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学校伝説

 片山瑞穂と田中容子は電車、小島さやかは自転車通学である。

 庄野美月の乗るバスの停留所が一番近い所にあるので、そこまではいつも三人一緒だった。その道すがらでの他愛ないお喋りが、美月には何よりの楽しみでもあったのだが。


 それなのに、何を今さら――、と訝しく思った。

 そう言えば、容子もさやかも姿が見えない。いったい、どうしたっていうんだろう。


 そんな美月の不審をよそに、瑞穂のほうはいつもと同じように優しく微笑んでいる。しかし、今日は何だか能面のような表情にも見える。


「うん、もちろんいいよ」

 そう返事をしたにもかかわらず、瑞穂はそこからなかなか動こうとしない。


 やがて、教室から人がいなくなったのを見計らっていたかのように、

「じゃあ、行こうか」

 と言う。


 やはり、おかしい。

 しかし、それを口に出すこともなく、おとなしく従った。


 美月たちの教室は三階にあった。教室を右に出て、しばらく行くと階段である。階段の手前に女子トイレがある。

 入口に『清掃中』と書かれたコーンが置かれてあって、そばで容子とさやかが待っていた。


 今日はトイレ当番ではないはずである。

 厭な予感がした。


 階段から先の廊下の入口には、『立入禁止』の表示板が置かれてある。そのすぐそばには、屋上に上がるための階段室があるが、入口の重そうなドアにも『立入禁止』と表示されてあって、しっかり施錠されている。


 そこから先は、生徒たちには用事のない物置などがあるばかりで、照明なども消されており、普段から薄暗い。今日は雨が降っているということもあり、余計真っ暗なように感じられた。


 袋小路だ――。

 あそこに迷い込み、とうとう出られなくなった生徒があるという。

 そんな学校伝説を、美月は思い出した。

 ただし、彼女が知っていたのは、ただその袋小路の話、一点だけであった。


 都市と言えば、『都市伝説』。学校と言えば『学校の怪談』。中身は、どちらも同じような怪談話である。


 ところで余り知られてはいないのだが、実は『学校伝説』というのがある。

 この場合は怪談ではなく、字義どおり正真正銘の『伝説』であって、それは生徒や学校関係者の間でのみ、代々語り伝えられているのである。


 (いわ)く、

 その一。

 学校には袋小路があって、本人に非があるかないかにかかわらず、そこに踏み迷うことがある。

 その二。

 袋小路には白い魔女が現れる。彼女は袋小路に陥った者を外の世界に(いざな)おうとはするが、決して直接手を差し伸べることはしない。自らの知恵と勇気と不屈の精神でのみ、そこから脱出できるのだ、と。



「どうしたの?」

 横から瑞穂が声をかけてくる。

「実は、当番を変わってもらったの。私の勝手で悪いんだけど、来週1日だけちょっと都合の悪い日があって。だから御免。いっしょにつきあってくれる?」


 そう言って、拝むような仕草をしている。同性ながら、可愛いと思う。

 容子もさやかも一緒に笑っている。


 なんだ、いつものみんなと変わらないじゃないの。大切な友達なのに、つい変なことを考えて悪かった。こっちこそ、御免。

 心の中でそう謝りながら、

「うん、いいいよ。瑞穂の頼みなら断るわけないじゃん」

 と言って、彼女に続いてトイレの中に入った。

 容子も入ってきて、最後にドアを閉める。

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