表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀の英雄譚(仮)  作者: もぶいち
100/119

-合流 2-

「ねぇ、マユリ。気になってたこと聞いてもいーい?」


馬車の中でくつろいでいたミリィ達。『エチゴ』への道中、話題がマユリへと移る。


「なんでございんすか?」


湯呑みでお茶を上品に飲みながらマユリが返答する。馬車の中にはお菓子や飲み物がしっかりと準備されている。


「それだよ!なんであたしたちと話すときとヘイゾウさん、だっけ?その人たちと話すときの口調が違うの?」


ミリィの素朴な質問にマユリ、ヘレーナが顔で答える。マユリの口調が変わるという事に関してはヘレーナもわかるからである。


「そ、それは…。一応わっちは『ホウジョウ家』の一員でありんすから、言葉遣いは丁寧にしなければいけんせん」


「へー?そうなんだ!あたし、口調とか変わらないからさー!」


「…ミリィも公爵家の一員では?」


「…あー。ごめんねマユリ。この子まだ社交の場には出向いてないのよ…」


「その言い方だと、ヘレナは経験済みってことでありんすか?」


「私は次女ですけどね…。そういう場には強制で出てるわよ?父の命令でね」


「ふーん。公爵家といっても育て方はバラバラなんでありんすね」


「ちょっと!なんかあたしをバカにしてない!?」


疎外感を味わっていたミリィが無理矢理会話へ入ってくる。話題を作ったのはミリィであるが、主に受け答えしていたのはヘレーナだったからだ。


「ミリィもいずれ顔合わせとして、社交の場へ出るときが来るのよ?そのとき、絶対に口調は変わるからこの気持ちがわかると思うわ」


「社交の場ねぇ……。あたしはまだいーや!だって、婚約者を見つけたりしないといけないんでしょ?」


ミリィの想像する社交場とは、煌びやかな一室で貴族達が食事をしながら音楽を聴き、息子や娘などを自分より上の爵位持ちと結婚させようとするイメージが強い。


「…あながち間違ってはいないでありんすが」


「まぁ、それもあるけど…。顔を売るっていう意味合いも含んでるわよ?特に公爵家なら貴族たちに覚えてもらわないといけないんだから」


公爵家から見る社交の場とは、政治的な見方もあるが敵が味方かを仕分けするのに適している。もちろん、副産物としてお見合いやらなんやらがついてくるが、基本的には売名行為に近い。


「上流階級の宿命でありんすからね。どの国でもそこは一緒なんでありんすねぇー」


めんどくさいよね、と言わんばかりの溜息を吐きマユリはお茶をすする。ヘレーナも同意とばかりに頷く。


「ところでさ、マユリは婚約者とかいるの?」


ミリィの一言にマユリはお茶を吹き出し咳き込む。ヘレーナが慌ててハンカチを取り出し吹きこぼれたお茶を拭く。


「ゴホッゴホッ…。い、いきなりなんでありんすか!?」


口を自分のハンカチで拭きながらマユリが聞き返す。目には軽く涙が浮かんでいる。


「いやー、だってさ気になるんだもん。あたしにはいない…けど、マユリはどうなのかなーって」


「わっちもまだおりんせん!好きなひともいないのに婚約者なんて早過ぎるでありんす!」


「わわ、ごめんごめん。そんな大きな声出さないでよ…。マユリはあたしたちよりも年上だから気になっただけだよ?」


「もう!ミリィったら。そういうことはあんまり聞いちゃいけないのよ?マユリ、ごめんね?」


ミリィとヘレーナがマユリへと頭を下げる。それを慌てて頭を上げろとマユリが言い、この話は終わりとなる。だが、年頃の女性たちはこの後も頻繁にこの様な会話、女子会を開くこととなるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ