れるのを堪えるが少しだけ堪えることが出来なかった。クラウンの目から一雫の涙が垂れるのを見たミリィが、ハンカチを取り出し頬を拭く。
「もうっ!男の子なんだから泣かないの!クラウンの良いところは全部知ってるんだから。あんな奴のことは忘れなさい!」
「ロッゾとか言ったっけ?次アイツがなんかしてきたら俺に言え!」
「うんうん、僕にも言ってほしいな」
「私にも言ってちょうだいね?」
「みんな、本当にありがとう…。でも大丈夫!…昔からあんな感じだし相手なんかしてないから。それよりも、みんながロッゾを殴ったりして問題になる方が嫌だよ!」
「大丈夫。安心してクラウン。証拠なんかは残さないよ?」
「……そういうことは絶対にしないでね!」
「はぁ…。クラウンは優し過ぎるわ。…まぁ、そこがクラウンらしいけど」
「まぁな!だが、そこがクラウンの良いところであるんだけどな!……それはそうと、優し過ぎるのはミリィもなんじゃないか?」
「え?あたしが?なんで?」
「いや、だってよぉ…。クラウンに対して当たりが強かったじゃねーか。本気でクラウンのこと嫌いなんだなーって思ってたぜ」
「うんうん!僕も同じこと思ってた。あんなミリィ初めて見たからさ」
「ふふっ。でも嫌いでは無かったみたいね。あの時のミリィはいつものミリィだったわ」
「…ぼくも嫌われてると思っていたよ。…いや、本当に」
「は、はぁ!?あたしがクラウンを嫌い?なんでそうなるのよ!これっぽっちも嫌いになったことなんて無いわよ!」
「いや、だっておめぇ…。あれ??お前いつから名前呼びになったの?」
「え?なにが?名前呼び?」
「確かに…。前までクラウンのことコイツ呼ばわりだったよね?」
「そうだったかしら…?」
「き、気のせいじゃない!?あたしは前々からクラウンって呼んでたし!ね!クラウン!」
「う、うん。…うん??いや、コイツ呼ばわりされてたよ?」
「だよなー。様付けで呼べとかも言ってたよな?」
「あはははっ。そういえばそうだったね!いま思い返すと笑えるね」
「フフフフッ。ちょっと高飛車過ぎたかしらね?」
「-------っ!うるさいうるさーい!そんなことあたしは言ってないー!」
「いや言ってただろ!『立場をわきまえなさい!』とかな!あの時は頭に来たけど、今思い出すと…ブフーッ」
「もうあったまきた!!バリー、覚悟しなさい!指の1本ぐらいで許してあげるっ!」
「うわあああああああ!クラウン助けてくれ!さっきみたいにミリィを抱き抑えろ!マジな目をしてやがる!」
「う、うん!ミリィ、ちょっと落ち着---」
「…『さっきみたいに』?…え?クラウンに抱きつかれたの?」
「ああ、僕たちが動き出すより早かったよ?抱き抑えなきゃ酷いことなってたよ、きっと」
「………………」
「ミリィ?…変ね。黙っちゃったわ」
「……………へ」
「んん?どうしたのミリィ?顔赤いよ?」
「----この変態ィー!!」
「痛ッ゛!!」
ロッゾに放ったものよりも強く速いビンタがクラウンの頬に炸裂した。ビンタをお見舞いしたミリィは訓練場へと走り去り、バリー達は呆然と見送るのだった。




