3話
憲治は、もう驚くようなことはないだろうと思っていたが、それはすぐに起きた。星の最高神から自分の星を征服をしてほしいということだった。
(ど…どうしよう…突然すぎて間抜けた声が出ちゃった。)
変な声が出てしまったことに恥ずかしさを感じつつもヴァラノバが言ったことについて考えていた。だが、憲治は世界征服に関してはまったく乗り気ではなかった。
(世界征服なんて興味が無いんだよなー。断りたいけど…なんでこの娘キラキラした視線で俺をみてくるんだよ!!)
ヴァラノバはキラキラとした視線を憲治におくっており、憲治はつい苦笑いをしてしまう。それを見かねたジェイダが助け船を出した。
「ヴァラノバ、申し訳ないのですがお母様は目覚められたばかりです。それにまだ、この星について説明の途中です。」
「そうだぜ、お前は後先考えずに行動しすぎだ。」
ジェイダが今の憲治の状況を説明し、ウィルがヴァラノバを咎めた。
「そ…そうだったんですか。あれほどの殺気を出されてたからてっきりその気になったのかと…」
憲治が無意識に出してしまった殺気は、この星に住む全ての生命が感じとれるほどのとても恐ろしいものだった。その殺気で、人の国だけでなく世に言う亜人種と呼ばれる彼らの国でもパニックが起きていた。気絶するもの、狂ってしまうもの、ひたすら神に祈り続けるものと絶望と恐怖が彼らを襲っていた。
(あー…あれは、ウィルとジェイダが酷い求婚された事に怒っていただけで目的があったわけじゃない)
「あれは、ウィルとジェイダが酷い求婚をされたことに怒っていただけなので目的があったわけでは無いです」
殺気を出していた理由を説明するとヴァラノバは、とたんに顔が青ざめ涙がポロポロとこぼれだした。
(!!?な…なぁ…どうしたんだよヴァラノバ?)
「!!?ね…ねぇ…どうしたのヴァラノバちゃん?」
「うぅ…ごめんなさい。うちの愚弟が貴方の娘さんにご迷惑をおかけしました。」
ヴァラノバは憲治(親)に自分の弟達がしたことについて謝罪をしていない事を思いだし頭を下げた。
(だ、大丈夫だ!あんたが悪い訳じゃないんだろ?だったら謝る必要はないぜ。)
「だ、大丈夫よ!貴女が悪いわけではないんで
しょ?だったら謝る必要はないわ。」
「ありがとうございます~、そんな事言ってくれるのは貴女達ぐらいですよ~ 」グスン
それからヴァラノバの愚痴が始まった。それは酷いもので弟達がした不祥事をヴァラノバが咎められ賠償までさせられたという。その事については本人達は何も知らず暴れまわっている。
「あの子たちは私の話を聞いてくれないんですよ~」グスン
(大変だな…)
「大変ね…」
「そうなんですよ~、おかしいんですよこの星の人類は!なんで私が悪神なんですか!なんであの子たちは善神なんですか!?その善神の喧嘩から守ってるのは私なんですよ!」
ヴァラノバは憲治にぐいぐいと近付き不平不満を言い連ねた。そうしているとウィルがヴァラノバを強引に自分のところまで引寄せた。
「はいはい、愚痴ならあたしがいくらでも聞いてやるからこっちに来い。てか、なんでもう出来上がってんだよ?」
「緊張したらお酒がほしくなったんですよ~」グスン
「途中からなんかおかしいと思ってたんだよ。」
ウィルは、ヴァラノバを連れて別の部屋へと移った。ジェイダはやれやれといった感じでそれを見送った
「すいません。普段は良い子なんですが…」
(大丈夫だ。ちょっとびっくりしたけど…)
「大丈夫だよ。ちょっとびっくりしただけ…」
「それでは、人・亜人の国から説明させていただきます。」
ジェイダはホワイトボードの様なもの物を出し書きながら説明しだした。
「まず、始めに人の国から説明します。人は全てが敵対しています。
クラリア王国
・オラハローナ王族が代々支配しています。
・人の国としては一番広い国土を持ちます。
・我々の領地と接しています。
・4人の将軍がおり、魔人達では太刀打ちできません。
アシラビバロン帝国
・ガダラバロン一族が支配しています。
・我々が現れる前は一番勢力が強かった国です。
・兵士は強者が多く、人のレベルで言うならば武に関しては誇ってもいいレベルでしょう。
・この国も我々の領地と接しています。
ルクラキ評議国
・人の国で唯一民主制の国です。
・ドワーフの集落と近いこともあり技術力がとても発展しています。
・この国は我々と領地は接していません。
以上が今ある人の国です。」
(今ある?)
「今ある?」
「はい、すでに2つの国を征服しました。」
ジェイダがサラッととんでもないことを言ったが憲治はもう驚かなかった。
「次に亜人の国についてです。しかし国と言っても国と名乗っているのが獣人だけです。あとは、集落として機能しています。
ワーラオト獣国
・兎、亀、象、猿、狼、猫、サイ、ライオン、熊、馬、鳥、鹿の12士族で構成されています。
・12の族長が話し合って国政を決めています。
・現在この国は、中立となっております。どうやら親魔王派と反魔王派の2つに別れており現在も話がまとまっていないようです。
エルフの集落
・世界樹と呼ばれる大樹の下で生活しており閉鎖的な文化を持っていましたが我々の出現後、人と同盟を結びました。
・夜目がきき、森での奇襲は少々厄介です。
・敵対しています。
ドワーフの地下集落
・ルクラキ評議国とは、良好な関係てす。
・技術力は、この星では一番発展している文明です。
・敵対しています。
人魚の集落
・海底3000メートルの所にあります。
・親魔王派で我々の味方です。
龍人の里
・標高5000メートルの山の頂上に住んでいます。
・強いものに従うという性格を持っており、もうすでに配下に加わっていますが、彼等が住める場所がルクラキ評議国とアシラビバロン帝国の間にある山でないと暮らせないため今は、親魔王派としてとどまっております。
以上が亜人の国・集落です。」
ジェイダが説明し終えると憲治はヴァラノバから依頼された世界征服について考えていた。
「はぁ、お母様は、ヴァラノバが言ったことに悩んでおいでなのですか?」
(ジェイダには、ばれてたか…)
「ジェイダちゃんには、ばれてたのね…」
「はい、私達も同じような事を言われましたから。」
(なんて、返事したんだ?)
「なんて、返事したの?」
「断りました。私達はお母様が目覚めてくれればそれでよかったのです。」
(やはりジェイダ達にも同じ事を言われていたのか…)
憲治としては、争わずに平和に暮らしたかったがそれを周りが許してくれない状況に頭を抱えたくなったがこれから異世界で生活していく覚悟と諦めをつけた。
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