王立学園 -授業 7-
「はい、よろしくお願いします」
「別に緊張しなくていいよ。それじゃ質問に入る前にっと…」
先程までのヘラヘラした表情ではなく、真面目な表情でクラウンを見つめる。
「まずは…『無音領域・木』」
エースが魔法を唱えると周囲の音が聞こえなくなった。
「よし、それじゃ話をしよう。…ああ、この領域は周囲の音も遮断するけど、僕たちの話も遮断してくれてるよ。それで話なんだけど……僕は君の『秘密』を知っている」
エースから意外な発言が飛び出した。否定するか、惚けるかしなければならないのだが、予想外の言葉が出たため、身体は硬直するが表情は崩さないようにする。
「…安心して?このことは僕しか知らないし、もちろん弟も知らない」
「…『秘密』ってなんのことでしょうか?ぼくにはちょっとわかんないです」
「…まぁ、その反応が当たり前だよね。…君のことは『フレイゼン伯爵』から聞いているよ。もちろん、君の2人の兄たちからも」
またもや、予想外の言葉が出てきた。今度ばかりは表情を崩してしまう。しかし、目的がわからない。父親、2人の兄達から聞いたというのが事実だとしても、正しい反応がわからない。
「…納得してないようだから、簡潔にいうね。僕は君の『魔法属性』、『魔力消費量』について詳しく聞いてる」
クラウンはその言葉を聞き事実だと確信する。しかし、なぜエースに話したのかがわからない。その疑問が表情に出ていたのかエースが続ける。
「僕はね、『探知系』と『魔力操作』の魔法が優れているんだ。…そして、ここからが本題。僕は君に『魔力操作』を教えてほしいと、クージル伯爵から頼まれている」
エースの言葉に思い当たる節があった。クラウンは日々魔力量を増加させる為鍛錬していた。ジルに増加方法は教えて貰ったが、抑制方法は教えて貰っていない。いずれ教えると伝えられ、今日まで放置していた。
「…思い当たることがあったかい?ジルはそっち系の魔法には疎いから出来なかったみたいだけど、僕を訪ねて来たんだよ。伯爵とノームを連れてね」
話の内容はこうだ。クラウンが日々、魔力増加の鍛錬を行っているのを知ったジルはふと疑問に思った。『魔力消費量が半分で済み、尚且つ、多属性使えるクラウンの魔力は普通なのか』と。この疑問についてジルは深く考える。そしてその対処法についても、考えを巡らした。
…現在王国で『魔力』について一番詳しいのは王の娘、ティアラ王女である。だが王女にお願いした場合、王の耳へと届く事は想像に難くない。無理だと判断したジルは、『魔力操作』に長けている人物の事を思い出す。『魔力操作』により隠蔽する事は出来るのではないかと考えた。そして、その人物を訪ね『魔力操作』で隠蔽は可能かと聞いた。だが答えは『不可能』。途方にくれるジルであったが、その人物がこう提案した。『隠すのは無理だが、虚偽の魔力量を出す事は可能かも』と。それを聞いたジルは父と兄へと連絡し、総出でその人物へと会いに行ったのである。
「とまぁ…長い話だけどね。それで僕に相談が来たってこと。そして、君の秘密を教えてもらったのさ」
エースが一通り喋り終えると考えを整理させる為なのか無言になった。それを感じたクラウンは話を自分の中で整理する。
(ということは…ぼくの『魔力量』が尋常じゃない可能性がある。…もし、『魔力量』が尋常じゃない場合面倒なことになる可能性がある。…はっきりあるか分かるのは王女様だけ。そうすると、国王陛下の耳に入る場合がある。…その代わりに、『魔力量』を誤魔化そうということ…。うーん、全部『可能性がある』ってことだよね。無いかもしれないけど、ジル兄様的には膨大な魔力があるってのが前提なんだね)
1人深く考えるクラウンに、エースが声をかける。
「一応、伯爵達は『持っている』と考えているみたい。でも、この魔法は今のところ僕しか使えない魔法だけど、君は他属性の魔法が真似出来るらしいね。それなら、僕のを真似してもらえばいいじゃないって考えたんだ」




