王立学園 -寮へ 2-
「はぁーい。それじゃあ全員注目しろー。そこの馬鹿3人組。前を向けよー」
ドランが手を叩きながら、生徒達を注目させる。生徒達の目線が前を向いた事を確認し、言葉を繋ぐ。
「はい、それじゃ今から寮に向かうぞー。校庭の隅の小屋に『転移』の魔法陣が置いてある。これから先、使うから場所を覚えておけよー。ああ、使用方法分からないヤツはいるかー?」
ドランが生徒達の見渡すと、半分くらいの生徒が手を挙げている。
「えええっ…。ちょっと多過ぎるなぁー。…ったく面倒くせぇなぁ」
頭をかきながら、ドランは自分のポケットから何かを取り出す。
「えーっと、これは俺の身分証だ。成人したら貰えるヤツだが、お前らには最初に配ってある生徒手帳を出してくれー」
生徒達が各々生徒手帳を取り出す。全員取り出したのを確認し、ドランが説明を続ける。
「一番後ろのページにお前らの写真と名前が載っているページがあるだろー?それが今のお前らにとっての身分証であーる。………あっ、魔力ってもう他のクラス登録してます?」
ドランが焦りながら、周りの教師に質問をする。教師達が頷くのを確認し、額に手を当てる。
「あぁー。しまった…。忘れてた……。……えー、説明する前に…1-2の生徒たち!お前らに登録させるの忘れてたわ。すまん!」
周りの教師達の冷たい目線を浴びながら、ドランが急いで説明する。
「…えーっと、お前らの写真の下の所に銀色の部分があるだろ?そこに親指を置いて、魔力を流してくれ。光れば登録完了だ!」
クラウン達は各自、銀色の部分に親指を当てる。力を込めると、生徒手帳は白く光った。
「いやぁー、面目ない。忘れてたわー。……はい、皆さん出来たようですね。では説明の続きをします」
教師達の視線を察し、真面目な口調で説明の再開をするドラン。生徒達の目線も冷たい。
「はい、えーっとどこまで話したっけ。……ああ、魔力を流したのでお前たちの身分証となっている。成人するまでは使うからくれぐれも無くなさいように。では、次に『転移』の魔法陣の使い方だが…、使い方は簡単だ。身分証を持っている状態で『行き先』を念じてくれ。…ああ、それと、この魔法陣は学園内に設置されている所ならどこでも移動可能だ」
何か質問あるかー?と問いかけると、何人か手を挙げる。ドランは一人一人指名し、答えていく。あらかた質疑応答が終わり、他に質問が無いようなので締めくくる。
「うーっし、それじゃ後から疑問に思った事は担任に各自で聞いてくれ。とりあえず使い方についてはこれで終わりとする。それで早速寮の方に移動となるのだが…」
ドランが隣の教師に目を向ける。目を向けられた教師が頷き生徒達に告げる。
「生徒諸君!これより寮へと移動する。だが、残念な事にどの寮に割り振られているのかは、私たち教師でも知らんのだ。そこでだ!各々魔法陣に乗り、『我が寮へ』と念じるのだ。それで、お前たちの割り振られた寮へと移動する。理解したか!」
「「「「「はいっ!!!!!」」」」」
筋肉隆々の教師が大声で説明すると、生徒達は大きく返事をする。満足げに頷くと元の位置に戻り、ドランに合図を送る。
「あー、それでは移動を開始するー。まずは1組からー」
引率の先生に従い、1組が動き出す。その間に、生徒達は寮について情報交換をする。それは勿論、クラウン達も同様だ。
「俺は『朱雀』がいいぜ。アックスはどこがいいんだ?」
「んー、僕は『玄武』がいいかな。ヘレナは希望とかあるの?」
「私は『白虎』がいいですわ。ご飯が美味しいと姉様に聞いておりますわ」
「あー、『白虎』は飯が美味いって聞くなぁ。クラウンはどこがいいんだ?」
「うーん……兄様たちからは何も聞いてないからわかんないや。どこが一番いいの?」
「…一番って言われるとどこも一番いいって言われるから何とも言えないなぁ」
「そうですわね。……ただ、『青龍』はヤバいと聞いております」
「………親父も言ってたな。『青龍』の『鉈婆』のところがヤバいって」




