王立学園 -昼食 -
中身の濃い午前が終わり、クラウン達3人は食堂へと向かっていた。特にクラウンは色々とあった為に疲労困憊であった。
「しっかし、クラウンってキレたらおっかねぇなぁ。マジで怒らせないように決意したぜ!」
「あれは凄かったなぁ…。あんな一面が隠れていただなんて…。良い性格してるね」
「アックスだけには言われたくないなぁ…」
談笑しながら食堂へと着き、まず席の確保から始める。すると、遠くから声がかけられる。
「クラウンー、バリー、アックスー。こちら空いてますわよー!」
声の方へ目を向けると、ヘレーナとミリィがそこに居た。ヘレーナは笑顔で、ミリィは嫌そうな顔をしているが。
「お、ヘレナ。俺たちの為に席取っててくれたのか?」
「はぁ?バッカじゃない?なんであんたの為に席なんか取らないといけないのよ!」
ヘレーナに問いかけたつもりだったが、ミリィがバリーに噛み付いてきた。
「いや、おめーに聞いてねーし」
「はぁ!?なによその態度!喧嘩売ってんの!?」
「ちょっとミリィ、落ち着いて。さっきまでと全然態度が違うじゃない…。一体どうしたの?」
「…はぁ、ヘレナも大変だね。ほら、2人ともちょっと落ち着いて」
睨み合っている2人の間に入り、アックスとヘレーナが両者を落ち着かせる。予想外の光景にクラウンは静止していた。
「とりあえず隣座らせてもらうよ?いいでしょ、ミリィ?」
「ふんっ!お好きにどーぞ!」
「…はぁ。一体どうしたのミリィ?」
「ううん、なんでもないわ!それより、デザート取ってくる!」
ミリィの返事に驚いたようにバリーが目を見開く。それに気付かず、ミリィは席を立ち振り返る。そこには突っ立っているクラウンの姿があった。
「きゃっ!…何よコイツ…。午前中の問題児じゃない!ちょっとクラウ………あんた!そこ退きなさいよ!」
クラウンの目の前でミリィが叫ぶ。その声に反応したようにクラウンが答える。
「…ん?ああ、ごめん。邪魔してたみたいだね。えーっと…ミリィ?…だったよね?」
クラウンとしては、謝罪をし名前を確認しただけに過ぎない。しかし、ミリィにとっては違ったようでバリーの時よりも大きい声で叫ぶ。
「はあああああああ!?なによあんたっ!人の名前も覚えていないわけ!?さらには、人のことを呼び捨て!?信じられない!あたしは公爵家なのよ!?立場をわきまえなさい!」
顔を赤く染めながらミリィは激昂する。普段、バリーやアックスと絡む彼女を知っているヘレーナは、今の彼女が別人の様に見えた。
「ミリィ!少し声を落として!……本当に一体どうしたの?ミリィらしくないわ?いつもなら、そんなこと言わないじゃない…」
彼等の知っているミリィは、高慢な性格をしているが誰にでも優しく、立場など分け隔てなく接する事の出来る性格だと知っていた。だが、3人の前にいるミリィは、彼等が知るミリィとは違うミリィであった。
「…おい、ミリィ。お前そんな失礼なことを言う奴だったか?俺の知るミリィは、『公爵家』の名前なんぞ出す性格はしてない」
「…ミリィ。君はいま『公爵家』の名に泥を塗っているよ?」
静かにバリー達は怒りを表す。それは『公爵家』としての最低の無礼に対して。そして、友人であるクラウンに対しての両方だ。
「ッ…。知らない!そんなの知らないわっ!バリーたちのバカっ!」
感情が決壊した様にミリィは捨て台詞を吐き、周囲の人垣をかき分けながら出て行く。その様子を心配そうに見つめるヘレーナ。重い空気の中、言葉を発したのはアックスであった。
「…ふぅ。一体何がなんやら。……ああ、皆さんすいません。お騒がせしました」
周囲に謝罪をし、席へと座るアックス。その横には顔を顰めているバリーが座る。
「本当にね…。ミリィらしくないわ…。…クラウンも立ってないでこちらに座ったら?」
ヘレーナに促され、その隣へと座る。クラウンは一体何が起きたのかさっぱりわからないと表情で語っている。
「おう、クラウン。あいつはな、本当は良い奴なんだ。原因はよくわからねーが…嫌いにならないでやってくれ」
「…僕からもお願いするよ。本当に良い子なんだ」
「私からもお願いしますわ」
3人から懇願され、クラウンはしぶしぶ了承する。原因は分からないが、クラウン的には嫌われている様に感じていた。その後、4人は黙々と昼食を取るのであった。




