-武闘祭前日 3-
「そういえば、クラウンたちはどっちも出場するでありんすか?」
「うん!個人戦もパーティ戦も出場するよ。ただ、パーティでの練習はしてないから不安だけど」
「大丈夫だってクラウン!俺たちはあの森で一緒に過ごしてるんだぜ?初めてのパーティじゃあるまいし、下手なことはしないって!」
「でも、クラウンの不安もわかるな。みんなどのくらい強くなったのかわからないし、ここで話し合おうよ」
「あら?もしかしたら個人戦で戦うのかもしれないのよ?」
「そんときはそんときだ!全力で戦えるからいいじゃねーか!」
「それに、クラウンとのパーティ戦の方があたしは重要だと思う!修羅の地について行くなら、ヨシツネ様にあたしたちの強さを見せつけなきゃ!」
ミリィの言葉で本来の目的を思い出したのか、バリー達は真面目な表情で頷く。それから自分が何を覚えたかをみんなで話し合っていく。取りまとめるのはアックスであったが、次の一言でクラウンは声を上げる。
「とりあえず、指揮はクラウンの役目だけどみんなも他の人が使える魔法とかは覚えておいてね!」
「ええっ!?ぼくがみんなに指示するの!?」
裏返った声を出しながらクラウンはバリー達の表情を伺う。バリー達はアックスの意見に賛成であり、クラウンが慌てているのを不思議に思っている。
「もちろんだよ。クラウンは僕たちのリーダーなんだし、それに指揮の勉強もしているんだろう?」
「勉強はしてるけど…。ほら、実戦はしてないし、アックスの方が向いてるんじゃないかなー?」
「おいおい、何言ってんだよ。お前、森の外で俺らに普通に指示出してたじゃねーか」
「あのときはアックスも指示出してたじゃないか!」
「でも、クラウンが結構指示飛ばしてたよね?あたし覚えてるよ?」
「確かにクラウンの指示は的確でしたものね。その上、勉強もしたとなればこれ以上の適任はいないんじゃない?」
その後、クラウンは指揮官になるのを一生懸命に避けようとしたのだが、アックスを筆頭に言いくるめられてしまう。それでもしたくないクラウンはマユリへと助けを求める。
「マユリはどう思う?やっぱりアックスの方が適任だよね?そうだよね!?」
クラウンのウルウルとした目に少しだけ情が湧くが、マユリははっきりとした声で絶望を届ける。
「…わっちもクラウンがいいと思いんす。元より、実力者が指揮を取るのは当たり前だと思いんすけど?」
救いの手はクラウンに差し伸べられなかった。結局、嫌々ながらもクラウンが指揮を取ることになり、再度話し合いとなった。1時間ほど話しているとクラウンの胸の中でモゾモゾと動く気配がした。
「あ、ギンチヨ起きたのかい?」
ピョコンと耳を立てポケットから顔を覗かせるギンチヨ。机の上に置いてある食べ物の匂いに興味を覚えたのか、慌ててクラウンから降りると一目散に焼き鳥へと向かう。
「ギンチヨちゃん!相変わらず可愛いー!」
ミリィが焼き鳥をバラし、ギンチヨへと食べさせる。口周りにタレをつけながら食べる様にミリィは蕩けた表情になる。
「ホントに可愛いわぁ。お代わりあるわよ?」
ヘレーナも似た表情をしながら餌付けをする。尻尾を大きく振り食べるギンチヨをミリィ達はひたすら見続ける。
「あ、そういえばさ、ギンチヨを連れて武闘祭に出るのかい?」
ギンチヨ達を見ながら思い出したかのようにアックスが尋ねる。
「ヨシツネ様に聞いたら構わないってさ。もう登録してあるみたいだよ」
「ほー。それじゃ一緒に戦うのか?」
「ポケットに入れとくだけだから、一緒には戦わないよ。持ち物扱いってことになってるよ」
「確かにギンチヨの大きさじゃ脅威にはならなさそうだもんね。それに放し飼いにしておくのも問題になりそうだし。そのことも考慮してるのかもね」
ミリィ達に可愛がられているギンチヨを見ながらクラウン達は話を終える。そのあとは勉強する事を諦めたマユリがギンチヨ争奪戦を繰り広げ、夜が更けていくのであった。
やっと話が進みました。そういえば転スラのアニメが始まったみたいですね。アプリも早く始まらないかなぁ。




