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白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
112/119

-武闘祭前日 1-

あれから時が経ち、バリー達は地獄--自業自得ではあるが--の稽古を無事乗り越えた。訓練ばかりではなく勉強もしないといけない為、バリー達に安息日というものは無いに等しかった。そして武闘祭前日、師事を仰いだ先生から休みを貰い、バリー達とクラウンは街へと出掛けていた。祭前日とあって、街は活気に包まれていた。あちらこちらに出店が並び、宿屋は満室となっている。人々も多く、中には貴族らしい人も見受けられる。盛況の中、クラウン達は出店で買った焼き鳥なる物を食べながら街を散策していた。


「これめっちゃ旨い!あと10本ぐらい買っておけばよかったぜ!」


「これも美味しいよ!『たこ焼き』っていうみたいだけど、バリーも食べてみなよ」


「あら?私にもそれ頂戴よ。その代わり『イカ焼き』を少しあげるわ」


「ええー?僕はあんまりイカは好きじゃないんだよなぁ…」


「ねぇねぇクラウン!あの『りんご飴』って美味しそうじゃない?一緒に買おうよー!」


久々の休日を心ゆくまで楽しむクラウン達。買い物にすら出掛けていなかったので、今のクラウン達は金銭感覚が狂っている。


「おっちゃーん!この豚バラってやつとモモを15本ずつくれ!」


「あ!僕は10本ずつで!」


「私はこの手羽先を5本くださいな」


「クラウーン!みてみてー!このお面凄く可愛くない?」


「ちょっとみんな…。買いすぎじゃない?」


クラウンの言葉にもバリー達は耳を貸さない。すでに両腕いっぱいに出店で買った袋を持っているにも関わらず、更に追加している状況だ。


「全然金は使ってねーけどな?まだ1万ゴールドぐらいだろ?」


「僕もそのくらいだね」


「私はそんなには使ってないわ」


「あたしは2万ゴールドぐらいかなー!」


バリー達の言葉にクラウンは目を抑える。そういえば、バリー達は公爵家、いわゆる超お金持ちだったという事を忘れていたのだ。


この世界での金銭価値は私達の世界と変わらない。縁日で1人1万円以上を使うなど滅多に無いだろう。しかし、バリー達は超お金持ち。金銭感覚が違うのは仕方のない事なのだろう。


「いや……使いすぎだと思うよ?」


庶民的な感覚の持ち主であるクラウンにとっては、目の前の光景が異常に見えた。しかし、クラウンにとっては初めての体験である為、バリー達が散財する気持ちも分からなくは無かった。


「金は回さないとダメだって言ってるだろ?ほら、クラウンも焼き鳥買おうぜ!」


「ヘイゾウさんたちにも差し入れで持って行こうよ。きっと喜ぶと思う」


「マユリにもお土産買いましょ。試験中で外に出られないし」


「あたしはこの綿菓子買っていくー!味見させてもらったけど凄く美味しいの!」


マユリは学院に通っていて、今週から試験期間に入った為クラウン達と同行していない。少しでも祭気分を味わって貰おうとミリィ達は大量のお土産を買うのだった。


その日の夜、クラウン達の姿はマユリの部屋にあった。屋台の食べ物を机に敷き詰め、食欲をそそる匂いが充満している。焼き鳥を食べながら話に花が咲く。


「いやー、ついに明日だな!前と比べてかなり強くなった自信があるぜ!」


焼き鳥を豪快に頬張りながら話すバリー。口周りにはタレがつき放題である。


「それは僕たちも自信あるよ。ね、ヘレナ」


「ええ。誰かさんのおかげで私も強くなったわ」


「あたしも強くなったんだよー!」


「へぇ、すごい自信だなぁ。ぼくは強くなれた自信がないよ…」


バリー達はみっちりしごかれた所為か、体が大きくなったように見える。それと比べるとクラウンは変わりがないように見受けられる。


「クラウンは最初から強いからな!実感が湧かなくても仕方ねーよ!……ところで、お前は今まで何してたんだ?」


3本目に手をかけながらバリーがクラウンへと問いかける。興味が湧いたのか、アックス達もクラウンへ視線を向ける。

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