遅れる朗報 -神々の悪戯-
--それから2年後、クラウンは8歳となった。
『神々の加護』を受けた後、クージルの意向により王都から家庭教師が招かれ毎日が大忙しであった。朝は魔法の勉強、昼は体術訓練など6歳の子どもにはなかなか大変な日々であった。
しかし休みの日はしっかりとあり、その日は稀に帰ってくる兄たちと時間が合えば遊んでもらっていた。
そして、本日8歳となったクラウンの誕生日。兄たちがお祝いの為に実家に戻ってきており盛大にお祝いをしてくれるのであった。
「おう、クラウン。8歳の誕生日おめでとう!こいつはお前へのプレゼントだ。武器は最終的にはオーダーメイドになるけど、それまではこの剣を使うといい」
「…ありがとう、ノーム兄様。大事に使わせてもらいます」
「それじゃあ、僕からも。クラウンは勉強も好きって聞いたからこの兵法の書をプレゼント。最新版だから、楽しく読めると思うよ」
「…ありがとう、ジル兄様。ちょうど兵法の基本を習ったばかりなんです」
「ところでノーム兄。それって騎士団の剣だよね?まだ将来は分からないけど、それはダメなんじゃない?」
「いーんだよ!細かいことは!…それに俺はクルドのやつから聞いたんだぞ。クラウンが騎士団の剣が欲しいって言ってたって」
「えー……クルドさんが…?…それってまた騙されたんじゃない?」
「えっ?クラウン、騎士団の剣が欲しいって言ったんだよな?」
「訓練用の武器が欲しいとは言いましたけど、騎士団の剣が欲しいとは言ってないですよ」
「…あー、そういえばクルドさん前々から騎士団の剣使ってみたいなーって言ってたね」
「……ちょっと外に出てくる。なぁに、明日からの家庭教師が違うやつが来るだけだ」
「勘弁してよノーム兄。流石に騎士団第6席が友人殺しは不味い」
「そうですよノーム兄様。ぼくはノーム兄様もクルドさんも大好きだからそれはしないでください」
「くそーっ。また騙された。次会ったら痛い目に合わせてやる」
先程、誕生日プレゼントとして、騎士団の剣を持ってきたのがフレイゼン家の長男ノーム。歳は18で今は王立騎士団に所属し、第6団長に着任しているエリートである。この世界では16歳から成人と認められる。なので18歳にして王立騎士団の6番目の強さということは、類稀なる才能を持っている証拠である。
弟思いの熱血漢ではあるが、領地の経営などは苦手な為、次期領主の座は継がないとクージルに伝えている。
次に兵法書をプレゼントしたのが、次男ジル。今年成人したばかりではあるが、王立学院時代より魔法と知識の才能がずば抜けており王立魔術団よりスカウトが来るほどであった。しかし、あまり武力が好きではなかった為父の後を継ぐ事を決意する。今は王都の領地経営の学校に通い、日々勉強中である。
「それにしても、親父殿は遅いなー。いったい何をしてるんだか」
「そうだねー。ここまで遅いとなると、変な予感しかしいんだよねー」
「ジル兄様、変な予感って…?」
「ああ、面倒ごとを持ってきそうな…」
「今帰ったぞ。ん?なんだお前たち。もしかして、私の悪口を言っていたのではあるまいな」
「言ってないですよ父様。それよりその大量の荷物はなんですか?」
「そうだぜ親父殿。せっかくのクラウンの誕生日なのに親が遅れて来るなんて…。しかも少し酒の臭いもするなぁ」
「まぁまぁ、兄様方。父上も、2人に会えるのも楽しみにしてたんですから。少しだけ多目に見てやってください」
「クラウンは、親父殿を甘やかせ過ぎだよ」
少し呆れたようにノームはクラウンを見つめ、仕方がないかと思いクージルの方を見る。
「んで、親父殿はいったい何を買ってきたんだい」