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白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
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-秘密 1-

「ヨ、ヨシツネ様…。なぜこちらへ?」


扉をノックした人物はこの城の主人、ヨシツネであった。ヨシツネの後ろでアネモネが俯いている。


「いや、貴殿らが挨拶をしたいと聞いたからな。わざわざ来るのを待つのも面倒だ。それに…」


ヨシツネが横目でチラリとクラウンを見る。


「礼儀だの作法だのと煩い輩がおるからな。ここでなら煩く言われずに済むと言うものだ」


豪快に笑いながら部屋の中へ進み、椅子に座る。ヨシツネが皆を座らせるように手で合図する。そして全員が注目してから話し始める。


「さて、公爵家の子どもたちよ。私はホウジョウ家当主、ヨシツネである。…ああ、よい。挨拶など要らぬ。それでだ、聞いてはいると思うがそなたたちがこちらで生活する上での保護者の役割をすることとなっておる。なのであまり面倒事を起こさないように気をつけてくれ。約束だぞ?」


優しげな表情でクラウン達に話を聞かせる。クラウン達も恐縮していたがその表情につられ笑みを浮かべる。


「うむうむ、理解してくれたようでなにより。ところで…クラウンとやらはどこにいる?」


急に自分の名前を呼ばれ驚いた声を上げる。その声で誰かがわかったのか、ヨシツネが目を合わせる。


「ふむ…。そなたがクラウンか。マユリからは話を聞いておるよ。……ヒューイ殿。頼みがあるのだが、クラウン殿をお借りしても良いかな?」


「はぁ…。別に構いませんが…。一体何故でしょうか?」


「なに、マユリを助けてくれた恩人らしいからの。個人的にお礼をしようかと思ってな」


人当たりのいい笑みを浮かべ、クラウンと話す許可をヨシツネは貰う。許可を貰ったヨシツネは、クラウンを自室へと連れていく。クラウンは何が起きているのかさっぱりわからないが、黙って従った方が得だと考え後をついていくことにした。




「さて、クラウン。そこの座布団に座るがよい。飲み物は何が良いか?」


部屋へと招き入れたヨシツネがクラウンに問いかける。


「い、いえ!大丈夫です!飲み物なら自分でしますよ!」


慌ててクラウンが飲み物の準備をする。その姿を笑いながらヨシツネは見ている。湯呑みにお茶を入れヨシツネの前に置き、クラウンも座布団へ座る。


「そ、それで…。一体なんのお話なんでしょうか?ぼく…何か失礼をしたでしょうか?」


「ふぁっふぁっふぁっ。なに、そんな心配はする必要ない。そなたに聞きたいことが沢山あってのぉ。だから連れ出したのよ」


ヨシツネの言葉にクラウンは首を傾げる。一体全体なんのことかがわからないからだ。


「ふむ。何から聞けば良いかのぉ。……そうじゃな、まずワシのことから話しておこう。ワシは特殊な能力を持っていてな、目がとてつもなく優れておるのじゃ。魔力を通して人を見るだけで、何が使えてどれほどの強さかがわかるのじゃよ」


ヨシツネが朗らかな表情で話をするが、話の内容にクラウンは険しい表情を浮かべる。クラウンの考えが正しければ、今まさにヨシツネにクラウンの全てを見透かされているかもしれないのだ。


「…慌てて偽装しても無駄じゃよ。ワシの目は全てを見通す」


クラウンは慌てて偽装魔法を展開したが、ヨシツネはそれを看破している。察しの良いクラウンは、ヨシツネの言葉の含みの部分に触れる。


「…ぼくの魔力量を知ってどうするのでしょうか?」


「ただの興味本位じゃて。ワシもそこそこ長生きはしておるが、君のような人物には出会った事が無いからのぉ」


クラウンの目の前にいる人物はホウジョウ家当主としてではなく、気のいい初老の男性として対峙している。クラウンも言葉遣いが砕けている事に疑問を覚えていたが、ここでは身分は必要無いとヨシツネの言葉で気付く。クラウンの表情の変化にヨシツネが言葉を発する。


「ふむ、君は聡い子じゃのぅ。……ところで、先程から胸のポケットに隠している獣を見せてくれぬか?」

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