王立学園 -午後の授業 4-
「うう…、バリーたちとパーティ組めたのは嬉しいんだけど、公爵家4人と組むだなんて…。恐れ多過ぎるよ!」
「まぁまぁ、いいじゃねーか!俺たちと組めたんだから前向きに捉えようぜ!」
授業が終わり、バリーとクラウンは寮へと向かっている。クラウンは公爵家とパーティを組むことになり落ち込んでいた。というよりは、ミリィと組むということに落ち込んでいるのだが…。
「バリーたちは優しいからいいんだけど…。ミリィはぼくのことあんまりよく思っていなさそうだしなぁ…」
「…うーん、あんな態度取る奴じゃないんだけどな。クラウンお前なんかしたんじゃないか?」
「してないよ!むしろ、全然話してもいないよ!なのに嫌われている感じがするんだよなぁ…」
「お前が覚えてないだけで、なんかしてるんじゃないか?キレたら記憶無くすみたいだし」
からかうようにバリーが言うと、クラウンは頬を膨らませ拗ねる。丁度その時、寮への魔方陣へと到着した。
「ま、それは時間かけて修復していくしかないな。原因は全くわからないけど。とりあえず、寮に帰ろうぜ」
「原因がわからないのが問題なんだよ…。まぁ、バリーの言う通りだね。…とりあえず帰ろっか」
2人は魔方陣へ乗り、「鉈婆」と唱え寮へと帰還する。
寮へ着くと、丁度門前にペイトンが箱を持って歩いているのが見えた。
「おーい!ペイトン!お前何持ってんだ?なんも配布物とか無かったと思うけど?」
「や、やぁバリー。こ、これは鉈婆の手伝いで野菜が入っているんだよ」
ペイトンが持っている箱を除くと、確かに裏の畑で収穫した土がついたままの野菜が入っていた。
「すげーな、これなんて野菜なんだ?」
「キ、キャベツとアスパラガスって言うんだって。べ、ベーコンを巻いて食べるとす、凄く美味しいんだってさ」
「へぇー。ベーコンを巻くんだ。すると今日の晩御飯になるのかな?」
「さ、さすがにそれはわかんないよ」
「ま、鉈婆が美味いって言うなら美味いんだろーよ!どれ、重そうだし持ってやるよ!」
そういうと、バリーはペイトンから箱を強引に奪い取る。
「そ、そんなしなくていいよ…。僕が鉈婆に頼まれたんだから…」
「いーっていーって!帰る方向は一緒だし話しながら帰ろうぜ」
バリーのとびっきりの笑顔にペイトンは何も言えなくなる。申し訳無さそうに、よろしくねと伝えクラウン達と寮へと入っていく。
「おー、着いたな!ペイトン、これはどこに持って…」
「なんだいなんだい!アンタたちッ!帰ってきたら『ただいま』ぐらい言ったらどうねッ!無言で家に入るなんて許さないよッ!」
丁度入り口に居たのか、エリスがクラウン達に金切り声で話しかける。
「『ただいま』?なんだそれは?」
バリーが不思議そうに聞くと呆れたようにエリスが答える。
「あのねぇ、屋敷に帰ってきたら執事さんたちが『おかえりなさいませ』って言うだろ?そしたら、アンタたちはなんて答えるのね?」
「『今帰った』って俺は言うぜ?」
「ああ、それと大体一緒の意味だよッ!だけど、この寮で1番偉いのはあたしだからねッ!1番上の者には、『ただいま戻りました』って言わないかい?それを簡略して『ただいま』って言うんだよッ!!この寮は別にそんなに敷居が高いわけじゃないからね。だから、帰ってきたら『ただいま』って言わせるようにしているのさ」
「そ、それは鉈婆でいう『礼儀』なの?」
「んにゃ、『礼儀』というよりは『挨拶』だね。アンタたちはしっかり上流階級の躾はされてるからねッ!けど、ここでは階級なぞ関係無いからねぇ。平民のこととかも教えなきゃ立派になれやしないよ!」
「…んん?じゃあ、俺たちは平民の感じに生活すればいいのか?」
「上から目線に聞こえるねぇ?まぁ、爵位持ちよりも平民の方が多いんだ。より、平民に近い考えを持った方が色々と都合が良いってもんさ」
「うーん…。鉈婆がそう言うならそうなんだろうね」
「う、うん。鉈婆は言い方キツイけどま、間違ったことは言わないだろうし…」
「あくまでもここでの生活においてだよッ!でも、平民の知識を知ってなきゃ平民はついてこないからねッ!アンタたちだって、高飛車な性格の奴のところにお世話なんてなりたくないだろう?それと一緒さ」
「ふーん…。色々と『礼儀作法』とかあるんだな。ま、勉強になるからいいなっ!」
「そうだよッ!何事も勉強さねッ!さて、その箱は食堂へ持っていってくんな」
バリーはエリスの指示通り箱を食堂へ持っていく。クラウン達は部屋へと先に戻っていると告げ、自室へと向かうのであった。




