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白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
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-合流 3-

「そろそろ着くぞ!だが、周囲の警戒は緩めるな!まだ魔物が出現する可能性があるからな!」


伝令の声が聞こえクラウンは目を前に向ける。まだ先にあるが、遠くからでも大きな街であるというのがわかる。近づくにつれ最初に寄った『ヤツシロ』の倍以上は大きい。


「うわぁー!すごく大きいなぁ!」


目をキラキラと輝かせるクラウンにカンタは少し良い気分になる。


「だろう?ここはポートセルムの中でも有名な都市だからな!」


どうやらカンタは自慢する時や先輩風を吹かしたい時には、声と口調が変わるらしい。現に、ここに向かうまで色々とクラウンが質問すると最初の頃のペイトンの様な面影は一切無い。



ヘイゾウ達一行は無事に『エチゴ』へ到着した。『ヤツシロ』のように、入り口には兵士がいたが異常な程人数が多い。大都市だから厳重な警備で人数を割いているのだろうか。


「…おかしいな。あんなに兵士は配置してないはずなのに」


カンタが目の前の人数に疑問を覚える。出身であるが故にここまでの人数は異常だと感じたのだろう。ピリピリとした雰囲気の中一行は門前へと辿り着く。


「あれ?兄さんなんでここにいるの?」


大勢の兵士を前にアックスが意外そうな声を出す。よくよく注意深く見ると、装備している物に王国の紋章が刻印されている。アックスの声にクラウンとバリーも王国の騎士団達が来ているのだと気付く。


「おー。元気だったかい?最愛の弟よ」


まるで長い間離れ離れで暮らしていた恋人の出会いの様にエースがアックスに近づいてくる。だが、抱擁する前に後ろから頭を叩かれる。


「馬鹿者!空気を読め空気を!……失礼した。私たちはエイジニア王国騎士団の者である。ここに我が公爵家の一族らが集まると情報が入ったので待っていた。交戦の意思はないので警戒しないでほしい」


ヒューイの凛とした声が周囲に響く。だが、芯の通っている声にヘイゾウ達一行は警戒態勢を解く。


「…感謝する。申し訳ないのだがまずは公爵家の方々が無事かどうかを確認させてもらいたい。よろしいだろうか?」


「…まずは名を名乗る事から始めぬか」


「ふふっ、ホウジョウ家近衛団の総統ともあろうお方が私の顔を忘れたとでも?」


「ふんっ。貴様のそういうところが儂は気に食わんのだ。…まぁよい、カンベエ!公爵家の方々を連れて参れ」


了承の声と共にカンベエがバリーとクラウンに声をかける。そのまま馬車へと向かい、ミリィ達に声をかけ揃ってヘイゾウの元へと向かう。


「こちらが儂等が保護した公爵家の方々である。違いないな?」


「……おや?見知らぬ奴がいるが?」


ヒューイがクラウンを見て呟く。その声に反応したのはエースであった。


「おや?クラウンじゃないかー。君も巻き込まれちゃったんだねぇ」


「エース、知り合いか?」


「知り合いというか、ヒューイさんも知ってるはずだよ?脳筋の弟だよ?」


「……ああ、お前が大好きな奴の弟か。なら素性も大丈夫だな」


ヒューイの言葉にギャーギャーと騒ぐがアネモネが後ろから口をふさぐ事で問題は起きなかった。呆れるように溜息を吐きながら、ヒューイが続ける。


「無事も確認したことだし、詳しいことは中で話したい。ヘイゾウ、異論は?」


「ふん。貴様の性格を考えれば素直に従っていた方が得じゃろうて。ならば、まずはマユリ様を連れて行きたいのだが?」


「こちらとしてもそうしてもらいたい。……ああ、そうだ。ホウジョウ家の当主様には連絡済みだ。なので、私たちも一緒に向かうぞ」


ヒューイが先回りしホウジョウ家に承諾を得ている時点でヘイゾウに反対の余地はない。苦虫を噛み潰したような表情でヘイゾウ達はマユリの自宅へと向かうのであった。

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