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白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
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-秘密 3-

「あ、エースさんたちにはまだ見せていなかったね。…おいでギンチヨ」


呼ばれると同時にポケットからギンチヨが顔を出す。その愛くるしさにバリーとアックスは頬を緩める。


「へぇー。何かと思ったら魔物の子どもの名前なのね」


エースはギンチヨの姿を見ると近くにあったお菓子を手に取りギンチヨに見せる。お菓子を見たギンチヨが素早く机へと降りエースの元へと走る。そのまま机にお菓子を置くとギンチヨは入念に匂いを嗅ぐと一口かじる。少し動きを止めたがお菓子を気に入ったのだろう。そのまま勢いよく食べていく。その様子を見ながらエースが口を開く。


「可愛いねぇ。…ヨシツネ様がこの魔物を見たってことは害は無いってことだね」


「エースさんはヨシツネ様の目を知っているんですか?」


「知ってるも何もかなり有名だよ?『看破眼』の持ち主で戦場でも武功をあげてるし…。ま、いずれ習っただろうよ」


エースはおかわりを要求しているギンチヨに2枚目のお菓子をあげ、頭を撫でる。その間、会話についていけなかったアックスたちが説明を求め、クラウンはボカしながら説明を終える。


「…すげーな。その力があれば最強じゃんか」


「本当にね…。でも、ギンチヨを見て態度が変わったんでしょ?なら、ギンチヨが普通じゃない魔物ってことになるよね?」


「うーん、わかんないなぁ。あの雰囲気は何も答えてくれないだろうし、ぼくの見間違いかもしれないしね」


クラウン達が色々と予想を立てていると、お菓子を咥えたギンチヨがトコトコとやってくる。クラウン達の前にお菓子を置くと褒めてもらいたそうにクラウンを見つめる。


「わぁ、ありがとうギンチヨ。ちょうど食べたかったんだ」


お礼と共にギンチヨの頭を撫でると嬉しそうに鳴く。バリー達も同じ事をすると嬉しかったのか尻尾をパタパタと左右に振っていた。


「……ダメだ。俺にはもう可愛いペットにしか思えねー」


蕩け顔を晒しながらバリーはギンチヨを優しく抱きかかえる。その様子にアックスは羨ましそうな顔をしながらも同意する。


「僕も同じ気持ちだなぁ。裏があるとか到底思えないや」


アックスが「僕にも抱かせて」とバリーに言うと、バリーは頑なに拒否する。ギンチヨを巡って小さな争いが起きてる中、エースがクラウンへ近寄ってくる。


「ところでクラウン。ヨシツネ様に看破されちゃった?」


お菓子を食べながら気軽にエースが話しかけてくる。キョロキョロと焦ったように周りを見渡し小声でエースに答える。


「ちょっと…。秘密にするんじゃないんですか?」


「あー、もうアックスにはバレてるみたいだし別にいいかなーって。…森で魔法使ったんだって?」


次のお菓子の袋を開けながらエースはジト目で見てくる。


「…使ったことは使いました。でも記憶に無いんですよ…」


「バッチリ見てたみたいだよ?アックスもバリーも。詳しくは聞いてこなかったから、ある程度はわかったんじゃないかな?」


君の魔力量がね、と指に付いた菓子クズを払いながらエースが会話を締めくくる。クラウンとしても使ったことは事実なので言い返す事が出来なかった。その時、扉の外から大声が聞こえてくる。


「クラウン!クラウン達はどこにいる!」


大きな声の主は廊下でクラウン達を探しているらしい。ドアの近くにいたバリーが外を覗いて見るとドタバタと走り回っているマユリがいた。バリーが声をかける前にその姿を見つけたマユリが走ってくる。


「バリー!クラウンはどこにいる!急ぎ聞きたいことがあるのだ!」


マユリの必死の形相にバリーは言葉を失うが、目的の人物は部屋にいるので扉を開け中へと招き入れる。マユリが中へ入るとポカンとした表情のクラウンを見つけズカズカと近寄る。


「クラウン!聞いたぞ!そなたは『修羅の地』へと赴くそうだな!」


「う、うん。そうみたいだね…」


クラウンが認めた事により、マユリは頭を抱え左右に激しく振る。部屋の中にいる全員の注目を集めながらマユリが叫ぶ。


「あーー!!!間違いだと思っていたのに!クラウン!今からでも遅くない!わっちが付き添うから、父上に直談判しに参るぞ!」

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