王立学園 -寮へ 8-
夕食を済ませ、風呂の時間。クラウン達3人は着替えを持って共同風呂へと向かう。途中、先に入浴を済ませた生徒達とすれ違いに冗談を交わしながら。
「なぁ、あいつらが言ってた事だけどよぉ、『マジビビるから楽しみにしとけ』ってどういう事かわかるか?」
「うーん、予想以上にボロいとかかな?」
「そ、それか……ご、豪勢な感じとか…?」
すれ違った生徒達はニヤニヤと風呂の感想をクラウン達に伝えていた。他の生徒達とは夕食の時ある程度仲良くなっていた。まぁ、バリーのお陰ではあるのだが。
「いーや、あいつらの言い方的には含みがあったぜ。お前らでも体験した事ないだろ、みたいな」
「まぁ、考えても分かんないし。楽しみにしておこうよ」
モヤモヤとした気持ちでクラウン達は風呂へと急ぐ。風呂場への入り口に着いた時、中から反響した声が響いてくる。
「へー、声が聞こえるってことはめっちゃ広いんだろーな!」
バリーが、入り口のドアを開けるとそこには体験した事、見聞きした事のない空間が広がっていた。
「…なんだこりゃ?」
「…なんだろう?」
「…えっ?………えっ?」
3人の前には、なんとも説明しづらい空間があった。唯一分かることといえば、この部屋の先に風呂へと続く扉があるという事だけか。恐る恐る部屋へと足を踏み入れ、辺りを見渡していたクラウンが何かに気づいた。
「あ、バリー。あれ見てよ」
「…んんー?あ、なんか書いてあるな」
「…き、『共同スペースの使い方』?」
3人の目は、聞き慣れない単語が表記されている看板へと向かう。その看板には、この部屋についての説明が書かれていた。
「はぁーん、どうやらこれは『銭湯』というみたいだな。……ところで銭湯ってなんだ?」
「き、聞いたことがあるよ…。確か…ポ、ポートセルム宗教国家の共同風呂…だったと思う…」
「へぇー。ペイトンよく知ってたね?」
「ぼ、僕も本を読んでたから、ち、知識だけだけどね」
クラウン達の前には、『銭湯』について記述がされていた。どうやら、これは他国の文化らしくクラウン達は酷く興味をそそられる。
「おいおい、なんだこの『サウナ』ってやつは?すげー楽しそうじゃんか!早く入ろうぜ!」
興奮したようにバリーは服を脱ぎ、記述されているように棚へと衣服を投げ入れる。それに続くようにクラウン達も服を脱ぎ始める。先に脱ぎ終わったバリーが焦れたようにクラウン達を急かす。
「おいおい、何恥ずかしがってんだよ!看板にも書いてあるだろ?『男なら裸の付き合いが大事』って。わけわかんねーが、早く裸になれよ!」
「人前で脱ぐなんて恥ずかしいに決まってるでしょ!なんでそんなにバリーは平気でいられるの…?」
「…し、下も見せなきゃ…い、いけないの?」
「いいからいいから!早く入ろーぜ!」
聞く耳を持たないバリーに呆れながら、クラウン達は服を脱ぎ終える。大事なところはタオルで隠しているが。
「準備できたな!それじゃー行こうぜ!」
バリーが待ちきれないように扉を開ける。するとそこには先客の生徒達が各々楽しんでいる姿が目に入る。目を爛々としながら、バリーは生徒達に声をかける。
「お!ハルク、なんか気持ち良さそーな顔してんな!それぐらいいいのか?」
「バリーたちも入れば分かるよ!とりあえず、看板があるから、それ通りにしなよ」
ハルクと呼ばれた生徒が、指を指した方向には看板があり説明が記述されていた。クラウン達は説明を読み、それに従って各々身体を洗う。一足早くバリーが洗い終わり、ハルクが入っていた湯船へと入る。
「………ふわぁー。これはきもちいいぜぇ…。温度もちょうどいい…」
蕩けたような表情を浮かべ、バリーが力無く感想を口にする。ここには、我が家の様に湯船に花びらが浮いてることはなく、堅苦しい雰囲気もない。必然と心が緩んでいった。その言葉に同調するように、周りの生徒達も頷いていた。




