王立学園 -授業 2-
「遅いぞー!全く、お前らは問題児だな!これからは3馬鹿と呼ぼう!」
訓練所の前にいるドランが少し陰湿な声をかける。普段の怠そうな声では無いことにクラウンは疑問を抱いたが、急いで訓練所へと入る。中には静かに興奮した表情の生徒達が整列し待機していた。その生徒達の前に立つのは屈強な騎士達と純白のローブを纏う魔術団達がいた。クラウン達が列の最後尾に並び前を向くと、そこには見慣れた顔がいた。
「ゴホン、3馬鹿も揃ったようだしそろそろ説明に入るぞー。まず初めに、お前らの前にいらっしゃるのが王宮騎士団、魔術団の隊長たちだ。失礼のないように、静かに話を聞くこと!…では、エイム団長お願いします」
エイムと呼ばれた騎士が頷き、一歩前に出る。鷹のように鋭い目に、生徒達は少し威圧される。
「オホンッ!初めまして諸君。私は王宮第5騎士団団長、アームス=エイムだ。そして、私の隣にいるのが王宮第5魔術団団長、アムクア=ベールだ」
ベールと呼ばれた団長が一歩前に出て一礼する。
「今回は第5から第9までの騎士団、魔術団の団長が参加している。もちろん、君たちの実力を測るだけであるのでそこまで緊張しないで欲しい。それと、今持てる全ての力を見せてくれ。…ああ、大丈夫。ここにいるものは全て団長クラス。怪我をしたり、させたりすることは無い。実力を出し切ってくれ。以上だ」
屈強なエイムの力強い声に気圧された生徒達は息を呑む。そこに、ベールが声をかける。
「初めまして皆様。私はアムクア=ベールと申します。これから実力を確認させてもらう前に、少し皆様をリラックスさせてもらいますね。--『状態緩和・水』」
ベールのか細い声と共に、生徒達に魔法がかかる。すると、生徒達の硬い表情が少しずつ緩んでいく。
「…はい、これで大丈夫でしょう。それではドラン先生、指示をお願いします」
「ありがとうございます。では、まず男子は全員エイム団長の前に、女子はベール団長の前に再整列してくれ」
ドランの指示に従い、生徒達は移動する。普段のよりも早く整列出来たのは騎士団・魔術団を見れた興奮のためか、それともエイムの迫力を恐れてなのかはわからない。
「あー、男子は揃ってるか?…よろしい。では、今からまた再整列してもらう。えー、今度は俺のところに公爵家・侯爵家の生徒。次に、伯爵家はノーム。…そう、そこの手を挙げてる男だな。そして、子爵家はシルク、あそこの槍を持っている女のところへ。男爵家は、ハインとラティ。余ってる男2人だな。そこに並び直してくれ。では!行動開始!」
エイムの野太い声に押されるように、男子生徒達は自分の場所へと並び直す。クラウンは足取り重く自分の担当者の所へと並び直す。ノームは自分の弟の姿を見つけ、手を振る。しかし、家庭教師の件を根に持っているクラウンはノームを一瞥しただけであった。
「あー、ゴホン。えー、それじゃお前らの監督官として今回呼ばれた、王宮第6騎士団団長フレイゼン=ノームだ。そこにいるクラウンの兄貴だ。みんな仲良くしてやってくれ」
兄のお世話な一言にクラウンは恥ずかしくなる。周りがクラウンに好奇の視線を浴びせるがクラウンは下を向いたままだ。
「…あー、すまん。余計な一言だった。…それじゃ気を取り直して今回の説明をするぞー!」
ノームは懐から紙を取り出し、書いているであろう文字を声に出して読む。
「えーっと…。まず生徒たちは各々得意とする武器を持って監督官と模擬試合をしてもらう。ただし、魔法の使用は強化魔法のみとする。…えっ?…監督官は防御に徹すること。ただし、強化魔法は許可するが、防御魔法は許可しない。…なお、時間短縮の為、生徒の隙が5つ見えた場合はその場で終了とする。……以上だ。…あー、質問はあるか?」
「はい!もし監督官に一太刀でも入れた場合はどうなるんですか?」
「良い質問だ!でもね、俺は一応第6騎士団団長よ?お前らの攻撃なんて一太刀でも入れられたら、即団長交代してやるよ。…まぁ、そんなことはありえないけどな」
笑みを浮かべるノームであるが、そこには優しさなど無い。自信の表れなのか、少し威圧を含んでいる。質問をした生徒は震える声で返事をするのみであった。




