王立学園 -寮へ 6-
「これから、バリーの部屋の手伝いに行くつもりだし、もし良ければ君も手伝ってくれないかな?人手が多い事に越したことはないから」
「そうだぜ!俺もクラウンに頼んだばっかりだからな!おめーも俺の部屋手伝ってくれよ!なっ?」
「え…うーん…わ、わかりました…」
「よし!ならよろしく頼むぜ!ほんじゃま、さっさと終わらせようぜ!」
「ぼくからもよろしく。それじゃあ、手伝うから配置の指示お願いね」
やや強引に手伝う事を了承させた2人。2人の圧力に負けたのか、生徒は否定出来るはずもなく成り行きに身を任せるのであった。それから、15分後。
「いよーしっ、終わりっと!…しっかしまぁ、凄えな…」
「本当に凄い本の量だね…。部屋の半分以上あるよ…」
「ぼ…ぼく…一人でいることが…お、多いから…」
生徒は恥ずかしそうに、そして悲しそうに言葉を発した。その言葉に含められた感情にクラウンは理解できるものがあった。そして、クラウンがあの言葉を言おうとした時--
「なら今度俺にもオススメの本とかあったら教えてくれよ!俺はバリーだ。バリーって呼んでくれ!」
「あ…え、えっと…ペイトン…です…」
「おう!よろしくペイトン!今日から俺たちは『友達』だ!」
「よ…よろしく」
気さくに話しかけるバリー。クラウンがかけようと思った言葉。まさにそれは、クラウン自身がかけられた言葉であり嬉しかった言葉である。
「ぼくはクラウン。ぼくのこともクラウンって呼んでね!よろしく、ペイトン!」
とクラウンもペイトンに手を出しながら話しかける。その手を見ているのだろう。逡巡し、ペイトンは恐る恐る手を握る。
「よ、よろしく。…ク、クラウン…」
「よーし!じゃあ、次は俺の部屋だな!2人ともよろしく頼むぜ!」
と言いながら、バリーは部屋から出て行く。クラウンはバリーの後を付いて行こうとし、振り返る。
「どうしたの?早く行こうよ!じゃないと急かされるよ!」
迷っているペイトンに声をかけ、共に部屋から出る。廊下の先の方でバリーが呼んでいるのが見える。
「わわっ!待ってよバリー!部屋の番号教えてもらってないから、先に行かないで!」
焦ったように駆け出すクラウン。その後に少し遅れてペイトンが付いて来る。前髪で表情がわからないが、嫌々ではなさそうだ。そして、意外と足が速い。
「ク、クラウン…ちょっと待って…」
「待たないよ!急いでバリーのとこに行かなきゃ!」
笑いながらクラウンはペイトンを急かし、バリーの所へと向かうのであった。
バリーに連れられ部屋の前まで来たクラウン達。バリーが部屋のドアを開ける。
「どうだ!ここが俺の部屋だ!最高に汚いだろ?」
「うん………凄く汚い…」
「す、少し…ち、散らかってるね…」
バリーの汚部屋を見た2人の感想は正直であった。掃除の途中に飲んだのであろう飲み物の残骸、読みかけの本、そしてベッドに散乱する衣服。バリーは典型的な掃除が出来ない人間であった。
「いやー、自分家じゃぁ、メイドが掃除してくれるから良かったんだけどよ。自分でするとなると全然ダメだわ!」
「予想以上に汚いんだけど…。どうしようか…?」
「…や、やるしかない。…が、頑張ろうね!」
「配置はお前らに任す!俺に指示してくれ!」
バリーはクラウン達に配置を丸投げし、指示を仰ぐ。そこに、自力でするという考えは全く無い。--この汚部屋をどうするか、クラウン達は互いに話し合い、作業を進めて行く。途中、バリーが掃除中の罠『懐かしい本』を見つけ読み出すが、意外にもペイトンに怒られ謝罪するのであった。




