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同盟成立

 それはいいかもしれない。それに私の場合は、ここに転校してきたばかりで、知らないことが余りにも多過ぎる。でも……。

 一抹の不安がよぎる。念のため確認してみることにした。

「でも、私なんかでいいの?」

「えっ、どうして?」


「だって、私は転校してきたばかりの人間だよ。あなたはさっき、誰が敵で誰が味方なのか分からないと言った。これまで二年間一緒に過ごしてきた人間でさえ信じられないというのに、どうして私のことが信じられるの?」


 省吾は、しばらく食い入るように美月を見つめた。それから、やっと決心したように答えた。

「それは……君が白い魔女を見たからだ」


「白い魔女を見たから?」

「そうだ。そのことだけで、僕は君を信じられる」

 まるで理屈になっていない話だったが、彼の強い眼差しには不思議な説得力があった。


 それにこの私も、いつかはあの女教師に対峙しなければならないだろう……。


「その話、乗った」と美月が言うと、ヨッシャと省吾がガッツポーズをする。

「じゃあ、名前を付けようよ」

「名前?」


「うん」

 と言って、向こうは目を輝かせている。

「ほら、薩長同盟だとか、日英同盟だとかあったじゃない。僕たち、何同盟にしようか」


「うーん。男の子って、そういうの好きだからなあ。分かった。じゃあ、あなたが考えてよ」

「そうだなあ。何にしよう」

 手水舎(ちょうずしゃ)の柱に一人で壁ドンをしながら、一生懸命考えている。


 しばらくして、また目を輝かせながら言った。

「こういうのは、どう? 月とスッポン同盟」

「何、それ……」

 思わず吹き出す。


「ほら、君の名前から一字取って『月』。で、君の成績はクラスでトップレベル。一方僕のほうは、ビリッケツと来ている。だから、月とスッポン同盟。どう? いいだろう」


「厭だ。あんたはそれでいいかもしれないけど、私はなんか、やだな」

「そうかなあ……。じゃあ、どうしよう」

 今度はその辺をぐるぐる回りながら、考えを巡らせている。


「よし、これだ」

 と手を打った。

「ミミズ同盟。これで決まり」

「やだ。何よ、それって。絶対やだ」


「そうかなあ。僕も君も、名前に『ミ』の音が含まれている。だから、二人合わせてミミズ。今は二人とも、暗い土の中のような所にいるけど、いつかは絶対日の目を見るんだ」

「厭だから厭なの。ミミズなんて気持ち悪い。それに、ミミズが日の目を見たら、死んじゃうよ。もっと趣味のいい名前にしてよ」


「そんなら、僕にばかり押し付けないで、自分でも考えてみろよ」

 少しむくれたように言う。


「だって、元々あなたが言い出したことじゃない。まあいいわ。考えてみる」

 美月も必死になって考えた。なにしろ、これからの学校生活だけでなく、受験にまで影響することだ。いい名前を考えなければ。


 しばらくして思いついた。

「ねえねえ、これならどう? ミショウ同盟」

「ミショウ同盟?」

「そうそう。あなたも私も、名前の中に共通してあるのは、『ミ』と『ショウ』の音。だから、ミショウ同盟」


「で、その意味は」

「未だ生まれずで、未生。私たちはまだ、何ものでもない。でも、必ず何ものかになる。その願いと決意を込めて未生同盟」


「それ、いいね。そうしよう」

 二人で、右手をハイタッチする。同盟成立だ。

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