目覚め -英雄の片鱗 4-
重要な話があるので、夜時間を作って欲しい--と真剣な表情でクラウンに言われ、クージルは不吉なものを感じ、急ぎノームとジルを呼び出した。クラウンが死ぬかも知れないと伝えられたノーム達は、仕事を放り投げ実家へと大急ぎで戻った。
「ーークラウン、無事ですかっ!?」
「ークラウン、俺より先に死ぬとか考えるなよっ!」
息を大きく荒げ、広間へと入ってきた2人に対し不思議そうに頭を傾けるクラウンと、申し訳なさそうに顔を向けたクージルが何とも言えない雰囲気を作り上げた。扉の近くに立っていたトールは連絡の食い違いを察したのだろう。苦笑を浮かべながら、ノーム達を見る。
「あれっ?…さっき親父殿からの連絡でクラウンが死ぬかも知れないって伝えられたから、急いで帰ってきたんだけど…」
「僕もそうです。………でもそういう雰囲気では無さそうですね…。どういう事ですかお・と・う・さ・ま?」
「………ごめんなさい。……私の、わたしの早とちりでした……」
最後の方は、聞こえなくなるほど小さな声でクージルは2人に謝罪した。早とちりで弟を殺すなよと激昂するノームと、侯爵家との会談をすっぽかしたんですよと淡々と詰め寄るジルに対し、クージルは椅子から降り、正座をし小さく小さくなっていったのだった。
見てはいられない、と判断したトールがノーム達との仲裁に入るが、クージルのフォローは一切しなかった。ノーム達が勘違いしたのも、元々はクージルが早とちりして連絡したのだろうと思い、反省の意味を込めてそのまま放置していた。
「まぁ、親父殿の事は後でまた説教するとして……重要な話ってなんだよ、クラウン?」
怒りを椅子にぶつけるように腰を下ろしたノームと、静かに椅子に座るジル。クージルは正座したままだ。
「あっ……えーっと、驚かないで聞いて欲しいんだけど…」
「クラウンが死にそうだって聞いた時に、一生分は驚いたから、大丈夫だよ」
涙を堪えながら正座をしているクージル睨みつけ、皮肉を飛ばす。立派な父というオーラが今では全く感じられない。そんな父を横目に、クラウンは話を続ける。
「えーっとね、ぼくね魔法が使えるようになったんだ」




