王立学園 -寮へ 9-
バリーに遅れること5分。ペイトン、クラウンの順に湯船へと浸かる。感想は先程のバリーと同等であった。少し時が経ち、ペイトンにとっては熱過ぎたのか早めに湯船から出る。それにつられる様にクラウン達も出る。
「いやぁ、最高だな。かなりリラックス出来たぜ。…よっしゃっ、次『サウナ』ってやつに行こうぜ!」
「ぼ、僕は『水風呂』が、い、いいなぁ」
「そうだね、ちょっと熱かったからぼくも『水風呂』がいいなぁ」
「なんだなんだ?根性ねえなぁ!…まぁ『水風呂』ってやつにも興味あるし、それが終わったら『サウナ』に行こうぜ!」
初めての『銭湯』を満喫するクラウン達。中でも『サウナ』を気に入ったバリーが、何回もクラウン達に強要するのだが…。軽くのぼせかけていたのもあり、クラウン達はバリーの誘いを断り、先に風呂から出ると伝え脱衣所へと向かう。バリーは少し寂しそうにしていたが、『サウナ』へと戻り心ゆくまで満喫するのであった。
共同風呂から自分の部屋へと戻ったクラウン。入学初日という事もあり、かなり疲れが出ていた。明日の支度を整え、ベッドに入る。そして、今日の事を思い返していた。
(今日は疲れたなぁ…。でも、初めて友達が出来た。それも4人も。友達ってこんな簡単に出来るもんなんだ。『あの本』に書いてある事は正しいんだなぁ…。今思い出すと、ペイトン以外は全員公爵家なんだよね…。うぅ…凄い人たちと友達になったんだなぁ。しかも美男美女…。これは明日からの嫉妬の視線が強そうだ…。これは仕方ないと諦めよう。………それと…)
今日の出来事を思い出しながら、クラウンは夢の世界へと旅立つのであった。
翌日朝6時。金属を叩く様な大きな音が廊下から聞こえる。その大きな音にクラウンは夢の世界から引きづり出される。
「ほうら、起床の時間だよッ!着替えて裏の畑に集合しなッ!」
大きな音と共に、エリスのより大きな声が聞こえる。再び夢の世界へと戻りそうだったクラウンはエリスの声に意識をはっきりさせる。
(あぶなっ。二度寝するところだった…。…エリスの声って響く声してるなぁ…)
どうでもいい事を考えながら、クラウンは汚れてもいい服に着替える。汚れてもいい服とは、夕食の時エリスからの指示だ。着替えが終わるとクラウンは廊下へと出る。ちょうどペイトンも出てきた様で話しかける。
「おはよペイトン。一緒に行こうよ!」
「お、おはようク、クラウン。そ、それじゃあ、行こうか…」
まだ眠そうにしているペイトンと共に裏の畑へと向かう。他の生徒達も寝惚け眼で畑へと向かう。
「遅いッ!ちゃっちゃと動きなッ!アンタらの朝食の時間が減ることになるよッ!」
畑に着くとエリスが鉈を持ちながら、激昂している。その姿に怯える様にクラウン達は、急ぎエリスの前へと駆け足になる。
「ったく!タラタラしてんじゃないよッ!……いいかい?今からアンタらには収穫の手伝いをしてもらうよッ!まずアタシが手本を見せるから、真似するんだよッ!」
エリスは鉈を地面に刺し、今から収穫する野菜へと向かう。
「これはキャベツといって、あんたらがサラダとかで食べる野菜のことだ。こんな丸い形をしているんだよ。それでね、取り方だけど…」
エリスが慣れている手つきでキャベツを収穫する。
「こんな感じで根元に刃を入れて収穫するんだ。んで、大事な事だけどこんくらいの大きさのやつを収穫してくんなッ!それと、上から押して堅くギュッとしているものを収穫する事!柔らかいものはまだ時期じゃないからね。割れているやつ…裂球っていうんだけど、それは刈り取ってこっちに入れてくんなッ!」
エリスの手には、ボロボロの収穫袋が握ってあった。
「綺麗なのはこっちの袋に入れることッ!理解できたねッ?それじゃ、さっさと収穫しなッ!」
エリスから各自包丁を手渡され、見様見真似で収穫していく。エリスは怒る事なく、比較的優しくコツなどを指導していく。30分ほどで、畑の一画が終わるとエリスが声をかける。
「はい!そんくらいでいいよ!…それじゃあね、このボロボロの袋は食堂に持って行ってくんなッ。バリー!重いけどアンタなら持てるだろ?」
「ああ、大丈夫だぜ!…でもちょっと多いかな?クラウン、手伝ってくれ」」
「うん!いいよ!」
ボロボロの袋を担いだバリーに連れられ、生徒達は食堂へと向かい、朝食をとるのであった。




