王立学園 -授業 8-
エースが考えた方法は、この世界において異端であった。誰もが自分の魔力量と魔法の仕組みを理解して使えるようになるのが、この世界での定説である。真似出来るから--と考えれるエースは、紛れも無い天才であった。
「それでね、色々魔法の仕組みを変えて標準的な虚偽情報を展開出来る魔法に作り変えたんだ。でもこれは常時発動型では無いよ。そこまで変換しようと思ったんだけど、僕の魔力量では無理だった。だから、これはある一定時間展開出来るようになっている、それでもよければどうぞ」
エースは簡単に言うが、これは新しく作られた魔法。所謂、オリジナルであった。学会などで発表すれば間違いなく歴史に名を刻む発明であった。
「…話が難しくて、ついていけないんですけど…」
「うーん、凄く簡単に言えば、この魔法要る?要らない?僕は別に使えるかどうか、真似出来るかどうかを見てみたいんだ。ただの好奇心だね」
エースは紛れも無く大天才の部類に入るが、同時に変人の部類にも入っていた。
「うーん………。魔力量がどれだけあるかわからないですし、その魔法って僕の属性魔法も誤魔化すこと出来るんですか?」
「もちろんだよ。もしかしたらこの先、王女様に会うかも知れないからね。その辺は実体験済み」
さらりと爆弾発言をしたが、クラウンは気づくことはなかった。今、クラウンは3属性を扱える。もし王女がクラウンと会った時、バレる可能性が高い。ならば選択肢は一つしかない。
「…エースさん、教えてください」
「うん、いいよ。…どのみち断っても無理矢理教えたけどね」
「え?どういうことですか?」
「だって、人の魔法を真似出来るか見てみたいじゃん。僕の好奇心を満足させてくれそうだし」
(へ、変人だ…。ジル兄様はまともだけど、もし王宮魔術団に入っていたらこうなってたのかも…)
ドン引きするクラウンであったが、気にも留めないエースはさっさと話を進める。
「話に結構時間かかったね。…サクッと終わらせようか。じゃ、今から詠唱するから僕の手を触ってて」
言われるまま、クラウンは手を触る。それを確認しエースは詠唱する。
「いくよー。…『虚偽情報・木』
クラウンは何か浸透していくような不思議な感覚を覚えた。
「あー、魔力ごっそり減ったなぁ。…とりあえず魔法をかける前に、調べさせてね」
そういうと、エースは眼鏡を取り出し魔法をかける。
「『属性調査」
「ふんふん……君は今3属性使える状態になっているね。いやー、本当に使えるんだ。凄いね!」
子供のような笑顔で話しかけるエース。クラウンは今エースが使った魔法について疑問を持った。
「エースさん、今の魔法なんですけど…」
「ああ、これも僕のオリジナル。詳しいことはまた今度ね。それじゃさっき教えた魔法使ってみせて」
「わ、わかりました。それじゃあ、…『虚偽情報・木』」
「よし、それじゃあ見てみようか。どれどれ…?……よし、成功!ちゃんと標準的な魔力と火属性のみの表示になっているよ!いやー、凄いなぁ。本当に出来ちゃってるよ。あ、また今度なんか頼むことがあるかも知れないけどその時はよろしくね!はい、もう外に出ていいよ!はい、次の生徒さんどーぞー!」
一方的に捲し立てられ外へと追い出されたクラウン。
(お礼とか言ってないんだけどな…)
そう思いながら前を向くと、バリーとアックスが心配そうにクラウンを待っていた。
「おう、遅かったな。なんか変なことされなかったか?」
「大丈夫?兄さんちょっと変人だから…。何かされなかった?」
---うん、変人ってのは知ってる。それにいっぱい変なことされたよとは言えない。これはクラウンの『秘密』であり、言えないことなのだから。
その代わり、少しだけ本心を口にする。
「うん、ノーム兄様のことをすごく詳しく聞かれたよ…」
クラウンの返事に、アックスは頭を振りバリーは「やっぱり変人だな」と口にするのであった。




