2話
勇者達を強制転送した後、今後の話をしようと憲治はウィル達に話しかけるとジェイダが"御茶会で話しましょう"と提案をした。
「それでは、御茶会の準備をしますので少々お待ち下さい。サラ、手伝ってください。」
「わかったわ。」
「あら~それじゃあ、急いでお母様の服を選ばなきゃ~」
「コリンも!コリンも一緒に選ぶ!」
ジェイダとサラが御茶会の準備のために部屋を出ていくどマリッサは憲治の服を選ぶために服を収納している部屋に向かった。また、コリンもマリッサの後を追うように小走りで着いていった。
(ウィルは手伝いにいかないのか?)
「ウィルはお手伝いにはいかないの?」
「あ~、あたしが行ってもやることほとんど無いからな。」
ウィルが憲治の隣に座ると暇そうに天井を眺めていた。
「あ!そうだ、あたしがこの城を案内するよ」
(それは助かる。頼んだ!)
「それは助かるわ。お願いできるかしら。」
「おう!任せとけ!」
ウィルは勢いよく立ち上がると憲治の手を引っ張った。調理場や各々が寝ている部屋などを案内した。その際、憲治はテーブルやイスなどは壊れていたり傷がついているが壁や天井、床には傷ひとつない状態に疑問を抱きつつも案内をされていた。
(誰も居ないな)
「誰も居ないわね」
「勇者達が攻めて来たからね。普通の魔人達には荷が重いし。」
「魔人?魔族ではなくて?」
「いや、あいつらはあたしたちと違ってコアが無いんだ。魔人族って言って普通の人間とはあんましかわらないんだ。心臓があって赤い血を流す。ただ、普通の人間より魔術が扱えるだけ、腕のところに変な模様があるだけなんだ。そんなの魔素が濃い所にいたら誰にでも現れる症状なんだよ。」
ウィルが今まで魔人族と言われ続けた人々のことを語り始めた。それは、元とはいえ同じ人間だった憲治としては衝撃的だった。魔素が濃い所に居ればそういった症状が現れることは大臣クラスの人物や魔術を極めた者は分かっているが一般人の怒りの捌け口にちょうど良いとこの事は公表していなかった。
「まったく、人間っていうのは理解に苦しむことばっかりしやがる。」
(……それはひどい話だな…)
「ひどい話ね……」
日本で平和を謳歌していた憲治には理解できないものであった。しかし、それをどこか他人事のように聞いていた。
「さぁ、こんな話は終わりにしてそろそろ行こう。御茶会の準備がてきた頃だろうし。」
「おや、ここにいましたか。準備ができましたよ」
「ちょうどいいな。これから行くところだったんだよ」
ジェイダが御茶会の準備が出来たと憲治達を迎えに来た。御茶会を開く場所へ案内する途中である部屋の前で止まった。
(あれ?どうしたんだ?)
「どうしたの?」
「お忘れですか?お母様にはこの部屋で着替えてもらいます。」
(あーそういえばそんな事言ってたな~あはは!
はぁ、着なきゃいけないんだろうな、嫌だな~でも、コリンとマリッサが選んでくれたんだもんな~)
うだうだとしていたが覚悟を決めドアを開けた。
(拝啓 お母さん、お父さん あなた達の息子は今から娘に…いえ母親になってまいります。)
そんな事を思いながらマリッサになされるがままに黒のドレスを着せられた。それをキラキラとした視線でコリンに見つめられ 嫌な顔はできなかった。
「それでは御茶会を始めましょうか」
「わーい!楽しみ!」
テーブルの上にはいろんな種類の菓子があり、それを見たコリンがはしゃぎながらに席についた。
「では、まずこの星について説明させてもらいます。この星はヴァラノバといい3柱の神が生み出した惑星です。ちなみに、なぜこの星がヴァラノバと呼ばれるかというと姉の名がヴァラノバだからです。」
(そんな事して姉弟喧嘩はしなかったのか?)
「そんな事して姉弟喧嘩にはならなかったの?」
「はい、それなんですが弟の2柱がとても仲が悪く喧嘩が絶えず姉のヴァラノバだけで管理していたところ自然とそうなったみたいで…」
姉であるヴァラノバが2柱の弟に代わり管理をしていると弟達は自身が持つ権限を姉に押し付け大喧嘩を始め、ついに堪忍袋の緒が切れたヴァラノバは小さな星を2つ創りだしそれぞれに縛り付けて自分達で創った星の衛星として宇宙へ放り出したという苦労人ならぬ苦労神であった。
「この話はヴァラノバ本人に聞いたので信憑性はあります。」
(へー本人から聞いたのか……って本人!?)
衝撃的なことを聞き憲治は一時停止してしまう。
「はい、今ではいい仲です。」
「一緒に酒を飲む仲だもんな!」
「あの子、泣き上戸だからとても可愛らしいの」
この星で一番偉い存在と仲が良いことに驚きを隠せない憲治であったがなぜ神と仲良くなれたのか不思議でしょうがない憲治は理由を聞くことにした。
(どうして仲良くなれたんだ?)
「どうして仲良くなれたの?」
「それはですね……」
「あたしとジェイダがヴァラノバの弟達に求婚されたんだよ」
ジェイダが口ごもっているとウィルが代わりに話始めた。
「あいつら、いきなりあたし達の前に現れるなり俺と結婚しろだの俺の子を産めだの酷いもんだったぜ!あたし達が返事をする前に連れ去ろうとしたんでお灸を据えてやったんだよ。」
「へぇ~」
(家のかわいい娘達になんて酷いことを!)
ヴァラノバの弟達のとった行動に憤りを感じていると体のうちからドロドロとドス黒い何かが溢れ出した。
「その後にヴァラノバが謝罪しに来たんです。それとお母様…殺気が漏れてます。落ち着いてください、コリンが怖がってます。」
「うぅ…ママ怖い…」
(は!しまった!)
(すまない、コリン!)
「ごめんなさいね。コリンちゃん」
泣いているコリンを抱き寄せ優しく頭を撫でた。
「お母様、今後は気を付けてください。さっきので世界中がパニックに陥っています。」
「まぁ、あれだけの殺気を感じたら普通の奴等は正気は保てないわな」
(申し訳ない…)
「ごめんなさいね…」
憲治は自分がしたことにいまいち責任感が感じられなかったが娘に注意されたので一応謝ることにした。
「!?どうしたの?そう…わかったわ…ちょっと待ってね。」
ジェイダが右耳を手で覆い誰かと少しだけ話していると申し訳なさそうに憲治へ近付いた。
「お母様、ヴァラノバが今すぐお会いしたいと言っているのですが大丈夫でしょうか?」
(え!ヴァラノバが!?…別に大丈夫だけど…)
「え…ヴァラノバちゃんが?…私は大丈夫よ」
「わかりました。少々お待ち下さい。ええ、こっちは大丈夫よ。」
ジェイダが合図を送るとジェイダの前に魔方陣が浮かび上がり眩い光がはしった。そうすると、魔方陣があったところに金髪の美女が立っていた。美女は周りをキョロキョロと見渡すと憲治の方へ歩いていった。
「あ…あの…お、お初にお目にかかります。わ、私はヴァラノバ…というものです…。貴方の娘さんとお、お友達をさせてもらってます…です。」
ヴァラノバは緊張のあまり吃りながら憲治に話かけた。
(どうしよう…スゴく怖がられてる…そうだ!)
(ごめんな、コリン少し離れてくれくか?)
「ごめんね、コリンちゃんちょっと待っててね」
「うん」
そう言うと抱えていたコリンを下ろしヴァラノバを抱き寄せ優しく背中をたたいた。
(よしよし、良い子だ。何も怖くないからな)
「よしよし、良い子ね。何も怖くないわよ~」
まるで子供をあやす母の様にヴァラノバを落ち着かせた。それが心地よくヴァラノバは憲治に抱きついてしまう。
(あれ?おかしいなこんな場面だと男なら欲情するのになんだかとても穏やかな気分だ…。)
「あ…あの…」
憲治がまるで聖母のような笑みでヴァラノバの背中を優しくたたいていると顔を真っ赤にしたヴァラノバが上目遣いで憲治を見つめてきた。
(今、この娘をかわいいと思った俺は悪くない)
誰かに謎の弁明をした憲治
(どうした?)
「どうしたの?」
「あの…恥ずかしいので離してください…///」
(やっぱりかわいい)
「かわいいわね。」
「そ、そんな…可愛いだなんて///」
顔がゆでダコのように真っ赤になりこれ以上からかったらヴァラノバの身が持たないと思った憲治はヴァラノバを離してやった。
(それで何しに来たの?)
「それで何しに来たの?」
「は、はい。今日は貴女にこの星を破壊するのかどうかを聞きしに来ました!」
本調子に戻ったヴァラノバは後光がさし神々しい姿になったがさっきまでの姿のせいでまったく威厳がなかった。
(あはは!可愛らしいな)
「うふふ!可愛いわね。」
「し、質問に答えてください!」
ヴァラノバは再び顔を真っ赤にした。
(大丈夫だ!そんな事したりしないさ)
「大丈夫よ、そんな事したりしないわ。」
「そうですか…それならば安心しました。」
(俺が言うのもなんだが簡単に俺を信じても良いのか?)
「私が言うのもなんだけど簡単に信じてしまってもいいの?」
「大丈夫です!私はこれでも女神なのです!嘘か本当かなんてすぐに分かってしまうんですからね。」
胸を張りながらドヤ顔で言いきった。
「そうだ!貴女にお願いがあります!どうか世界征服をしていただけないでしょうか!?」
(はぁ?)
「え?」
憲治はヴァラノバからの予想外のお願いに間抜けた声が出てしまった。
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