王立学園 -前途多難 2-
「す、すいません…。ノートを忘れたんですが…」
「…ジゼル、お前は何しに学校に来てるんだ?…ノートなら購買部に売ってるから自力で探して買ってこい。他に忘れ物した馬鹿はいるか?」
生徒達を見渡すが、ジゼル以外は大丈夫そうなのを確認し話を続ける。
「大丈夫そうだな。んなら、これで終わりとする。ジゼルは急いでノート買ってこい」
ドランが教室から出て行くと同時にジゼルが急いで教室を出て行く。バリーがそれをからかい、ヘレーナに怒られるのであった。
1限目の鐘が鳴り、生徒達は着席する。ジゼルはまだ帰ってきていない。ドランが教科書を持って教室へと入ってくると同時にジゼルも慌てて入ってくる。
「よし、ジゼルも無事に買えたみたいだし授業を始めるぞー。教科書の5ページを開け。…それじゃ、スファレ。1行目から読んでいってくれ」
「はい。『まず始めに、この世界は5つの国に別れている。侵略を是とするドミニオン帝国。唯一神を信仰するポートセルム宗教国家。亜人種と共存しているフェルト評議国家。魔人族で構成されているエビリアル魔導国。そして、我が国エイジニア王国。ポートセルム宗教国家とフェルト評議国家と我が国では現在、三ヶ国同盟を結んでいる』」
「はい、そこまで。えー、まずは知ってるとは思うが周辺国家についてだ。我が国とポートセルム、フェルトは三ヶ国同盟を結んでいる。色々と中身があるのだが、1番大事な条約がある。誰か分かるやついるか?」
「はい!」
「お?元気いいな!なら、ジゼル答えろ」
「えーっと、『亜人種に関連しての条約』です」
「正解。えー、ジゼルが言った通り『亜人種』について条約が結ばれている。『亜人種』とは何か説明できる奴はいるか?」
「はい!」
「おお、またジゼルか。よし、答えろ」
「『亜人種』とは人間に近い種族の事で、『エルフ』や『狼人間』などが代表されます」
「ほぼほぼ正解。だが、もう少し詳しく説明出来なきゃ点は取れないな。『亜人種』とは二足歩行でなおかつ意思疎通が出来る種族の事だ。見た目ががっつり魔物でも、二足歩行で会話が出来たらそれは『亜人種』だ。はい、ここで問題。『亜人』と『魔人』の違いはなんだ?ヘレーナ」
「はい、違いは頭に『角』があるかどうかです」
「正解。『魔人族』にとって『角』は重要なものであり、魔法の媒体でもある。この『角』があるかどうかが、決定的な区別の仕方だな。ここテストに出るからメモしておけよー」
ドランの言葉に慌ててペンを走らす生徒達。クラウンも同様にノートに書き込んでいく。
「国家間の条約は後々勉強するから教科書読んでおけよー。んじゃ、次いくぞー。『ドミニオン帝国』について分かるやついるか?…ああ、ジゼル以外で」
「はーい!」
「………ならアックス。答えろ」
「はい!『ドミニオン帝国』とは我が国の北に位置し、世界統一を掲げる国です」
「正解。それ以外は知っているか?」
「はい!ドミニオン帝国は我が国と幾度となく戦火を交えています。ここ最近では『土の公爵家』が対応しています」
「そうだな。まぁ、『土の公爵家』の領地が帝国の目の前っていうのもあるが。大規模な侵略はここ最近では無いが、昔はあったらしい。ま、俺の爺さんぐらいの若い時だな。今言ったように、帝国とは敵対関係になっている。お陰で国家間の合意などは全く結んでいない。貿易なども行われてないからな」
「先生!敵対関係になっているのは帝国だけなんですか?」
「いい質問だマルス。残念ながら敵対関係になっているのはもう一つある。ポートセルムの南、離れたところにある『エビリアル魔導国』だ。ただ、100年以上侵略も活動も無いみたいだ。1番近いポートセルムにも被害が出ていないと報告されている。だが、『魔人族』で構成されているため、大規模な侵略があった場合、三ヶ国で対応しなければならない程、国力の差がある。なにせ魔法に長けてる『魔人族』であるからな」




