王立学園 -前途多難 6-
昼食を終え、クラウン達はそのまま訓練場へと向かう。春の日差しを浴びながらの移動はクラウン達の眠気を誘う。
「ふぁーあ。…腹一杯になったら眠くなってきたなぁ」
「バリーは食べ過ぎだよ…。あの後もミリィのカレー食べてたし」
「お残しは許さないよって鉈婆も言ってただろー?」
「それはそうだけどさぁ…」
「確かにバリーは食べ過ぎね。『演習』で吐かないしてね?」
「吐きそうになったら一目散にヘレナの所に行ってやるよ」
「やだっ!そんなことしたら攻撃するわよ!」
「バリーったら汚ーい!」
「よし、ミリィに向けて吐いてやる!」
「ちょっと!それだけは本当に辞めて!吐くならアックスとかクラ…アイツにしなさいよ!」
「僕に向かって吐いたりしたら、大変なことになるよ?」
「………ぼくも吐かれるのは嫌だなぁ」
汚い話をしながら歩いていると、後ろから声がかかる。
「おんやぁ?目の前にいるのは『金魚の糞』じゃないかぁ?相変わらず、公爵家の方々に付きまとっているみたいだな!」
「………やぁ、ロッゾ」
「ふん、お前みたいな『金魚の糞』が、俺に気安く話しかけるんじゃねーよ!」
ロッゾと呼ばれた男は、嫌悪感丸出しでクラウンに口撃する。だが、バリー達を見ると表情を変え爽やかに話しかける。
「これはこれは公爵家の方々。ご機嫌いかがですか?『金魚の糞』に付きまとわれてさぞ大変でしょう。よろしければ一緒に訓練場へと向かいませんか?……ああ、『金魚の糞』は邪魔だからどこか行かせましょうか?」
「…なんだぁ?このムカつく奴は?」
「……いやぁ、久々に調教が必要な奴だね」
「……なんでしょう?私、この人のこと殴りたくなってきたわ」
「………………『金魚の糞』?それ誰の事言ってるの?」
ロッゾの暴言にバリー達は怒りを露わにする。それに気付かないのか、ロッゾは更に暴言を口にする。
「公爵家の方々とあろうものが、『金魚の糞』がわからないだなんて!コイツのことですよ、コイツ」
ロッゾはクラウンを汚い物を見るような目でクラウンを指差す。
「コイツのせいで、あなた方の『品格』が下がってしまうんですよ。残念なことに。……おい、邪魔なんだよ。さっさとどこかに消えろ!」
ロッゾの最後の一言にバリーが激怒し、殴りかかろうとする。だが、それよりも早く動き出す人物がいた。
バチーーーーーーーーンッ
鈍い音を立て、ロッゾは地面へと倒れる。頬を抑え見上げると、そこには顔を真っ赤にし怒りで震えているミリィの姿があった。
「………あんた!いい加減にしなさいよ!?クラウンに謝りなさい!口で言っていいことと悪いことがあるのよ!?アンタのその汚い口からは汚い言葉しか出ないじゃないの!なんの権利があってクラウンにそんなこと言えるのよ!………あったまきた!!歯ァ、食いしばれ!その性根叩き直してやるっ!!」
ミリィの豹変に唖然としていたバリー達であったが、殴りかかろうとするミリィを止めるべく動き出そうとする。だが、バリー達よりも早く動いた人物がいた。
「ミリィ!落ち着いて!それ以上したら、問題になるよ!」
クラウンがミリィに抱きつき落ち着かせる。だが、ミリィは止まらない。
「離しなさい!あの屑は貴方のことをバカにしたのよ!許せないわ!こうなったら、骨の1本や2本でも……」
「わああああ!ミリィそれはダメだ!ダメだってば!…バリー、抑えつけるの手伝って!」
「お、おう!…ミリィ!落ち着け!」
「離してっ!痛い目合わせなきゃ気が済まないわっ!」
「おいアックス!どうにかしてくれ!」
「ヘレナ!ミリィに状態緩和かけて!」
「ええ!もちろんよ!…ミリィ、動かないで!ーー『状態緩和・風』」
ヘレーナの魔法がミリィにかかる。すると、段々とではあるがミリィは落ち着きを取り戻していった。それを見たアックスは地面に倒れているロッゾに近づく。
「…えーっと、ロッゾとか言ったね。悪いけど、君とは一緒に歩くのは遠慮するよ。……そうそう、君と歩くと僕たちの『品格』が地の底まで落ちてしまうからね。だから目の前からさっさと消えてくれないかな?ミリィ程ではないけど、僕たちも怒っているからね。これ以上視界に入っているとどうなるかわからないよ?」
その言葉を聞いたロッゾは、捨て台詞を吐きながらその場から逃げるのであった。




